第66話 バッカスの面々。
「武器屋でずいぶん時間が掛かってしまった」
ニールは武器屋に寄った後、屋台で昼食を買ったりして時刻は昼過ぎていた。
ここはフェンリーが作った秘密組織『バッカス』の秘密基地である廃墟。
「ふ、よくよく考えたら秘密でいっぱいだなぁ」
廃墟の地下室へと続く扉に近づき、きょろきょろと周りへ視線を巡らせて周囲に誰もいないこと確認する。
「誰の気配もないな」
扉を開けて、暗い階段を下りて地下室へと向かっていった。
階段を下りた先には大きな扉があった。
その大きな扉の前に立ったニールはトントン……トンッと不規則なタイミングのノックをした。
すると、扉の向こうから「空」という言葉が聞こえてきた。それに対してニールは「山」と答える。
カチャンと扉の鍵が開けられる音が聞こえた後で「入っていいぞ」と扉の向こう側から聞こえてきた。
ニールは大きな扉のドアノブを握って、地下室の中へと入っていく。
地下室の中にはフェンリーをはじめ、少しヨレている服をきた子供二人がいた。
フェンリーは定位置なのか一人掛けのソファに座っていた。
そして、子供二人は茶髪を長く伸ばした子供が地下室の壁にもたれながら立ち、くすんだ金髪をぼさぼさにしている子供が二人掛けのソファに胡坐をかいて座っていた。
フェンリーが少し不満げな表情で口を開く。
「おせーよ。こいつ等に疑われたじゃねーか。ニール」
「いやー悪い、悪い、ちょっと買い物が手間取って」
ニールは苦笑しながら、フェンリーに応えた。
地下室の壁にもたれていた立ち茶髪を長く伸ばした子供がニールのもとへと近づき、手を差し出してくる。
「やー本当に来るとは思わなかったよ。てっきりフェンリーの妄想かと。俺はストリクスだ。よろしく」
「うん、よろしく。俺はニール」
ニールはストリクスの手を取って握手した。
「まさか、あの本を大銀貨一枚で買ったと聞いてびっくりしたよ」
「ちょっとね。今はコツコツとあの本の写し本を作っているところ」
「そうなの? 本当に正当な持ち主が現れたら返すというのは本当なのか……」
「まぁ現れたらだけどね」
「そうか。いや、本のことよりも、ニールに聞きたいことがいっぱいあるんだ」
「? 何かな?」
「王都のことだよ。俺は将来王都に行きたくて金を集めているんだ」
「……いいけど。俺もそんな長く住んでいる訳ではないから、そんな詳しいわけじゃないんだが」
「十分だよ」
ニールとストリクスが話していると、しびれを切らせた様子のくすんだ金髪をぼさぼさにしている子供が声を上げる。
「いや、待てよ。ストリクス。俺もソイツに話が聞きたい!」
「なんだよ。俺が先に話しかけただろう。マルタナ」
「話しかけた順番なんて関係ないだろ。俺は一刻も早く大銀貨なんてどうやって冒険者で稼ぐか聞きたいの」
「いや、俺は王都での生活のことを聞きたいんだよ!」
「お前ら待て、俺がニールを呼んだんだからなぁ!」
くすんだ金髪をぼさぼさにしている子供……マルタナとストリクスが口喧嘩を始めそうになったところで、最後にフェンリーが加わってしばらく、三つ巴の口喧嘩に発展するのだった。
何とか、三人の口喧嘩が収まったところで、ニールが昼食用に買っていた肉の刺さった串焼きを食べながら話していた。
ストリクスは串焼きを食べながら、ニールへと問いかける。
「じゃ、ニールは住み込みで働いているんだね?」
「うん、その合間を見つけて冒険者の仕事をしている」
ニールは串焼きに刺さった肉にかぶりつきながら、頷き答えた。
「なるほど」
「ストリクスは王都に行って住みたいのか?」
「あぁ。都会暮らしに憧れていたんだよ」
「王都は楽しいところとか多いけど、住むには物価とか土地代が高いね。貯金があっても、下手したらスラムに入ることになっちゃうよ」
「……仕事ってどうやって探すのかな?」
「なら、事前に住み込みで働ける場所を探しておいた方がおすすめかな。住み込みで働くのは商業ギルドがあっせんしてくれているはず。その次が冒険者ギルドでクエストをこなしつつ、冒険者ギルド内にある格安の寮に入るのがいいかな? ほかの手段となると……なんかしらの伝手がいるんだよなぁ」
「なるほど……勉強になったよ」
ストリクスはニールの答えに納得したように頷いた。すると、二人掛けのソファに座っていたニールとストリクスの間に滑り込むようにマルタナが割り込んできて座る。
「よし、次は俺だな」
「狭いな」
ストリクスは苦笑しながらソファから立ち上がった。
マルタナはストリクスの様子を気にすることなく、ニールへと問いかける。
「どうやって……冒険者で金を稼いでいるんだ?」
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