第18話 パーティープレー

 一層を歩き始めてすぐにスライムが現れた。


「希、いつもどんな感じに倒してるのか、やって見せて」

「おっけー」


 希はサバイバルナイフを、腰のベルトに鞘を通して装着していて、そこから素早く抜き放つと、スライム中心部のコアに向けて一気に振り下ろした。

 ナイフはコアを直撃し、そのままスライムは黒い霧に包まれて消えて行った。

 ドロップは無かった。


「へー希、思ったより全然やるじゃん、魔物を殺す事に戸惑いも無いし感心しちゃったよ」

「先輩! もっと褒めてください。私は褒められて伸びる子なんです」


 時を置かず今度は芋虫型の魔物だ『デスクローラー』と呼ばれるその魔物は口を開くと四つの牙が付いている。

 子犬程度なら一口で飲み込めるサイズだ。


「希、任せたよ」

「了解です」


 今度は、逆手に握ったナイフを水平に突き出した。

 切り裂かれた体から体液をまき散らしながらも、まだ倒れてない。


 弱点は額にある3番目の目玉の様に見える部分だけど、短い武器だと牙で傷つけられる可能性があるから、確かに狙いにくいけど、中途半端に傷つけると狂暴性が増すので、あまり良くない。


 希は結構冷静に『デスクローラー』から距離を取って弱るまで放置してから、とどめを刺した。

 悪くは無いけど、この階層の敵を倒すにはちょっと時間が掛かりすぎかな?


「大体解ったわ、後は私に任せてね二層まで急ぎ気味に移動するよ」

「はい、今のはダメだったですか?」


「クローラー系統は横に切り裂くより、頭の直ぐ後ろを輪切りにするような感じで切り裂くともっと早くとどめを刺せるわね」

「あ、そうなんですね。勉強になります」


 一層の守護者の手前で再び現れたクローラーを、私は金棒を構えてフルスイングで顔面から叩き潰した。


「うん、ジャストミート!」


 一撃で消えて行った。


「先輩……凄いですね」

「そうでもないよ?」


 二層は、あまり人気のない狩場だから結構いつでも空いている。

 不人気の理由はこいつだ。


『カサカサカサ』という音と共にそいつは現れる『ビッグG』と呼ばれる黒光りした物体だ。

 群れる事はまず無いから、そこまで危険は無いんだけど『ビジュアル的に無理』という人が多い。


 時々羽を広げて飛ぶ時もあるから、それはおぞましいけど、速度もそんなに早くないし、遠距離攻撃手段を持たないので、落ち着いて近寄って来た時に頭部を叩き潰せば対処は簡単だ。


 もう一種類は、カエル型の魔物で、ピョンピョン跳ねながら長い舌を伸ばして攻撃してくる、大きさは三十センチメートル程だ。


 どっちもリーチの短い武器だと、対処はしにくいかもね。


 私は三十分ほどで二十匹程度の魔物を倒し、十五個ほどのドロップを出した。


「希、今日は時間が遅いからもう帰るよ」

「はい、先輩凄いですね、てかドロップの数おかしく無いですか? 普段私達五匹倒して一つぐらいしか出ないですよ?」


「そうなんだね、でも私も先週くらいまでは、そんな感じだったよ」

「えぇそれって先輩的には理由が判ってるんですか?」


「まぁね、まだ内緒だけど希が本当に私と一緒にやって行くってなって、絶対に秘密も守れるって私が納得したら、少しづつ教えてあげるよ」

「先輩! 私が先輩の信用を裏切る様な事は絶対無いですからね、信用出来なかったら私の恥ずかしい写真とか色々送って置きますから、いつでもSNSで公開しちゃってください。それくらいの覚悟はあるんです」


「恥ずかしい写真て、何で希はそんなの撮ってるのよ? でもね知らなかった方が良かったって後悔する事になるかも知れないよ?」

「先輩と一緒に居られるなら、後悔なんてしないです」


「そっか、希、じゃぁ一回帰ってから少しうちにおいで」


 ダンジョンの外に出ると協会の買取所に向かった。

 もう遅いから、今日は買い取りは頼まないけど、杏さんに声だけかけて置こうと思って寄ったの。


「杏さん、今日はもう帰りますね。また明日来ます」

「あら、早いのね私は明日お休みだからさ、今日ちょっと一緒にご飯でも行かない? 勿論、希ちゃんも一緒でいいから」


「ちょっとお母さんに電話してからお返事していいですか? 一応まだ高校生だから心配しちゃうし、希も行くなら家に電話しておいてよ」

「はい、じゃぁちょっと電話してきます」


「ごめんね、急に誘ったりして」って、杏さんに謝られちゃった。

「私は杏さんのお誘いなら喜んで行きたいですから、謝ったりしないで下さい」


 お母さんに電話すると「全然気にしないでゆっくりでいいよ」って言ってくれた。


「ダンジョンの中で狩りしてる訳じゃ無かったら、何も心配する事が無いからね」って言う理由だったのは、ちょっと微妙な気持ちになっちゃったけどね。


 希も電話で許しを貰えたみたいで「先輩OKですー」と言いながら戻って来た。

 希の家も、お父さんが居なくてお母さんと弟の三人暮らしなんだよね。

 小学生の時には既にお母さんだけって言ってたから、理由は知らないけどね。


 杏さんの仕事が六時までらしいから私は希と二人で、喫茶コーナーで暇つぶしをする事にした。


 忘れない様にステータスチェックしなきゃね。


【鑑定】

  柊 心愛 17歳(女) LV19 ランキング1,542,158,943位


HP 2300/2300

MP  230/230

攻撃力  52  +-

防御力  23  +-  

敏捷性  23  +-

魔攻力  51  +-

魔防力  23  +-

知能   23  +-

運   101  +-


ポイント 10  +-



スキル:【鑑定】【超成長】【ステータス調整】【アイテムボックス】【聖魔法】【パーティ作成】


 あ、レベル上がってたんだ。

 希はどうかな?


 真田 希 16歳(女) LV8  ランキング 2,982,357,326位


HP 800/800

MP  80/80

攻撃力  8 

防御力  8

敏捷性  8

魔攻力  8

魔防力  8

知能   8

運    8


ポイント80


スキル:無し


 二つもレベル上がってるじゃんパーティ機能凄いね。


「先輩、今日は家に帰ったら早速撮影した動画を編集してみますね」

「希、あんまり遅くまでやって朝起きれないとかなったらダンジョン探索連れて行かないからね?」


「えー、わかりました頑張って朝はちゃんと起きます。その分は授業中にしっかりと睡眠をとります!」

「それもアウトだよ!」

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