第21話 酢豚と水魔法

 もう夜の十時半になっていた。


「あぁ、酢豚の準備してたんだった。どうしようかな? あんまり遅い時間に食べると太っちゃうかな?」


 でも、折角お野菜とか用意したんだし、頑張って作ろう。

 ボアの高級霜降り肉は一口大の角切りに切って、卵の白身を絡めて片栗粉をまぶしてさっと揚げる。

 一口大に切り揃えた玉ねぎとパプリカとキクラゲも百八十度の油をさっとくぐらせて鮮やかな色を出す。


 中華鍋に油通しをした材料を入れ、お酢と砂糖とお醤油をお玉で一杯ずつ加え一煮立ちさせる。

 ここにデリシャスポーションをお玉で二杯加え、全体に火が通るくらいに煮立たせる。


 スライムゼリーを加えて、トロミを付けたら、ごま油を一回し入れて香りを出す。

 これで出来上がりだ。


 色鮮やかな酢豚の完成だよ。

 スライムゼリー結構使い勝手いいかもね。


 材料の表面を綺麗に艶やかなコーティングをしてくれていて、キラキラしてとても美味しそうだよ。

 私は、キュウリやパイン缶は酢豚には使わない派です。


 早速実食!


「うん、美味しいなぁ幸せ」

 

『セレクトスキルの選択権を取得しました』


【水魔法】

【火魔法】

【土魔法】 

【風魔法】


 見事に魔法が並んじゃったな。

 どれがいいかな?

 なんとなく、使い勝手が良さそうなのは、風魔法かな?

 

 そのうち全部取ると思うし、考えなくても良いかな?

 でもそんな考え方じゃダメ、次の八層の敵をしっかりと調べて、それに適した魔法を覚えなきゃ。


 早速パソコンでダンジョンリークスのサイトに移動すると、トップページに大きく重大発表という文字が躍っていた。


「あ、もう発表したんだ。澤田さん仕事早いなぁ」


 博多ダンジョン発の情報として、大きくトップページを飾っていたが、まだ具体的な『ダンジョンリフト』の使い方は書かれておらず移動方法の概要だけが掲載されていた。


 リフトの使い方は、明日の朝九時に公式発表されるという事だった。

 それに先駆け、各国の国軍が展開する最先端の探索現場には、既に詳細な使用方法が伝達されて、検証が行われているという情報が載っていた。


(みんなが、便利になって良かったよね)


 忘れてた、八層の情報見なきゃ。

 七層の守護者は、通常ボスだとネクロマンサーが召喚魔法を使ってスケルトンが時間と共に増えていくのかぁ。


 それだと、ホーリーシャワーで十分対処出来そうだよね。

 火魔法を覚えて、範囲で焼いて倒すのもありかもね。


 レアボスだとリッチが暗黒魔法を使って来るんだね。

 これは状態異常や呪いを使って来るから、手こずるかもね。

 でも物理攻撃しか出来ない軍が突破してるんだから、そんなに心配はしないでもいいよね?


 八層は砂漠ステージだって、サソリとワームと昆虫型の敵がメインなんだね。

 それなら水魔法かな?

 レベル上昇で氷魔法にならないかな? それとも別系統なのかな? 鑑定して見たら判るよね。


~~~~ 

【水魔法】

 水神ネプチューンの加護により、様々な水にまつわる魔法が使える。


アクア    LV1

アクアソード LV5

アクアランス LV15

アクアビーム LV25

アクアシャワーLV35

大洪水    LV100


アクアシールドLV10

アクアヒール LV20

アクアウオールLV50

~~~~


 強いけど氷は別系統なんだね。

 でも、これが一番良さそうだから、取得しておこう。


 明日の探索が楽しみだな。

 でも希どうしようかな? 今日『ダンジョンリフト』の事で秘密は少し知ってしまったから、何か魔法を選ばせるのもいいかもね。


「ばれたら国に囲い込まれて一生自由が無いよ?」って良く言い聞かせたら、きっと大丈夫だろうしね。


 でも他の人も同じ料理を食べたら、選択でスキルが選べるのかな?

