第76話 冴羽の決断
「下関ダンジョンが攻略されただと? 金沢ではなく下関か?」
「はい、金沢ダンジョンは日米合同チームの突入が行われましたが攻略は失敗、部隊は博多支部『澤田課長』の用意したエスケープスキルのオーブで、かろうじて脱出の報告が入りました」
下関は聞くまでも無いな。
柊心愛だろう……彼女は一体どれだけの実力を身に付けているのだろうか?
それよりも重要なワードが今の報告に含まれていたな。
【エスケープ】のスキルオーブだと?
澤田が用意した?
いや……それもきっと柊心愛だろう。
そんなスキルの存在初めて聞いたぞ。
鑑定のスキルオーブの存在があるから、他にもあるのでは? とは思っていたが、ダンジョンのボス部屋から、戦闘中の脱出まで可能となれば今後の攻略状況が全く変わってくる。
これまでは六層より下の階層では戦闘に突入すると、敵を殺すか自分が殺されるかのどちらかでしかダンジョンから出る事が出来なかったために、殆どの探索者は六層以下には進めなかった。
更にそれより下の階層では敵も強力になる為に、いつまでたっても下層階のドロップ品が市場では不足している。
しかし、今回のエスケープスキル、更には鑑定スキルが仮に量産できる手段があればどうなる?
市場は一気にダンジョン産の製品に席巻されるぞ。
魔石の大きさも下層階では上層階と全く変わってくるので、魔石発電も本格稼働が可能になるだろう。
自動車等のエンジンでも既に技術は開発されている。
魔石の供給量さえ追いつけばエネルギー事情も一変する。
無公害のクリーンエネルギーだ。
市場規模は想像もつかない程の巨額になる。
なんとしても柊心愛との良好な関係を維持してダンジョン産業の革命をもたらさねばならない。
一番必要な事はなんだ?
殆どの人間であれば、協力に対して見合うだけの利益を供与すればいい。
だが、果たして柊心愛はそれで動くのか?
「どうするかな?」
取り敢えず大島杏に相談するか?
俺は決して自分の利益や立場の向上だけで動いてる訳では無い。
自分が動く事で進歩する世界を見たい、作り上げたい。
「でもなぁ……俺って誤解されやすいんだよな」
とりあえず俺がする事は大島杏と柊心愛の友達にでもなってみるか?
ん? 待てよ?
俺が協会理事の仕事にこだわる必要も無いな。
柊心愛のプロデュースの方がよっぽど楽しそうだぞ。
確か大島が言っていたよな?
柊心愛が会社を立ち上げたとか。
よし決めた、リクルートしよう。
でも……雇って貰えなかったら、どうしようかな?
失敗を恐れて成し遂げられる事等無いはずだ。
俺なら柊心愛の能力を最大限に商売として成り立たせられる。
それによって見える新しい世界を必死でプレゼンしてやるぜ。
久しぶりに、やる気が出たぞ。
とりあえず電話だ。
『結城か、あのな俺協会辞めるわ。やりたい事が出来た。ダンジョンには関わって行くから、お互い協力できるとこは協力するって事で頼むな』
『冴羽、いきなり何言ってるんだ? お前折角理事になったって言うのに、何で簡単にその立場を捨てる選択が出来る?』
『まぁあれだ。もっと楽しそうな事を見つけた。俺の替りは博多の澤田がお勧めだ。奴は一直線だが仕事は出来る。俺が保証する』
『何勝手な事言ってやがるんだ。ちょっと冷静に考えろ、とりあえず俺で止めて置く。一か月やるから、じっくり考えろ。それで考えが変わらなきゃ好きにしろ』
『あー解った。ありがとうな結城』
さぁて博多に行くか!
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