第239話 劉さん達をアンリさんに会わせたら……

 部屋に戻ってTBの毛づくろいをしながら考えていた。

 劉さんとは、ある程度の事を話しておいた方がいいよね?


 冷静に考えるとチームの強さで言えば、クリスマスホーリーと遜色ない位置に居るのは、劉さんのチームだけだから、これから先の世界には必ず大きく関わってくるはずだし。


 諸葛さんにメッセージを送ってみた。


『こんばんは、心愛です。少し諸葛さん達に時間を取っていただきたいんですけど、どこかで会えませんか?』

『私も話をしたいと思ってたところです。劉大兄も会いたがってたんで、また天津ダンジョンの二十層でどうですか?』


『はい、とりあえず向かいますね。何時くらいがいいですか?』

『今、天津のダンジョン協会に居ますので、すぐに行けますよ』


『そうなんですね。忙しいのに、結構真面目にダンジョンに潜っているんですね』

『さぼるとランキングの維持が出来ませんからね、今は天津ダンジョンの五十層まで到達していますよ』


『五十層ですか? 凄いですね』

『では、二十層で待っています』


 すぐにテレポを発動して天津ダンジョンの入り口に行くと、ダンジョンリフトで二十層に移動した。


「お待たせしました。って関さんと張さんも居るんですね」

「この間のお礼も言ってなかったからな。ありがとう心愛ちゃん」


「そんなの今更ですよ。これから先、もっと色々協力してもらわなきゃいけない事もありそうだし」

「心愛ちゃん、同じパーティに入ったらテレポは俺たちにも有効なんだろ?」


「はい」

「ザ・シーカーにも会いたいんだけど、今から一緒に連れて行ってくれないかい」


「えっと……国的には大丈夫なんですか?」

「実はな、曹国家主席からも極秘で会ってきてくれと頼まれてる。一応、俺達四人には先日の首脳会談の件を伝えられているんだ」


「そうだったんですね。それなら大丈夫かな。パーティに招待しますね」

「よろしく」


 早々に一層に戻るとダンジョンの外に出て、そこからジャフナへとテレポで飛んだ。

 クリスマスホーリーのジャフナの事務所へと行くと、アンジョリーナさんとアイリーンさんが居て、セイロンティーを用意してくれた。

 勿論ダンジョン産だよ。


「アンリは、まだジュネーブに居るわ。テレパシーで連絡取って呼ぶわね」


 そう言って、アンリさんに連絡を取ってくれた。


「十分ほどで来れるって言ってたわ」


 劉さん達四人は、物珍しそうに事務所の窓から、ジャフナの光景を眺めていた。


「心愛ちゃん、ここから世界各国に繋がる転移ゲートが設置されているのかい?」

「それは、ダンジョン協会の建物の方ですね。まだ日本とアメリカとイタリアだけですけど。五階のワンフロアを転移ゲートのハブステーションにしてあります。一応、誰でもフリーパスで来られると困るから、出入り口の管理がしやすいようにっていう理由ですね」


「なるほどな。世界中がここに繋がるようになると、国際線の飛行機で移動するよりよっぽど効率がいいからな」

「ですよね。でも、そのせいで社長が攫われたりした事件もあったので、少し困ってます」


「そうだろうな。一機が何百億円もする飛行機を作る必要もなく、時間もかからず、安全な移動方法が出来れば、飛行機や高速鉄道の意味はなくなるからな。それを生業にしている人間から見たら、相当困る存在だろうね」

「ですよねぇ……だから日本国内ではD-CANを中心に運輸関連の企業を統合する持ち株会社を作って利益の配分を行うみたいです」


「日本国内はそれでいいだろうけど、海外はそうもいかないだろ? それこそ、転移ゲートの数も全く足らないし」

「そういった事も含めて、世界には新しい秩序が必要なんですよね。もう今までの様に国同士で争う時代じゃないんですよ」


「心愛ちゃん、それを世界中の人に納得させようと思うと、それこそ神様が出てきて導かないとうまくはいかないだろうね。今のとこそれが実現できそうなのは心愛ちゃんくらいしか思いつかないが」

「劉さん……私、絶対嫌ですからね? 神様扱いなんて」


 そんな話をしていたら、アンリさんが現れた。

 劉さん達が全員立ち上がって、挨拶をする。


「お初にお目にかかります。中国の劉です。横に居るのが諸葛少校、関大尉、張大尉です」

「アンリ豊臣だ。今日はいきなり何の用で来た?」


 てか……劉さん達も結構イカツイし、アンリさんもそれ以上に迫力あるから、めちゃ雰囲気が怖いよ。


「私たちは曹国家主席から、中国が担うべき方向性を一緒に考えてくれと言われました。私たちなりに考えた結果が心愛ちゃんやアンリさんと仲良くする事が一番大事だと思ったので、まずはご挨拶に伺いました」

「なるほどな、俺が劉の立場であっても同じ結論に至ったと思う。だが本音のとこはどうなんだ? 劉は中国が世界の中心でなくてもいいのか?」


「難しいですね。誇り高き漢民族である私たちが、他の人種の支配下に入るという話であれば、それは受け入れません。しかし先程、心愛ちゃんにも言われましたが人種がどうとか宗教がどうとか言う時代はもう終わりにしなければならないでしょう。地球の人類として一致団結して、ダンジョンの脅威と闘い、神を名乗る存在を打破しなければ人類の未来はありません」

「ふーん、なるほどな。それは劉の考えか? それとも、横に立っている色男の考えか? 曹の考えではあるまい」


 アンリさんがそう問いかけると諸葛さんが質問をした。


「アンリさん。私は、アンリさんの存在が不思議なのです。あなたはゼウスではないのですか?」


 その質問に一瞬その場の空気が変わった。

 少し溜めを作ってアンリさんが笑い出した。


「フワッハッハッハ。俺がゼウスだと? それは違うな。ゼウスは既にいない」


(エッエエエエエエエ)


  って心の中で叫んじゃったよ……

 アンリさんは何を知ってるの?

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