第238話 D-CANの今後ってどうしたらいいんだろ

 学校が終わると、すぐに博多へと戻った。

 

「杏さんただいまぁ」

「お帰りなさい、心愛ちゃん。今日は希ちゃんたちは一緒じゃないの?」


「希は日向ちゃんと一緒に、サオリンや咲さんたちとダンジョンに行ってます。金沢ダンジョンのリミットブレイクを取得するのが、当面の目標だって言ってましたよ」

「へー、咲さんたちも頑張ってるんだね」


「ですよね。私は今日はまたちょっと。冴羽社長と相談しないといけない事が出来たので早めに戻ってきました」

「そうなんだ。社長は今、西陣の事務所に居るからすぐ来れると思うよ。ちょっと連絡するね」


 そう言って杏さんが冴羽社長に連絡すると三分ほどでクロークの転移ゲートから姿を現した。


「どうしたんだい? 心愛ちゃん」

「呼んじゃってすいません。ちょっと相談したい事があってですね」


 そう伝えて治るんクッキーを取り出して、効能と薬師のJOBを持った人なら作れる可能性が高い事を伝えた。


「なるほど、これから先の攻略を考えたら間違いなく需要のある商品だね。でも、無償でその知識を公開してしまうのは感心できないね。根幹にかかわる部分はD-CANで管理する方法は無いのかな?」

「無い事は無いんですけど、それだと結局私が、元になる部分を作らなきゃいけないから、とても需要を満たすだけの量が作れないと思うんですよね」


「そうだね、心愛ちゃんには心愛ちゃんにしか出来ない商品の作成をしてもらわなきゃならないし、他の人が作れるのなら任せた方が効率的だよね。どうだろう薬師のJOBを持つ人たちに契約魔法でレシピに関する秘匿を条件として、D-CANで雇用するというのは」

「契約魔法かぁ、ちょっとだけ気が引けるけどそれが一番いいかもしれないですね」


「明日、JOB持ちの先輩に一応聞いてみます。そう言えば社長やアンリさんは今後の動き方って何か要望を受けたりしてるんですか?」

「今の所は、まだ直接は受けてないね。一応、アンリさんとは話しているけど、クリスマスホーリーは多国籍軍には参加しない方向性で動くよ。すでに心愛ちゃんの魔法陣のお陰で、多国籍軍が出来たとしても実力が隔絶した状況だし、ブロンズ以上のランカー千人にクリスマスホーリーと同じ様にスキルを無償提供する必要は無いからね。そこはビジネスと割り切るべきだ。ただしD-CANが上げる利益は必ず世界がダンジョンの脅威から生き残るために有効活用するという信念は持ち続けないといけないけどね」


「はい、社長の方針でいいと思います。アンリさん達はもうジュネーブに行ってるんですか?」

「ああ、週末ですでに三十層まで到達してるそうだよ。全員が魔法スキルや身体強化を使えるようになったから、効率がまったく違うと言ってたよ」


「四十五層までなんですよね。ラスベガスより四層深い分敵も強くなりそうですよね」

「だけど、アンリさんのギフトが強力だから今ならCランクのダンジョンではボス戦以外では問題無いと言ってたよ」


契約アコードは反則的に強いですからね」


 杏さんが淹れてくれたコーヒーを飲み干すと社長は西新の事務所に戻って行った。


「杏さん、冴羽社長って仕事抱えすぎですよね?」

「そうだねぇ。一応、今月一杯は私もD-CANの業務に直接関わる事は出来ないから、後二週間ほどは頑張ってもらわなきゃしょうがないよ」


「ですよねぇ。少し会社の規模を大きくして信用できる人を増やすしかないのかな?」

「それも大事だけど、D-CANの場合は結局、心愛ちゃんの開発する魔道具や、心愛ちゃんの戦闘能力が前提になってるから、実力者を囲い込む事を考えなきゃいけないのかもね。心愛ちゃんが信用できる人で、まだD-CANに参加していない人っているのかな?」


「そうですねぇ。日本だと、美咲さん、樹里さん、美穂さん、君川さん日本以外だと諸葛さん、劉さん、ロジャーっていう所ですね」

「アンリさんの娘のソフィアさんはどう?」


「ソフィアさんは問題ないんですけど、イージャさんが引っ付いてきそうだから、あの人はまだ信用するまでは出来ないですー」

「ああ、それがあったわね。でもロマノフスキーさんは何か自分なりの考えがあるのかな? あくまでもロシアの軍人であるなら、どこかで離反してしまいそうだよね」


「ソフィアさんのお母さんが鍵を握ってるような気もしますけど」

「なるほどね。私も昨日会議に参加したじゃない」


「はい」

「ロシアの大統領は一言も意見を述べなかったのよね。そこが不気味だったわ」


「もしかして既にハーデスから直接接触があったりとか?」

「まさかとは思うけど、中国、ロシア、インド辺りはそんなアプローチがあったとしても不思議じゃないですよね」


「インドも?」

「はい、神様が絡むとインド神話も重要な立ち位置にあるんじゃないかな? って思うんです。それに……インドのダンジョンはドロップが優遇されてる部分があるし、なにかあると思うんです」


「ドロップの優遇? ダンジョン協会でもそれは把握できてないけど、どういう部分なの?」

「美穂さんに聞いたんですけど、魔法スキルの所持者がインドだけ多いんです。明らかに人口が同程度の中国に比べても多いから、なにか理由があると思うんですよね」


「心愛ちゃんがそう思うなら、きっとそれが真実かもね。でも……心愛ちゃん?」

「ん、どうかしましたか?」


「私と心愛ちゃんには、アテナ様とアフロディーテ様の加護があるっていうのは間違いないんだよね?」

「多分……」


「それなら、必ずゼウス様からのアプローチがあると思うんだよね」

「……」


 果たしてゼウス様の存在は人類を守ってくれるのかな?

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