第257話 話が変わって。

 ジェミニの地下大迷宮で探索を始めて百日目。


 話を変えて、ここはノルマンド王国。


 王国の中央付近にある貴族院という建物。


 貴族院の会議室。


 小人達の討論が繰り広げられている。


「軍務卿まだ見失った巨人は見つからないのかっ!」


「見つからない……」


「もういいんではないですか? 巨人が残していった、素材の回収したのですから」


「それだけでは足りん。高価で取引される部位ははぎ取られていた」


「それでも食料は……しばらく食糧不足になることはない。無理に巨人とことを構えずとも良いのでは?」


「そうではない。我々はどんなに犠牲を出してでも巨人を従えて、この凶悪な魔物を駆逐させるんだ」


「いくら、巨人とはいえ……そんなことが可能か?」


「巨人が狩った魔物はすべて厄介なモノばかり。更に下の階層から来た……つまり、ここよりも凶悪な魔物と戦ってきたと考えられる。その巨人を従えて、魔物を駆逐してしまえば、今後魔物に恐れる必要がなくなるんだぞ!」


 顔を赤くした小人が机をダンと叩いた。


 机を叩いた音は小人達を黙らせる。


 少しの間の後で、青い尖り帽の小人が冷めたような表情で、口を開く。


「ふむ。まぁ、見つかれば良いがな」


「いや、仮に見つかったとしても、琥珀一家と繋がっている可能性もある一筋縄ではいかんと思うが」


「ぐう。だから、琥珀一家を壊滅させることが急務だと以前から言っていただろう!」


「ふん、言うだけなら簡単だ」


「なんだと」


「今の予算では我々は軍事力の維持がやっとだ。文句があるなら、今の三倍は予算をよこせ」


「三倍だと! そんな予算ある訳ないだろう!」


「予算予算というが、今の予算でたった三百人前後の琥珀一家を捕らえられないというのが疑問なんだ。どう考えても人員も予算もこちらが上だぞ?」


「これは前にも言ったが。アイツ等の魔導具の方が我々の持つ魔導具に比べて……圧倒的に性能が高いからだ」


「そこがおかしいんだ。なぜ、あんなならず者が高品質の魔導具を持っているんだ!」


「知るか」


「……巨人と琥珀一家が落ち合った可能性があるなら、いくつかあった琥珀一家のアジトへと使者を送っては?」


「使者を? どういうことだ」


「嘘でもなんでもついて、誘き出したらよいのです」


「ふん。甘言に引っかかる相手なら軍は苦労していないが」


 こんな感じのやり取りが会議中に繰り返されていた。


 王座から離れた末席に座っていた白色の尖り帽を被った老人の小人が口を押え、せき込む。


「ゴホゴホ」


「ケアリオット卿、お体大丈夫ですか」


 白色の尖り帽を被った老人の小人……ケアリオット卿の隣に座って黄色の尖り帽を被った小人が声を掛けた。


 ケアリオット卿は口角を上げる。声を小さく答える。


「ジェライヴ卿。大丈夫だ。うるさくして悪いな」


「いえ。こんな会議を……長々とやることに疑問しかないので」


 黄色の尖り帽を被った小人……ジェライヴ卿が苦笑した。


「こんな会議やる意味ないだろうな」


「ですね」


 ケアリオット卿は不意に胸へと手を置く。


「我々には緩やかな死しか待っていないだろう」


 ◆

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