第96話 プレゼント貰っちゃった!
「心愛、この武器受け取ってくれないか?」
「ロジャーどうしたんですか? これ」
「ああ、下関でボス部屋の宝箱から出た。四人で話して心愛にプレゼントしようって話になった」
「えぇ凄い高級品っぽいですよ? これ」
「まぁそうだろうな。クリティカル二十%アップと、長さが倍まで伸びるし、折れない」
「メチャ便利じゃないですか、真っ白で綺麗だし大事にしますね」
「良かったら心愛の使ってる金棒、替りに貰えないか? 俺のメインは弩弓だからな。近接はナイフ使ってたんだがもう少しパワーで勝負できる武器に変えようと思ってたんだ」
「いいですよ、その金棒も大事にして下さいね」
「ああ、大事にするぜ」
「グレッグもありがとう」
「まぁ俺のチームのメンバー連れて、下関にはまだ通うからたまには顔を出す。心愛に忘れられないようにな」
「二人共そんな思わせぶりなセリフ言うと、アメリカの彼女さんに怒られますよ?」
「ん? 何でそれ知ってる?」
「ロジャーがグレッグの彼女の話教えてくれたし、グレッグもロジャーの彼女の話してたじゃ無いですか?」
「てめぇグレッグ余計な事を」
「お前も同じじゃねぇか」
「今度は彼女さん連れて、のんびり遊びに来て下さいね」
「ああ、色々ありがとうな」
「心愛ちゃん、私達も明日から金沢に向かうけど、樹里と美穂はこのまま護衛で残るからよろしくね」
「美咲さんも色々ありがとうございます」
「あ、でも私は金沢終わったらこっちに戻ってくるからね? 作戦行動以外は心愛ちゃんと行動したほうが良さそうだから」
「そうなんですね、早く終わったらいいですね」
「心愛ちゃん、俺も金沢が終ったら、基本は博多に居る事になる、今までメインで潜ってた横浜や渋谷は階層が深すぎるので攻略は後回しになったからな。他のDランクダンジョンは第三班から第二十班までのメンバーで、最終階層まで進めて、扉を解読してから順番を決める予定だ。第一班と第二班は基本は博多を攻略する事になる」
「そうなんですね、じゃぁ君川さんもちょくちょく会えますね」
「心愛ちゃんの会社とアイテムの取引して貰わないと攻略進まないのもあるしね」
「それは、冴羽社長の担当だから私は良く解んないですけどね!」
「そう言う事にしておくよ」
「冬月二尉」
「ん? どうしたの樹里」
「明日から金沢ですよね?」
「うん、そうだよ」
「焼肉、今日行かないと駄目ですね!」
「ぇ?」
「約束したじゃ無いですか」
「わかったわよぉ」
美穂さんと樹里さんにドナドナされて美咲さんが悲しそうな顔で旅立っていった。
◇◆◇◆
「先輩、おっはよーございまーす」
「希おはよう、今日は一段と元気だね」
「明日からゴールデンウイークで五連休ですからね、自然と元気になっちゃいますよ」
「そう言えば、希に聞いて貰いたい事が有ったんだ」
「なんですか?」
「お母さんって何の仕事してるんだっけ?」
「あ、パートで食堂に行ってたんですけど、新型肺炎の影響で今は仕事が無いんですよねぇ、うちは私のお給料でなんとかなりますけど、何もして無くて暇そうです」
「そうなんだ、じゃぁさちょっと頼まれてもらえないかな?」
「何ですか?」
「ポーチに魔石を詰める作業なんだけど、物が物だけに信用できる人じゃないと駄目だから」
「あぁ成程ですね。聞いて見ますね」
「えっとね、お給料は時給三千五百円って伝えて置いてね」
「それって、どこのキャバ嬢ですか?」
「なんでそんな発想に成るかな?」
「きっとその時給だけ伝えたら、熟女キャバクラのホステスだと思って気合入れて化粧してきますよ」
「何で時給だけ伝えるのよ、仕事内容を伝えてよね」
「時間とかって、何時から何時とかあるんですか?」
「一日六時間くらいで、好きな時間でいいよ」
「解りましたぁ」
◇◆◇◆
学校に着くと、野中先生の所に顔を出して時間を取って貰った。
「どうした柊」
「この間の握力の計測データとかって、発表したりしないんですか?」
「ああ、あれな高体連に提案したら、問題が大きすぎて発表は待ってくれと言われている」
「そうなっちゃったんですか、特務隊の人がデータの公表をして探索者の実力把握に役に立てたいらしいんですけど、どうせ出るなら先生の名前で出したら、少し報奨金出ますよ?」
「それは魅力的だが、俺から出たとなると、高体連から恨まれそうだから発表するならダンジョン協会とかに任せていいぞ。報奨金とか、もしあるなら交通遺児とかの基金に回して貰えればいいな」
「解りました、協会の人に伝えて置きますね。先生、なんか考え方が素敵ですね」
「馬鹿、お前そんな事言うと照れるじゃねぇかよ」
「橋本先生も、きっと好きになってくれますよ」
「柊! からかうな」
◇◆◇◆
放課後になって食堂へ戻ると、希がお母さんを連れて来た。
杏さんにコーヒーを淹れてもらってお話をした。
「心愛ちゃん、何だかお仕事紹介して貰えるって希が言って来たけど本当なの?」
「はい、是非お願いしたいんです。仕事自体は難しく無いんですけど、仕事の性質上、信頼出来て秘密が守れる人じゃないと無理なので」
「そうなんだね、大丈夫よ! 私で良ければ是非お願いしていいかな」
「こちらこそよろしくお願いします」
早速、冴羽さんに迎えに来て貰ってお仕事をお願いする事になったよ。
「そう言えば心愛ちゃん。日向ちゃんの件だけど熊谷先生に連絡したら一度日向ちゃんを連れて事務所に来て欲しい言って言われたわ」
「そうなんですね、早速連絡してみます」
日向ちゃんに連絡をするとすぐ来れるという事だったので、杏さんに頼んで熊谷先生にアポイントを取ってもらった。
ゴールデンウイーク中なのにゴメンね熊谷先生。
日向ちゃんが到着するとすぐに杏さんの車で熊谷先生の事務所に向かった。
「初めまして、熊谷の妻の雅美です。仕事上では旧姓の
私たちがそれぞれ挨拶をした後で、雌熊先生は日向ちゃんを連れて応接室へと入って行った。
その間、熊谷先生がコーヒーを淹れてくれて、高級そうなクッキーを出してくれたので三人で食べながら熊谷先生と雑談をした。
少し凄いなと思ったのは護衛の樹里さんと美穂さんが、ちゃんと別の車で着いてきていて、事務所の入り口を確認できる場所で待機していたことだ。
(凄い、ちゃんとお仕事してる)
「心愛ちゃん。会社の方は順調そうで何よりですね。冴羽社長ともお話させていただいていますので、ある程度の状況は把握していますが今後D-CANが扱う商品は世界のダンジョン攻略事情を一気に変えますよ」
「ありがとうございます。あんまり大きくする予定はなかったんですけど冴羽さんに来ていただいてから、どんどん話が進んでて」
「ダンジョン配信の動画の件もうかがってますよ。私も早速視聴させていただきました。お料理が美味しそうで今度是非、私にもごちそうしてくださいね」
「あ、はい。それは是非機会があれば」
「妻も心愛ちゃんの動画を見ながら真似して作っていましたよ。でも出来上がりは動画の物とは若干見栄えが違いましたけどね」
「あなた、何を言ってるんですか! 美味しいと言って食べてたじゃない」
その声で、熊谷先生がビクッとなって振り返った。
「確かに味は美味しかったから問題ないよ。話は終わりましたか?」
「ええ、日向ちゃんは早急に保護の必要があると感じました。これから早速先方のお宅へ伺い、日向ちゃんを保護したことを通達します」
話が急すぎて、ちょっとびっくりしちゃったけど実際には日向ちゃんが私に話してくれた内容よりも状況が良くなかったみたいだ。
「あの、雌熊先生、保護って施設とかにはいるんですか?」
「それは自立できるだけの環境整備が可能であれば施設に入る必要はないです」
「それならD-CANの社員として雇用する事も決まってますし、私の方で社宅の形で家も準備するので、当面は私の家に住んでもらう事で構いませんか?」
「私が後見人をするという前提で大丈夫ですね。先方にこれ以上話を大きくしないことを条件に、一切の関係を断つ提案をしますので、それを受け入れてくれるなら話は終わりますが」
「では、お願いします」
熊谷先生の事務所を出て四人で食堂へと戻った。
「心愛先輩、ありがとうございます」
「大丈夫、なにも心配しなくていいからね。家はどうする? 寂しいなら当面ここに一緒に住んでいいからね。頼りになる護衛さんたちもいるし」
そう私が言うと美穂さんと樹里さんが胸を張った。
「先輩が良ければここでお世話になってもいいですか? お料理動画の撮影の時とかも便利だし」
「了解、部屋は沢山あるからね」
「家事とかは手伝いますから、よろしくお願いします」
「先輩、日向ちゃんだけとか羨ましすぎますぅ。私も一緒にお願いします。部屋とベッドは先輩と一緒でいいですから」
「ムリッ!」
きっぱりと言い放ったよ。
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