第360話 力技でいこう。
同刻。
視点が変わって。
ここはロージアン共和国側の左軍の後方……左軍を指揮官である将軍が詰めている天幕。
左軍を指揮官である将軍……青い鎧を着た男性が天幕の前で、声を張り上げた。
「なぜ、アレだけ囲んでいて……ガキ一匹倒せない! どれだけの損害を出す気だ!」
「急報ー! 急報ー!」
旗を掲げた騎馬が走ってきた。兵士が馬を飛び降りると、青い鎧を着た男性の前で跪く。
「急報! 出陣した十一番隊隊長のエセルトン・ゲイブラッド様がやられました」
青い鎧を着た男性はギョッとした表情を浮かべて。
「なっ! バカな……あのエセルトンが!」
「残念ながら、私の目で確認しました」
「そうか……」
青い鎧を着た男性が悲し気に空を見上げた。
「しかし、敵の正体を掴めました……」
青い鎧を着た男性は眉を顰めて、伝令兵へと視線を向ける。
「敵の正体?」
「はい……単騎掛けしてきた兵なのですが。ソフィア・ダズ・クレイスと名乗っていました」
ここは戦場近くで、うるさい……。
しかし、ソフィア・ダズ・クレイスの名は妙に響き渡って、その場に居た……青い鎧を着た男性とその部下達の耳に聞こえていた。
青い鎧を着た男性とその部下達は黙った。
少しの間の後で、青い鎧を着た男性が沈黙を破る。
「本当に……あの頭のおかしい単騎掛けしてきた兵が、ソフィア・ダズ・クレイスだと名乗ったのか?」
「はい。間違いなく……私が聞きました」
「……」
青い鎧を着た男性は伝令兵に本当にあの教皇ソフィア・ダズ・クレイスで間違いないかと確認しようとしたところで、愚問だと口元に手を当てた。
左右に視線を揺らして、考えを巡らせる。
何故だ?
ソフィア・ダズ・クレイス……教皇であり、総大将である。つまり、彼女を捕らえることができたらと……第一功間違いないなく。
すぐに私の抱える七番隊の主力を向かわせるべき……。
今囲んでいる民兵の部隊と違って、私の部隊の主力である魔法使い達で囲んでしまえば問題なく片付けることができるだろう。
けれど……なんでだ?
単騎掛けだけでも頭がおかしいと思った。
確かに被害は出て、目障りで腹立たしかった。
ただ全体から見たら微々たるもので。なんでわざわざ? という疑問が大きくあった。
ソフィア・ダズ・クレイスの行動の意図が図れなさ過ぎる。
ここは一旦中央本陣に……いや、ここの大将を任せられているのは私だ。そんなこと、私のプライドが許さない。
ここはやはり……。
青い鎧を着た男性は顔を上げる。
「主力を出す。魔法使いを集めて……目障りな女を力技で圧し潰す」
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