第301話 話が変わって。
ここは森の中を別つように作られた……獣道にも見える道。
その道では全身を隠すような黒いローブを着込んだ一団が歩いていた。
「はぁはぁ」
一団の中で小柄な者に対して、前を歩いていた者が振り返る。気を遣うように声を掛ける。
「休憩を入れましょうか?」
「いえ、大丈夫です」
「もう少しです。もう少しでクレティア王国です。ソフィア様」
「はぁはぁ。よかった……もう追ってきてないのですよね?」
「ええ。後方に配置している部下からは……ッ!」
その時、一団が向かう方向……その茂みより数十もの矢が一斉に放たれた。
黒いローブを着込んだ一団は小柄な者……ソフィアを守るように動く。
矢の多くが彼等を突き刺さる。
「ぐあっ。アイツ等……この経路を読んで待ち伏せしていたのかっ」
「エゾワード! コーディー!」
ソフィアが矢を受けた者達に駆け寄った。エゾワードはソフィアの肩に触れ……押し返す。
「に、逃げてください。ここは我々で引き留めます」
「しかしッ!」
「貴女を失う訳には行かないのです。……矢を受けなかった者はソフィア様と一緒に行け! 作戦参に移行!」
「何を言っているの。全員でここを乗り切った方が……」
「矢の数からして、我々だけでは切り抜けられません」
「では、全員で逃げましょう」
エゾワードは首を横に振る。
「逃げられません。私の仕事は貴女を守ること……最後まで御伴できないこと、申し訳ありません」
「っ! いえ、貴方も必ず生き残ってください。クレティア王国で会いましょう」
「……分かりました」
「くっ!」
ソフィアの顔は黒いローブで見ることはできないが、涙がポタポタと落ちた。
ソフィアはキュッと握り拳を作って、矢を受けていない者達と共に道から逸れて森の中へと逃げ込んだ。
エゾワードはジェニエルの離れて行く足音を聞きながら、肩に突き刺さっていた矢を引き抜く。
「痺れが……毒矢か。約束は守れそうにないな」
悲し気に視線を下げ、すぐに視線を上げた。
剣を抜き、空へと掲げてエゾワードは声を張り上げる。
「ここを死守する! 戦うぞ!」
「「「「おぉ!」」」」
檄を受けた黒いローブを着込んだ一団はそれぞれの武器を抜いた。茂みから飛び出してきた者達と戦い始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます