第44話 十層目

 杏さんの契約してくれた西新のマンションは十二階建てで最上階だった。

 1LDKでベランダからの眺めも良くて、お風呂も広くて素敵なお部屋だ。


「先輩ー私ここに住みたいですー」

「希は散らかすから住むのはダメ。ここはあくまでもパーティーの博多ダンジョン用の拠点だよ」


 そう言った後に、思い付いた事があった。


「杏さん、お手数ですけど全国の国内のダンジョンの側に、それぞれ拠点にするお部屋を借りて欲しいんですけど良いですか?」

「別に構わないけど、結構お金かかっちゃうよ? 維持費も。それに全国って札幌とかもあるから移動も大変だよ?」


「杏さん、私、転移も使える様に成っちゃったから、一度だけ行けば後は自由に行き来出来ます。転移の瞬間を見られるのだけが心配ですから、お願いします」

「はぁ……なるほどねぇ。心愛ちゃんどんどん凄くなっちゃってるのね。解ったわ、それなら言われた通りに準備させて貰うわね、あ、そう言えば会社の名前が決まって無いから、書類の社名だけまだ空欄なんだけど、どうする?」


「会社名かぁ、希、決めさせてあげるから明日までに決めてて」

「いいんですか先輩、超嬉しいです『心愛とゆかいな仲間たち』とかいう名前は付けないので安心してください」


「希……まぁいっか。一度任せると言ったからには何も言わないけど、察してよね」

「先輩、何だか背中に暗黒オーラが見えますよ……」


「杏さん、明日中にメールで連絡しますけど、それでいいですか?」

「大丈夫よ」


 拠点も決まったし頑張らなきゃね。


「杏さん、それじゃ私達は探索行ってきますね」

「私も早速今からチケット取って札幌から行って来るわ」


 ◇◆◇◆ 


「希、ちょっと状況が変わって来たから、一時間程魔法の練習したら、今日中に十一層まで到達するからね。『ダンジョンリークス』調べて無かったから、ちょっと協会の探索マップ十層の分買ってくるね」

「了解です」


 二層の『ビッグG』を相手に、希が魔法で無双している。


「希、その恥ずかしいセリフは何とかならないの? 一々『○○に替わってお仕置きよ』って、しかも言うたびに台詞違うし」

「だってぇ、月は言ったらいけない気がするから、何かしっくりくる別の台詞探してるんですぅ」


「せめてパクリっぽく無いセリフ考えたほうが良いと思うよ?」

「はぁい。今日帰ってから会社名と一緒に考えます」


 私は昨日手に入れた杖を、実践導入してみようと思って準備した。

 鑑定の結果は『魔銀の杖』という名前で、魔法威力二十パーセント上昇の効果があるんだって。

 上部の窪みは、各属性の基本魔法を宿らせた魔石をセットする事で、該当属性に関しては、五十パーセントの威力増加になるそうだ。


 どうなんだろう? こんな仕様の杖がドロップするって事は、今のオーブ作成の様なスキルは、私以外にも手に入れる事が出来るようになるって言う事だろうか?


 そうじゃ無いと余りにも私だけに限定されすぎてるよね?


「先輩、そっちGが行きました」

「あ、考え事してたゴメンね」


 そう言いながら、片手で金棒を振りぬきGはグチャっと潰れて、消えて行った。


「先輩、幾ら二層だからって、集中しなきゃ駄目ですよ」

「ゴメンね気を付けるよ」


「でも、このGって、消えても臭いがなんか残るよね」

「それだけは、我慢できないですぅ」


「希、どう? 魔法の発動の感覚は掴めたかな?」

「そうですね、近距離ならソード、遠距離ならランスを使い分けて、現状だと範囲攻撃はホーリーシャワーだけですから、その辺りを上手く相手によって使い分ける感じなら、行けそうですね」


「希って、戦闘センスあるよね」

「でしょー、もっと褒めて下さい」


 十層に移動して私も戦闘に加わる事にした。

 昨日購入したアクティブカメラも二人とも起動させている。


 この階層では協会の探索マップによると主に植物型の敵が現れる、森林ゾーンらしい。


 最初に入った部屋では、キノコが四体ほど現れた。

 カラフルだけど食欲湧かない感じな色だよね。


 氷魔法で倒したけど、火の方が相性はよさそうかな?

 基本属性だし取っておかないと駄目だよね。


 一時間半ほど十層に籠り守護者を倒しに向かった。

 十層の守護者は因縁の『ミノタウロス』が出て来た。

 隊長三メートル程の二足歩行の牛の魔物でとにかくパワーがある。

 【鑑定】をすると弱点は氷属性と出ていた。

 

「希、因縁の相手だよ。氷属性が弱点だからアイスランスを脳天に突き刺したらいいよ」

「了解ですぅ。よくも日向ちゃんと昭君をいじめたなー許さないよー」


 希の一撃でミノタウロスは消え去った。

 残念ながらドロップは出なかったけどね。


 やっぱり魔法の存在はチートだよね。


「希、杏さんの話だとミノタウロスのソロ討伐はイエローランカー以上の実力が必要らしいから、希もそのレベルはクリアしてるって事だね」

「へへー、先輩のバディーとしては当然のことですぅ」


 十一層まで下りると『ダンジョンリフト』で、一層に戻った。

 協会には寄らずに、そのままマンションに戻りシャワーを浴びると転移で食堂へ戻った。


「希、どうだった? 今日の感想は」

「先輩、やっぱり魔法は最高ですよね、火魔法を欲しいと思いましたけど」


「あ、それね私も思ってたから、取得できるようにしておくね」

「はーい、期待してます」


「じゃぁ今日もステータスチェックしておくよ」


真田 希 16歳(女) レベル18  ランキング 1,508,369,156位


HP 3000

MP  300

攻撃力  53 

防御力  33

敏捷性  33

魔攻力  33

魔防力  33

知能   33

運    58


ポイント 30


スキル

 【聖魔法】【水魔法】【氷魔法】


 やっぱり、超成長の効果は凄まじいよね。

 次は私。


柊 心愛 17歳(女) レベル25 ランキング954,245,536位


HP 3000

MP  300

攻撃力  60  +-

防御力  30  +-  

敏捷性  30  +-

魔攻力  60  +-

魔防力  30  +-

知能   30  +-

運   118  +-


ポイント 50  +-


スキル:【鑑定】【超成長】【ステータス調整】【アイテムボックス】【聖魔法】【水魔法】【転移魔法】【氷魔法】【オーブ作成】


 ついに十億位を下回ったよ。

 この調子で頑張らなきゃね!

 結構ポイント貯まってるから振り分けて置こう。


HP  4000

MP   400

攻撃力   70  +-

防御力   40  +-  

敏捷性   40  +-

魔攻力   60  +-

魔防力   40  +-

知能    40  +-

運    118  +-


ポイント   0  +-


 明日は十一層だね、ちゃんと調べて置かなきゃ。

 それよりも……晩御飯は何作ろうかな?

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