第50話 クリスタルディア

「今日からは宝箱を心配無しで空けれるね」

「嬉しいですぅ。この間の時、勿体なくて悔しくて涙出そうだったから」


「それこそ7チャンネタで出ていたみたいに、六層以下に潜るパーティで罠解除専門要員として、浮浪者を雇って連れて行く人たちが居るとか出てたけど、あれって本当の話なのかな?」

「先輩……結構見てるじゃないですか7チャン」


「まぁ予備知識程度だよ」

「私が見たスレッドだとですね、反社会勢力の人が浮浪者集めてダンジョン講習とかを受けさせて、無理やり六層まで連れて行くんだって、そこでCランクギリギリのドロップを持たせて、Cランクにさせた後でポーターのアルバイト派遣をさせているらしいですよ」


「今聞くと、本当にありそうな話だよね」

「ダンジョンの宝箱の事故ってどれくらいあるんですか?」


「それはね……」


 杏さんの話からすると一日十個程度宝箱のアイテムが鑑定されていて、年間で三千五百個程度発見される。

 罠無しの宝箱は約二千五百個程度で残り千個程は罠付の宝箱。


 宝箱での負傷事故は去年のデータだと、五百件程起きていて、死亡事故は百件程起きている。

 

 だから罠付の宝箱を開けると五十パーセントは何らかの負傷を負い、十パーセントの人は亡くなっている。


「そうやって聞くと、決して低い確率じゃ無いんですね」

「私達は、他の人に比べると運の数値が圧倒的に上げてあったりするから、宝箱の発見割合自体高いけど、普通の人達は毎日大体十万人の探索者が居るのに対して、十個しか発見されない事を考えたら、いまいち他人事だと思ってしまうのかもしれないけどね」


 ダンジョンリフトで十二層に降りるとやはりかなり寒かった。


「先輩、ダウンやっぱり必要だったでしょ?」

「そうだねぇ、希、偉い」


「もっと褒めてください」

「いつも通り二時間程狩りをしたら十三層へ降りて帰るからね」


「何か話の流れが噛み合って無いような気がしますけど一応了解です」


 火魔法を中心にした狩りを行う事で大した危険もなく狩りを続けドロップもそこそこ集まった。


「先輩、最近全然協会で買い取りだして無いですけど、結構貯まってるんじゃないですか?」

「そうだね、杏さん帰って来たら、顔が引き攣るかもしれないね」


「ざっとで一日どれくらい稼げてるんですか?」

「気になる?」


「それは勿論」

「今日だとざっとで百万円くらいかな?」


「えええぇえ、そんなにあるんですか?」

「そうだね、一応三分割して、私と希と会社の内部留保分で分けるけどね」


「先輩……冷静に考えておかしくないですかその配分方法だと。もっと少なくて構わないんでちょっと考えなおしましょう」

「ん-、でも最初に決めてたからねー、一緒に狩りしてる以上はそれでいいんじゃないかな?」


「一応了解です」

「さぁ守護者倒しに行くよ」


 出て来たボスは『クリスタルディア』四メートル程の大きさがあるトナカイだ。


「大きくて綺麗ですねぇ」

「緊張感のないセリフ言わないの!」


「でも、ファイアランスで倒すでしょ?」

「そうだけど」


 私の発動したファイアランスは一撃でクリスタルディアを黒い霧へと変えた。

 倒した後には宝箱が出た。


「あ、出たね……しかも罠付だよ。希、解除してみて」

「やってみますー」


【解除】


「えーと、今回は罠があるって解ってたけど、いつも宝箱を開ける前に解除を使ってから開ける様にしたらいいんですか?」


「そうだね、それで問題無いと思うよ」

「中身はなにかな?」


 宝箱の中には、ウサミミの付いたヘアバンドが二つ入って居た。


「何だろうな? もし便利なアイテムだとしても、羞恥心との戦いになりそうなアイテムだよね」

「私は全然平気って言うか、むしろ着けたいです」


【鑑定】

 

『うさ耳バンド』

 装着する事で聴力を大幅に高め、索敵能力を高める。

 対になる、バンドを装着した相手との念話機能が使える。

 念話機能はダンジョン内と外でも利用可能。


 これは悩みどころが多いアイテムだよね。

 メチャ便利で使いたいし、恐らくまだ未発見アイテムなんだけど、羞恥心に耐えられる自信がないよ。


「希、本当にこれ着けたい?」

「はい! 勿論です」


「じゃぁ、着けてね。これダンジョンの中と外でも会話ができる念話機能が使える優れもので、ダンジョン内でも索敵能力が上がるんだって」

「凄いじゃないですか、先輩は基本私と一緒に居るから杏さんがもう一個は使うんですよね?」


「そうね、断らなければだけど……」

「結構、喜ぶと思いますよ?」


「何でそう思うのかが不思議だよ」


 でも、とりあえず性能調査で装着して希と念話も行ってみた。

 結果は『念話って凄い!』口に出して喋らなくても、意思を伝える事が出来る為、狩りの途中でも十分に役に立つ。


 スキルで覚えてくれたら羞恥心と戦わなくて済むんだけどね。


 索敵も種類までは解らないけど、どの方角に何匹程度の生命体が居るくらいは解る。

 敵、味方の判別できたらいいけどな。


 十三層から『ダンジョンリフト』で一層に戻り、ダンジョンショップに立ち寄って食材を探した。


「今日もお野菜にしようかな? このお茄子凄いな、長さが五十センチメートルはあるよ」

「先輩、欲求不満気味ですか?」


 反射的に、希を張り倒してしまった。


「酷いですぅ」

「女子高生の発言と思えないよう事を言うからだよ」


「だってぇ、黒くて太くて長くて他に何を思えって言うんですか?」

「もういいよ。明日の朝は来ちゃ駄目だからね」


「見られたら困るような行為をするんですか? やっぱり」

「希、どうしてもステータスオール1が良いようだね」


「ゴメンなさい、もう言いません」


今日の心愛の順位は

 柊 心愛 17歳(女) レベル29 ランキング666,345,829位


 希の順位は

 真田 希 16歳(女) レベル23 ランキング 1,025,397,477位

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