 それとも別のルールが存在したりするかもね?


 今後出て欲しいスキルは移動系のスキルが欲しいよね。

 転移魔法とか覚えられたら最高だよね。


 早く寝ないと、明日の学校がきついかな。


「お休みなさい」とお母さんに挨拶して眠りについた。


 ◇◆◇◆ 


「先輩おはようございまーす」

「おはよう希、どうしたのこんな朝早くから」


「今日は完徹ですー。先輩の昨日のお宝画像を編集してて気づいたら朝になってましたー」

「希、解ってると思うけど学校で居眠りなんてしたらダンジョンには連れて行かないんだからね?」


「そんなー……出来るだけ頑張って授業はちゃんと受けますからダンジョンも連れてってください」

「ダンジョンを甘く見たらダメだよ。体調管理は大事だからね」


「もう時間が無いですけど、今日学校終わってから私の自信作を見てくださいね。先輩がオッケーだったら、早速ダンチューブにアップしますから」

「わかったよ、じゃぁ学校行こうか」


 学校ではダンジョンリークスの記事が凄い話題になってた。

 中学校時代からの友達で、私がダンジョンに通いだす前には結構遊びに行ってた由香が声をかけてきた。

 由香は新聞部に所属するメガネっ子で大人しい雰囲気ではあるけど、高校一年生の時にはダンジョン探索もやってたから、結構アクティブな部分もある。

 最近はダンジョンには行ってないみたいだけどね。


「心愛、ニュース見た?」

「ごめん、ちょっと今日は寝坊しちゃったから見て無いよ」


「珍しいね心愛にしては。でもダンジョンの階層移動方法があったとか、超凄くない?」

「あーその話なんだ。それなら昨日寝る前にダンジョンリークスで見たよ。便利だよね」


「二層のビッグG見なくていいんだったら私もまたダンジョン行こうかな?」

「あら、由香ってそれでダンジョン行くの止めたの?」


「言って無かったっけ。あの姿がトラウマで止めてたんだよ。三層より下じゃ無いと行っても全然稼げないしね」

「そうなんだぁ、でも事故が合ったばかりだから、ご両親とか反対しない?」


「そうだよね。もう少し様子見てからの方がいいかもね。でも心愛は相変わらず一人でやってるんでしょ?」

「うん、基本はそうだね。人を守れるほど強く無いから一人が気楽だよ」


「心愛って凄いよね、発想が自分が守って上げる事が前提だし、私なんか守ってもらう事しか考えないよ」

「それは駄目だと思うかも……」


 放課後になり、希と待ち合わせて家に帰った。


「先輩、さっそく見てください」


 希の持ってきたUSBデバイスを私のノートパソコンに差し込んで再生した。


「結構、綺麗に撮れるものなのね」

「私の先輩への愛を感じるでしょ」


「でも、これがダンジョンチューブの中で公開されるとなると結構恥ずかしいなぁ」

「大丈夫ですって、心愛先輩がこんなに素敵なんだってことを全世界に広めましょう」


「今日の動画だと問題は無いけど、これから先の動画はまだ公開するのは待ってもらうような内容も出てくるから、この先の動画も必ず私がチェックしてからアップするって約束してね」

「わかりました。じゃぁこの動画は早速今晩からでもアップしますね」


「視てくれる人なんているのかな?」

「先輩のビジュアルと実力だけでも一週間でお気に入り登録一万件は間違いないと思いますよ」


「なんか照れくさいな」

「すぐにダンチューブ界のスーパースターになりますって」


 動画を確認した後で地下鉄に乗りダンジョンへと向かった。

 ダンジョン協会に到着すると、今日は休みだって言っていた杏さんがカフェコーナーに居て手を振ってた。

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