第4話 鑑定って凄いかも

「心愛? 何かいい匂いがするけどお料理作ったの? お母さんもお腹すいちゃったから食べさせてよ」


 ヤバイかも……


「あ、お母さん。茶わん蒸し作ったんだけど、ちょっと失敗しちゃったから今から作り直すね。もう少し待ってて」


 そう言って普通の茶碗蒸しを作り直した。

 ついでに他の料理も作ろうって思い冷蔵庫を見るとダンジョン産の豚肉があった。


 これとお出汁を組み合わせたら、どんな効果のお料理が出来るのかな?

 よし、肉じゃが作ってみようかな。


 私は肉じゃがは牛肉より豚肉の方が好きなんだよね。

 お母さん用のと私のと小鍋を二つ用意して、お出しだけ違う二つの肉じゃがを作った。


 ご飯も炊いて家の方の食卓へと運ぶ。


「心愛のお料理はいつ食べても美味しいわねぇ。もうお父さんに負けないんじゃない?」

「まだまだ全然だよ、私の記憶にあるお父さんのお料理は、もっと幸せな気分に成れたからね」


「十分だと思うわよ? 主婦と比べても」

「私は、お父さん以上のお料理を作りたいの! お母さんの言う主婦の料理の基準って、まさかお母さんが基準じゃ無いよね?」


「えっ? 当然私基準ですよ。私は立派な主婦だもん」

「それ……基準間違ってると思うよ。きっと」


 だってお母さんの作る料理って、甘い味噌汁とか、ソース味のラーメンとかだからね……

 ルーを使ったカレーですら、辛さより苦さが勝る不思議な人だから……


 そして、私が肉じゃがを口にした時またあの声が聞こえた。


『セレクトスキルの選択権を取得しました』


(キター)と心の中で叫んだ。


 目の前に広がる画面には、


【超成長】

【ステータス調整】

【アイテムボックス】

【パーティ作成】


 の四つの表示がされた。

 良かった。


 最初に選ばなかったのも表示されてる。

 これは今後全部獲得できるんなら『超成長』が正解かもね。


 目の前の画面らしきものをタップして超成長を獲得した。

 私の動きに、お母さんが「ご飯食べながら何してるの? 虫でも飛んでるの?」と、聞いて来た。


「あ、うん。蚊が居たから追い払ってたの」


 ◇◆◇◆ 


 翌日いつもの様に学校に行った私に「心愛先輩お早うございまーす」と、元気に声を掛けてきた子。

 肩のあたりまで伸ばした髪を、ツインテールにした身長百四十五センチメートルほどのチミっ子

のぞみ』だ。


 うちの近所に住む女の子で小学校の時から、よく遊んでいた。


「先輩、昨日もダンジョン行ったんですか?」

「うん、そうだよ」


「よく一人で魔物と戦う気になりますよね?」

「一人の方が気が楽だからね」


「私も昨日は行って来たんですよ! クラスの子達と五人で男の子も二人居たからたくさん倒せましたよ! 最近流行りのダンジョン配信を始めようと思って下見もかねてなんです」

「ダンジョン配信って?」


「えー先輩知らないんですか? ダンジョンの中の様子や戦闘を配信するのが今凄い流行ってるんですよ。凄い人だと登録百万人超えてたりして収入もいっぱーい!って感じらしいです」

「凄いわね、でもそんなに簡単じゃないでしょ?」


「最新機種のスマホがあれば動画はすぐに撮影できるから意外と簡単だと思います。ダンジョン内だと電波が届かないからライブ配信とかは出来ないんですけどね」

「そうなんだ……無理をして怪我なんかしないようにね。ちゃんとポーションは持ってるの?」


「いえ……持ってないです。一本一万円もするから私達のお小遣いじゃ厳しいんですよね」

「でも、それなら危険の無いカラオケとか行った方が良いと思うわよ? 何かあってからじゃ遅いからね」


「先輩はいつも厳しいなぁ、でも希のこと思って言ってくれてるんですよね? 大好きですよ」と言って抱きついて来た。


「ちょっとこんな人の多い所で抱き着かないでよ。私にそんな趣味は無いんだからね」

 

 抱き着いたまま離れずにクンクンと臭いを嗅いでくる。


「ちょっ、辞めてってば、そんなとこの匂い嗅がないでよぉ」

「あー先輩のうなじの匂いで朝からごはん三杯いけちゃいそうです」


 無理やり引き剥がして、駆け足気味に教室に避難した。


「でも、あの子もダンジョン行ってるんだ……怪我しなけりゃいいけど」って呟いた。


  ◇◆◇◆ 


 放課後になり今日も博多ダンジョンへと向かう。


(あ、そう言えば鑑定スキルって人も見れちゃうのかな?)


 電車の中で同じようにダンジョンへ向かっているであろう人を見かけたので、その女の人を見ながら【鑑定】と念じてみた。


(やっぱりあったんだねステータス。まぁセレクト欄にステータス調整ってあったから確信してたけどね)


葉山 洋子(和夫)(34歳)(心は女) LV3 ランキング3,846,589,874位


HP 300

MP 30

攻撃力 3

防御力 3

敏捷性 3

魔攻力 3

魔防力 3

知能  3

運   3


ポイント 30

スキル  無し


 これ……突っ込みどころ多いわぁ。


 どう見てもお姉さんだと思ってたその人は女装男子だった……

 しかも三十四歳って男子って言うよりおじさんじゃん……


  ポイントって何だろう?

 あ、もしかしてステータス調整ってスキルがあったけど、あれで能力に振り分け出来るのかな?

 項目が七項目でレベル3で合計21ポイントって事は、振り分けされてないステータスの方が多いって事なの?


 これってもしかしたら私だけしか解らないんだとしたら、マジで最強も夢じゃないのかな?


 でも、レベル高いよね……女装の! 私が気付かないだなんて、こんな人が女子トイレとか入ってきても絶対わかんないよ……

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