第99話 樹里さんと美穂さんと戦闘メイド
博多ダンジョン十二層は、ゴールデンウイーク中でも閑散としている。
協会のBランクを達成しないと入れないと言う条件はあるんだけど、樹里さんや美穂さんのような特務隊関係の人は別だよ。
十二層は氷ステージでアザラシやペンギンなどの形をした敵が多く、前に来た時は火魔法で焼き払っていったんだよね。
私は新武器クリティカルポールを構えると、いつもの様に素振りをした。
『ヒュオン』正に空気を切り裂くと言った表現がぴったりの音が鳴った。
「心愛ちゃん。今何したの?」
「え? 素振りですよ」
「ぇ……全く見えなかったよ、樹里見えた?」
「見えなかった……」
「希はどう?」
「私は残像程度には見えましたよ」
「だ、そうです。慣れたら見えますよ」
「無理っぽいなぁ」
長さの調節はイメージで出来るんだね。
如意棒みたいに無限に伸びるとかなら良いのにね。
それでも、一メートルの長さの棒が瞬間で二メートルまで伸びるなら、動きを見せずに近距離の敵を付き飛ばせるし十分に有効かな?
今となってはレベル五十二でステータスも振った上に、身体強化で三十パーセントアップだから、この階層で後れをとる事はまず無いけどね。
希もボーンランスで面白いように敵を倒してる。
美穂さんと樹里さんは、自衛隊から支給されている自動小銃の先に大きめのナイフが取り付けてあるタイプの武器を使ってるけど、普通に考えたら女性には少し重いよね?
カラーズに成って特務隊入りをすると希望の武器を支給して貰えるそうだけどね。
でも、身のこなしは流石に良くて、この階層の敵だと問題無く戦えてる。
「美穂さん、ちょっとこの階層寒いから下に下りましょう。ボス戦は二人で頑張ってみて下さいねー」
「希ちゃんの時も思ってたけど、心愛ちゃんも結構スパルタだよね。自衛隊だと二人でボス戦なんて、あり得ないからね」
「そうなんですね、やっぱり税金使うから怪我してポーション代とか掛かると突っ込みが入るのかな?」
いつも通りの大きな透き通ったトナカイ『クリスタルディア』の攻撃には銃剣ではリーチが足りずに攻めあぐねていた。
頭を下げて二メートルにも達する大きな角の攻撃を避けきれずに、飛ばされたところで、交代した。
「希、任せたよ」
私が二人にヒールを掛けて治療している間に、希はランスをディアの額にめがけて、一直線に投げた。
突き刺さった所から、砕け散る様にディアは消え去った。
「ひゃ、希ちゃんそんなに強かったの?」
「まだ全然本気じゃないですよぉ」
「一応下関の踏破者ですからね、希は」
「まだまだなんだね、私達って」
「でも、足の運びとか構えとか、二人とも凄く綺麗だから、同じような動きが出来るようになりたいですよ」
「そうなの? あんな実力見せられた後で言われても実感わかないよね樹里」
「だよね」
その日はそんな調子で十六時頃まで狩りをして、十八層まで辿り着いた。
十七層でダンジョン産の小豆と枝豆が手に入ったから、これで何か考えようかな?
当然の様に私とパーティを組んでいた二人は、超成長の効果もあって順位が凄く上がってて喜んでいたよ。
私は、この階層だとそんなには上がらなかったけどね。
二人の順位は
柊 心愛 17歳(女) LV52 ランキング 424,358位 ランクイエロー
真田 希 16歳(女) LV45 ランキング 12,952,496位
ダンジョンから出て、カフェで美穂さん達と話していた。
「樹里さん達って、何か武道とかやってたんですか?」
「あぁ私達は高校時代は剣道部だったよ、インターハイまでは行った事有るよ」
「自衛隊でもずっと剣道は続けてるしね」
「やっぱりそうなんですねぇ、私達も教えて貰えないですか?」
「教えるなんて、心愛ちゃん達の方が全然強いのに?」
「それは今はステータスが違うからで、もし二人が同じステータスだと全然適わないって解りますよ」
「そうなのかなぁ?」
「いいじゃん樹里、教えて欲しいって言うなら教えてあげれば。今のままじゃ私達護衛らしい事、何もできて無いし」
「それなら合気道も美穂は二段だから、型くらいなら教えてあげれるよ」
「是非お願いします」
協会の受付カウンターに行くと、総合受付の方でカラーズのプレートを提示して、訓練場を貸して貰うお願いをすると、カラーズはこういう場合でも特別扱いで無料ですぐに用意して貰えたよ。
折角なので日向ちゃんにも連絡をしてダンジョン協会まで来てもらった。
一時間半ほど基本の動きとかをみっちりと習うと、なんだか動きが随分スムーズになって来たような気がした。
途中で実験! と思って私と希のステータスを、美穂さん達と同じに揃えてみたら、当然の様に全く適わなかったから、定期的に教えて貰った方が良いかな?
基礎的な能力が樹里さんたちよりもさらに低い日向ちゃんには、かなり大変だったようだ。
「日向ちゃん、まだレベルも低いままだしあまり無理しないでね?」
「いえ、そんなこと言ってたら立派な戦闘メイドを名乗れませんから、レベルの低い今のうちから基礎をしっかりと学んで、希に追いつきたいです」
「日向ちゃん、マジで言ってる? それ相当だと思うよ」
「でも、希だって私と一緒に狩り行ってた頃には私の方が強いくらいだったじゃん。あれからまだ二週間ほどしかたってないんだし、頑張れば追いつけるはずだよ」
「負けないもんねーだ」
確かに希も私と一緒に行くようになってまだ期間も短いし、もっと言えば私だって三週間前には、普通の女子高生とそんなに変わらなかったんだから、あり得ない話ではないかもね。
「美穂さん達は美咲さんから私の能力とか、ある程度は聞いてますか?」
「そう言うのは聞いてないよ、ただ二尉よりも全然強いとしかね」
「そうなんですね。二人共、私達と行動を共にする以上ある程度は知っておいてもらわないと、いざという時にびっくりしちゃったりするかもしれないので、基本的な事は知っておいて貰いますけど、くれぐれも内緒でお願いしますね」
「大丈夫よ、そういう部分は。一応自衛官ですから守秘義務はたくさん抱えてますので」
「なんだか自衛隊の中って、とても言えないような秘密とか沢山ありそうですよね?」
「先輩! それって性的な事とかですか?」
いきなり希が喰いついて来たので、思いっきり脳天にチョップして黙らせたよ?
「そんなの、ある訳無いですよね?」
と樹里さんに振ると、視線を斜め上にそらした。
まさか……
その後で西新のマンションに寄って、シャワーを浴びると五人で転移をして食堂に戻った。
「私の秘密はこんな能力とかですから、くれぐれも内緒でお願いします」
今度は樹里さんも美穂さんも無言でコクコクと縦に首を振ってたよ。
日向ちゃんも動画編集である程度の事は知ってたけど、さすがに転移にはびびってた。
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