第75話 賑やかな朝の始まり

「先輩、おはようございます。駐車場に見慣れない車が停まってますね、あれって知合いですか?」

「希おはよう。一応知り合いかな? ちょっと車に行って呼んで来てよ、コーヒー淹れたからって伝えてきて」


「心愛ちゃん、なんだかんだ言って優しいよね」

「杏さんと冬月さんが居るから安心してますけど、ロジャーとグレッグだけだと無理です」


「実力は確かなんだろうけど、性格がね……」

「冬月さんはとりあえずここに住んで貰って構わないですから。今お母さんもお婆ちゃんの所行ったままで一人だと広すぎるから」


「助かります。私もアメリカの二人と同じようにキャンピングカー用意して貰おうと思ってたんですよ。それと呼び名は美咲でお願いね心愛ちゃん」

「美咲さんですね」


「朝食の準備とかは私も手伝うからね」


「美咲さんって凄いですね。女性でカラーズしかもシルバーとか」

「私は最初の頃に志願したからね。ノンキャリアの女性で、しかも高卒だと自衛隊内部でほぼ出世の見込みはないと思ってた時に、五年前のダンジョン出現と、それに対応する部署の発表が有ったから、すぐ希望出して必死でランキングあげたんだよ」


「勝手に鑑定させて貰いましたけど、ごめんなさい。女性で二十三位って、もっと上の人居るんですか?」

「ロシアと中国に一人づつ居るはずですね、名前は知らないけど」


「そうなんですね。でも年齢は杏さんと同じなんですね」

「そうみたいね、杏さんもよろしくお願いしますね」


「こちらこそ美咲さん。話は変わるけど心愛ちゃん、熊谷さんから連絡があって会社の設立は無事終わってるけど表札とかどうする?」

「そんなの出さないですよ、人が来ても困るし」


「だよね、一応聞いて見ただけだよ。私はこの後は昨日のドロップアイテムの納品とか行って来るね、勿論ポーションⅧの分もちゃんと貰えるからね」


「あれって四億円近いんですよね?」

「買取でね、一般の人が治療に使って貰おうとなると十億円は取られるね。ドロップ自体が世界で初めて確認されたんだけど」


「そんな金額実感わかないですよ」

「今回の金沢の協力金も結構な額が出るみたいだよ。パーティ作成とエスケープの存在をリークスに掲載したら、また世界中の協会からの報奨金もあるでしょうし」


「なんだか使いきれないお金って、ありがたみが薄れてきちゃいますね。お父さんが亡くなるまで、お小遣い一月五千円の生活だったのが嘘みたいです」

「羨ましい話だね。私ならいくらでも使える自信あるけどな」


「そのうち使い方教えて下さいね。ただし高校生が行けるところでお願いします」

「了解」


「グッドモーニング、コーヒーのいい香りだぜ。この可愛らしいお嬢ちゃんは心愛の妹か」

「嫁です!」


「そいつは参ったぜ、心愛はそっち系の趣味なのか、男の良さに俺が目ざめさせてやるぜ」

「何訳わかんない事言ってるんですか朝から、私に嫁はいないし、男性も別にまだ求めていません」


「ロジャーとグレッグは何して過ごすの?」

「心愛が戻るまでは博多ダンジョンの攻略を進めてるさ」


「君川さんも潜るんでしょ?」

「あー班長は私も所属している『チームシルバー』で潜るそうよ。私は午後に心愛ちゃんに付き合うだけにするけどね」


「あ、それですね希望出してもいいですか?」

「どうしたの?」


「下関のボス部屋で実験をやりたいから、チームシルバーもグレッグとロジャーも二十二層に行けるようになっててほしいんです、博多からだと一時間もかからないから、私も放課後は実験が終わるまで下関に行きますから」


「解ったわ、君川班長にも伝えて置くね。私もチームに合流して下関の下層を目指しておいたほうがいいのかな?」


「そうですね、私はリフトで下まで行けるから、行けるようになってもらった方が良いですね」


「Hey美咲、俺達と一緒に行けば二十二層なんて一日も掛からないZe。一緒にどうだ?」

「そうね、頼もうかしら」


「ロジャーとグレッグは一緒に来るのは構わないけど、基本私からは何も教えませんよ?」

「俺達も一応世界のトップだと思って来たからな、出来るだけ自分で気づく努力はするさ、それに……」


「それに?」


「きっと世界のTOP探索者は、みんな博多と下関に集まると思うぜ?」

「そうなんですか?」


「俺達もそれなりに有名人だという自負もあるしな」

「あ、昨日の夜以降はダンジョンドロップでスキルオーブが出る可能性があるそうですから頑張れば魔法も手に入るかもしれませんよ?」


「WowそれはHotだな、グレッグ足を引っ張るなよ?」

「昨日の夜には引っ張る足も無かった男に言われたくないぜ」


「心愛、ありがとう本当に感謝してる」


 突然真面目顔になってお礼を言って来たロジャーに、ちょっとドキッとしちゃった。


「あー心愛、念のためなんだが、エスケープとパーティ作成のオーブって予備は無いのか?」

「その辺りは今日私が帰ってから、澤田さんを交えて相談に乗ります」


「OK」


「心愛ちゃん。エスケープの存在は、本当にダンジョン探索を一気に改革する程の事だからね、これまでどこの国の最先端の探索隊でも、新しい階層に進むには多大の犠牲を払って来たから……ダンジョンの階層守護者は基本初見殺しの敵が多いからね」

「そうだったんですね。美咲さん、私も犠牲者が減る事への協力は、惜しまない様にしたいと思いますから、ご安心ください」


 希と学校に行ってる途中で気付いたけど、どうやらシークレットの護衛が付いてるみたいだね。

 それともロジャー達が言ってたように、ロシアや中国の諜報部とかかな?

 流石に学校の中では大きな問題も無く放課後を迎えた。


「先輩、何か大変な事になっちゃいましたね。私と先輩の濃密な二人きりの時間を邪魔するとか許せないですぅ」

「でも、そのうちバレるのは解ってたしね。一応自由の保障は取り付けれてるから、しょうがないんじゃないかな?」


「そう言うもんなんですか?」

「希はどうしても我慢できないなら、無理に付き合わなくてもいいんだよ?」


「先輩と一緒に居られるなら他の事は気にしません!」

「そっか、ありがとう希、嬉しいよ」


「話は変わりますけど先輩、昨日、日向ちゃんとチャンネルの事で話し合ったんですけど、今の状況では攻略メインでアップするのは秘密の部分を隠し切れないんじゃないかなって話になってるんですよね」

「そうだね、お料理チャンネルに特化してダンジョンの部分はその素材採集の部分だけ出して行こうと思うの。それなら魔法を見せなくても何とかなりそうでしょ」


「そうですね。それと……日向ちゃんなんですけど、私と同じようにD-CANで雇用するって出来ませんか? できれば社宅みたいな感じで住む場所を用意してあげて」

「そうね。無理ではないけど、あのご両親が納得するのかな」


「今のままだとあのお義父さんが取り返しのつかない事しでかしそうな気がするんですよね」

「それは私も心配だけど……今日の夜にでも杏さんに相談してみようか?」


「はい! よろしくお願いします」


 みんな下関、何層まで下りれたのかな?

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