第19話 豚骨ラーメン

 十八時になって杏さんのお仕事が終了した。


「お待たせー、何が食べたいかな? 今日は私がお誘いしたから、私の奢りだよ。何でもいいから好きな物を言ってね」

「えぇ、そんなの悪いですよー。私と希の分はちゃんと払います」


「それはダメよ、今日は奢らせて。次からは割り勘にしよう!」

「うん、じゃぁ今日はごちそうになります」


 天神で人気のラーメン屋さんに行く事にして三人で向かった。

 ちょっとおしゃれな感じのお店で、ラーメン屋さんなのに個室とかあって、くつろげる空間だ。


 私たちは三人で個室に入る事にした。


「うまかぁ、やっぱ豚骨ったい」


 と、希が博多弁丸出しではしゃいでた。


「そうくさ、豚骨以外はラーメンとは認められんけんね」


と、杏さんも結構博多弁丸出しだった。


 私は、ラーメンと明太ご飯を頼んで煮卵のトッピングをして食べた。


「うまかぁ」


 やっぱ出ちゃうね……


 杏さんは、にんにくを潰すプライヤーみたいな器具でニンニクを三個も潰して入れていた。


「明日休みだし、デートの予定も無いから臭いなんか気にしないんだ」って言って幸せそうに食べていた。


 三人ともしっかり替え玉までしたよ! 勿論『カタ』でね。


 『バリカタ』とか『ハリガネ』が最近は結構トレンドみたいに言われてるけど、流石にそれは麺らしくないよね? って私は思ってるけど、みんなは本当にそれが美味しいと思って頼んでるのかな?

 ただ流行りだからとか思ってるんなら、ちゃんと自分が美味しいと思う硬さを解っておいた方がいいよ? 食べ物はまず美味しく食べれる事が一番大事なんだからね!


 お腹が一杯になって一息ついたところで、杏さんが話し始めた。


「ねぇ心愛ちゃん。ダンジョンリークスのサイトは知ってるよね? 協会直営の情報サイトみたいなホームページなんだけど」

「知っていますよ、初めて行く階層なんかは、そこで情報調べてから行くようにしています。他の情報サイトは結構内容も濃いですけど、ガセネタも多いから先入観を無くす為に、私は『ダンジョンリークス』だけしか信用しないようにしています」


「先輩、そうなんですか? 私は結構探索者の人達が書き込みをしている7チャンネルとかで情報探してますよぉ」

「希、7チャンは危険すぎるでしょ、マジネタの方が圧倒的に少ないじゃん」


「その分、当りネタを引いた時の見返りも大きいですから」

「それで怪我したら話にならないからね。参考にする程度にしなさいよ?」


「それでね、リークスの内容は当然協会がしっかりと裏付けを取った内容だけしか載せないんだけど、報奨金制度ってあるのは知ってる?」

「いえ、初めて聞きます」


「未発表の内容で、探索者の役に立ったりする情報に対しては、ダンジョン協会から情報に見合った報酬が支払われる制度なの。過去に十五層までの基本的な守護者の倒し方をマニュアル化したアメリカの探索者の『アンソニー』には五十万USドルの褒賞が出た事も有るわ」


「五十万USドルって五千万円以上ですよね?」

「そうね今のレートで七千万円くらいかしら」


「すっごーい先輩なら、もっと凄いネタ出せるんじゃないですか?」

「コラ、希、そんな期待させるような事は口にしたら駄目だよ」


「ゴメンなさい」

「あのね、私が今日この話をしたのは、ちょっと協会内で噂になりかけてた話が合ってね。心愛ちゃん、日曜日は下関ダンジョン行ってたよね?」


「はい、間違いありません」

「五層にランクカードチェックする職員が居るよね。下関ダンジョンの日曜日の五層のチェックを担当した職員が、心愛ちゃんが三回程チェックポイント通過したけど、上った形跡が無いのにまた降りて来たって言っててね。確かに上る時はチェックしないから気付かなかっただけかも知れないけど、流石に三回はおかしいかな? って話になってるの。心当たりあるでしょ?」

「はい……」


「もしね、心愛ちゃんがダンジョンの階層移動の方法で未発表の情報を持ってたりするなら、情報を売って貰えないかしら? 恐らく情報の重大さから考えると百万USドル以上の報奨金は間違いないと思うよ?」


「えぇえええ、先輩百万USドルって一億円以上ですよ凄いですぅう」

「希、大きな声で騒がない」


「ゴメンなさい……」

「私だけの秘密にするつもりは無いんですけど、こんな事気付いたの知られたら、色々面倒な事に巻き込まれちゃうかもしれないって思って、言えないでいました。杏さんのおっしゃる通りに私はダンジョン内のショートカットを知っています」


「やっぱりね。それは誰にも教えていないで間違いないわよね? 恐らく明日以降は心愛ちゃんに尾行が付いてダンジョン内の行動をチェックされるはずなの、だから今のうちに発表しちゃって報奨金ゲットした方が賢い選択だと思うのよね。どうかな?」

「いいんですけど……それって私が発表したって名前出ちゃったりしますか?」


「それは心愛ちゃんが望まないなら、名前を出さない事も可能だわ、尾行した連中からバレた場合はこちらの言い分が通らない可能性もあるから早い方がいいわね」

「解りました。杏さんを信じますから、発表の手はずを整えて頂いてもいいですか?」


「そう、ありがとう心愛ちゃん。私の成績にもなるからもっと豪勢なディナーを今度は用意するわね」

「そっか、杏さんの成績にもなるなら全然協力しますよ」


「ちょっと私の信頼できる上司に連絡とらせてね、今日は少し遅くなっちゃうけど大丈夫かな? もしご両親が心配されるようなら私からも連絡入れさせてもらうわ」


 ちょっと長い夜になっちゃうかな?

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