第20話 情報公開
私と希は、もう一度それぞれの自宅に連絡を入れ、遅くなることを伝えた。
希のお母さんは昔から私も顔見知りなので、私が電話口に出ると安心してくれて助かったよ。
私達は杏さんと天神の有名ホテルのラウンジにタクシーで移動した。
「協会内だと他のスタッフたちの耳があるからね、かなりの重大情報だから今から私の上司の澤田課長と、ダンジョン協会の顧問弁護士の方が見えるわ。お会いして以降の会話は録音をさせて貰う事が一点と、お話が終了した後は、すぐに公正証書を作成して、話の内容がダンジョン協会に提供された重要情報である事が保障されるわ。別勢力の抜け駆けを抑制するために世界中のダンジョン協会に今晩中に公式発表として情報を流すからね」
「なんだか凄い大事になっちゃいましたね先輩、私何だか興奮してます。うなじのにおいで落ち着かせて下さい」
「何で希が興奮して、私がうなじの匂い嗅がれなきゃなんないのよ? 意味解んない」
「だってぇ」
「だってじゃない」
ラウンジに男性が二人現れ、杏さんから紹介された。
「私の上司の澤田と協会の権利関係を専門に扱われる弁護士の熊谷さんよ」
「初めまして、柊と申します。横に居るのは真田と言います」
「高校生だと聞いていたけど、随分しっかりとした挨拶ですね感心しました。ダンジョン協会の探索課の課長で澤田と申します」と挨拶をされ大きな手で握手を求められた。
「弁護士の熊谷です。本日のお話の可能性はまだ内容をはっきりとお聞きしてはおりませんが、大変な価値を持ったお話であると予想出来ますので、セキュリティと今後の対策はお任せください」
と、熊谷さんも握手を求めて来た。
五人で、ホテルの会議室へと移動して、私が『ダンジョンリフト』の存在と使用方法を説明した。
「素晴らしい、それが事実であれば現状二週間以上を掛けて、移動している最前線の攻略部隊も日帰りでの探索が可能になると言う事ですね?」
「私はまだ七層までしか試して無いですけど、恐らく間違いないはずです」
「これは想像以上だ、この情報の価値は恐らく一千万USドルを超える」
「そんなに……ですか?」
「それでも安いくらいです」
「しかし、どうやってこの事実を気付かれたんでしょうか?」
「あの……それは言わないと駄目ですか?」
「いえ決してダメでは無いですが気になったので、ダンジョン探索はそれぞれが独自の技術や知識を持って挑む物です。云わばその情報が飯の種ですから、言ってもいい事、言いたくない事の選択は個人の自由です」
「そう言って頂けると助かります。私が知りえる情報の中で、全体の人が問題なく使えそうな情報に関しては、これからも杏さんを通じて発信させて頂きますので、よろしくお願いします」
「それは全体で使えない、例えば柊さんだけが使えるような重大情報を持っているという事ですね」
「……あ、そ、そんな事無いですけど……」
「大丈夫ですよ、詮索はしませんから、その代わり協力をお願いする事も有ると思いますので、その際はぜひよろしくお願いします」
「解りました」
「心愛ちゃん、うちの上司はこう見えて頼りがいがあるから大丈夫よ。ちゃんと心愛ちゃんと希ちゃんを守ってくれるからね」
「先輩、話が凄すぎて、なんか私ずっと放心状態でした。うなじ嗅がせてください」
「却下」
「ちょっと時間が遅いんですが、これから実際に博多ダンジョンで検証を行いたいと思います。いいでしょうか?」
「はい大丈夫です」
「あのちょっと私、歯磨きさせて頂いて良いですか?」
杏さんがニンニクたっぷりのラーメンを食べた匂いが漂っていたので、それは私もした方が良いと思っていた。
「どうぞ行って来て下さい。私は表のコンビニでブレスケア買って来ておきます」
「ゴメンね、心愛ちゃん」
杏さんが歯磨きから戻って来てから、五人でタクシーに乗ってダンジョンへ向かった。
まず私が見本を見せた。
その後でそれぞれがランキングプレートを取り出して、実際に『ダンジョンリフト』を利用してみた。
問題なく全員が利用できたことを確認して、この後の事は澤田さんと熊谷さんに任せる事になって、私と希は杏さんが自宅まで送ってくれる事になった。
「遅くまでごめんなさいね、でも心愛ちゃんのお陰でダンジョン探索は、一気に何年分も進歩したわ。これからも期待してるわね」
「あんまり期待しないで下さいね。私は普通の女子高校生ですから」
「先輩、それは私でもわかるけど無理だと思うよ?」
「あ、恐らくだけど、心愛ちゃん今回の件でSランク認定されると思うわ。そうなると私は窓口業務から外れて、心愛ちゃんの個人秘書として勤務できるけど、どうする?」
「えと、凄く嬉しいですけど、そんだけ色々期待されちゃうって事ですよね? 少し考えさせてください」
「わかったわ、いい返事を待ってるわね。じゃぁお休みなさい」
「お休みなさい、杏さん。色々ありがとうございました」
「希も明日も学校だから早く寝なさいよ? 寝坊したらダンジョン探索は強制的に休ませるからね」
「えぇ、それ酷いですよ。絶対起きます。今日のお宝画像の編集もあるし」
「お宝画像って……なんか変なことに使わないでよ?」
「それは……善処します」
ふぅ……長い一日になっちゃったな。
明日から、もっと忙しくなりそうな予感がするよね?
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