第178話 夏のボーナス

「先輩、おっはよぉございまぁす」

「おはようございます」

「おはよう希、日向ちゃん。杏さんもおはようございます」


「珍しく遅かったわね? 昨日は流石にちょっと疲れたかな?」

「そうですね。大丈夫だとは思ってましたけど、死刑しか法定刑が無いとか言われたらちょっと焦りましたよ」


「だよねー、冴羽社長たちが来るまでまだ時間はあるし、ゆっくりとモーニングでも楽しむといいよ。卵は何が良いかな?」

「オムレツでお願いします!」


「了解! 心愛ちゃんみたいに綺麗には焼けないけど形にはなるから任せてね」

「杏さんもお料理できる人なんですかぁ? 胸部装甲だけでなく、お料理までとか女子力高すぎですよぉ。おっぱいだけでいいから分けて下さい」


「おっぱいは別として、お料理はちょっと頑張れば人並みにはすぐ出来るんだから、希ちゃんも頑張りなさい」

「それって……おっぱいは諦めろって言う事なんですか?」


「希、馬鹿な事言ってないで、新しい学校の準備もしなさいよ?」

「実技中心ならきっと大丈夫ですから」


「ちゃんと普通の授業もあるんだから勉強も頑張りなさいよ? それと今日は冴羽社長が来たらみんなに夏のボーナス渡すからね。事務の人と和さんも今日は十時にここに集合だから」

「先輩! まさか今時、現金支給なんですか?」


「なんだか賞与だけは、現金の方が有難味が有るって冴羽さんが言ってたからね。杏さんにも出したいけど協会の人だから駄目なんだって」

「心愛ちゃん、気持ちはありがたいけどね、私専任担当で一体いくらのボーナス貰ってるか知ってる?」


「前に計算式だけは聞いた気がしますけど」

「結局ね、D-CANが今の私の担当でしょ? D-CANが協会に納品した総額がね今回の査定期間で五十億USドルもあるんだよね。そのうちの協会手数料が十パーセントだから五億USドルそしてその一パーセントが私のボーナスだから、五百万USドルだよ? 全然私の収入とか気にしなくていいからね?」


「ひゃぁ! 杏さんメチャお金持ちじゃ無いですか? 回らないお寿司行きましょう!」

「希ちゃんが行きたいお店にいつでも連れて行くよ?」


「希にもちゃんとボーナスはあるんだから、たかったりしないの。今回は冴羽さんの社長査定と、私のオーナー査定の合算で渡すから結構あるからね」

「はい! 期待します」


 ◇◆◇◆ 


 十時前には全員が揃っていたので、杏さんに淹れて貰ったコーヒーを飲みながら、和やかな感じで話は始まった。


「まずみんなが頑張ってくれたお陰で、D-CANの業績はすこぶる良好だ。ありがとう。昨日は急な騒ぎに巻き込んでしまって済まなかった。まだ発足から二か月ほどしかたっていないので本来の賞与の査定期間というには短いんだが、オーナーとも相談の上みなさんに夏季賞与を支給する事になりました」


 みんなから一斉に拍手が巻き起こった。


「それではオーナーからも皆さんに一言お願いします」


 冴羽社長に話を振られて、ちょっと焦ったけどお礼を言うことにした。


「みなさん本当にこの会社に来ていただいてありがとうございます。私だけではこんな風に色々な事が出来る会社にするなんて絶対できなかったから、心から感謝しています。これからもみんなで協力し合っていきましょう。それでは早速夏のボーナスを渡します。最初は冴羽社長からです」


 私が冴羽社長に用意した夏のボーナスをアイテムボックスから取り出した。

 映画なんかでよく見かけるジュラルミン製のアタッシュケースで十個を積み上げた。


「社長、これが私が今回用意した社長への夏のボーナスです」


 みんなの目が点になった。


「オーナーありがとうございます。心が震える額ですね。俺の一生をかけてD-CANの発展に尽くすことを約束します」

「後は一人ずつ社長から受け取ってくださいね」


 冴羽社長がみんなの前に立って、私は平社員としてみんなの横に並んだ。


「今回みんなに渡すボーナスは会社としての査定とオーナーからの激アマ査定の合算だから中身は期待してくださいね。まずはアンリさん。加入してもらったばかりですが、初仕事から期待通りの成果を見せていただきました。昨日は緊急事態の対応も私とオーナーが不在の中、適切に動いていただけたことを感謝します。アンリさんにはクリスマスホーリー全員、二十名分をお渡ししますので少し多くなりますが、マジックバッグがあるから大丈夫ですね?」


 そう言ってジュラルミンケースで三十個を積み上げた。


「各ジュラルミンケースに名前が書いてありますから、それぞれに渡してください」

「入ったばっかりでこんなに用意してもらっていいのか? っていうか俺のマジックバッグじゃこんなに入らないぞ」


 そう返事をするアンリさんに私が声をかけた。


「アンリさん、マジックバッグのランクっていくつでしたっけ?」

「俺のはランク2だ二百キログラムしか入らん」


「そうなんですね、じゃぁちょっと現物支給分を用意します」


 そう言って、アンリさんの前にカツ丼を出した。


「これを召し上がってください」

「お嬢……これは……まさか?」


「食べればわかりますよ」


 アンリさんがアイテムボックスを取得した。


「お嬢、一体どれだけの容量なんだ?」

「えーと、レベルかける一メートルの立方体の容量ですね。今のアンリさんのレベルならタンカー一隻分よりも大きな容量かも」


「めちゃくちゃだな……戦車チャリオットでも仕入れて入れておくか」

「買ったら私も乗せてくださいね」


 その後は希から順番に一人ずつに冴羽社長から手渡していった。


「しぇ、しぇんぴゃい、お金って横にして倒れない量が存在するんでしゅね」

「無駄遣いせずにちゃんと貯金もしなさいよ?」


「ひゃい」


 みんな、凄い感激している。


 希のお母さんは「今まで希や淳に何一つ贅沢させてあげれなかったから、これからは少し、いい思いをさせてあげられます。本当にありがとうございます」と言って目がウルウルしていた。


 事務の藤原さんは「社長、オーナー本当にありがとうございます。私も一生お世話になれるように頑張りますから、これからもよろしくお願いします」と満面の笑顔だった。


 日向ちゃんも「私にまでこんなたくさんのボーナスをいただけるなんて感激です。一生、先輩のために頑張ります」と嬉しそうにしてたよ。


「みんな一生とか重たい事は考えなくていいんだからね? 日向ちゃんは今からダンチューブ事業の方でもっと忙しくなるから頑張ってね」


「最後は心愛ちゃんだ。心愛ちゃんには会社からの査定だけになるよ」

「はい! ありがとうございます。とっても嬉しいです」


「さぁ冬のボーナスはもっとたくさん渡せるようにしたいから、皆さんも頑張ってくださいね」


「「「「「はい!」」」」」

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