第147話 夢の国ダンジョン三日目
朝を迎えて朝食を取っていると、杏さん、先生たち、美咲さん達もやってきた。
杏さんが、みんなの分のコーヒーを淹れて、テレビで朝のニュース番組を視ていると、探索者養成学校の反響が予想以上に大きいみたいな事を言っている。
スタンピードが実際に起こってしまったから当然の結果なのかな?
でも高校の場合だと保護者の許可も必要だから実際はどうなんだろうね?
「先生たちは流石に専門学校の人たちまでは面倒見ないですよね?」
「そうだな。俺と橋本先生は高校の普通の授業が担当だからな。専門学校は魔物の探索や、倒し方に特化してるから先生たちとは接点がないはずだ」
「それじゃぁ樹里さん達は専門学校の人たちとも接点がありそうですね」
「そうなのかなー? それはそれで大変そうだよね。私たちより年上の人が多そうだし……」
「樹里さん達もカラーズのランカーなんですから、自信をもって相手すればきっと大丈夫ですよ!」
「心愛ちゃんみたいにレッドランカーとかならいいけどギリギリのブルーランカーだと国内にも結構いるから、あんまり効果はなさそうだよ」
「えっ? 柊さんって高校生なのにレッドランカーなんですか? 凄いですね」
「先生、それも内緒ですよ? 今日の予定なんですけど、午後からはチームシルバーの人たちと千葉ダンジョンの最終層まで行ってダンジョンを攻略する予定です。午前中は博多ダンジョンで先生たちと私の三人で狩りをしようと思います。狩りは野中先生と橋本先生の二人だけで頑張ってくださいね。私は危険が無いように付き添ってますから」
「お、おお。わかった頑張ってみるな。昨日上がったステータスがどの程度のものなのか気になっていたんだ」
「希と日向ちゃんは午前中はゆっくりしていてね」
「はい、ありがとうございます。お買い物行ってきますー」
杏さんにTBの世話をお願いすると早速出かける事にした。
博多ダンジョンに到着すると先生たちが行った事のある五層まではリフトで移動する。
成長を視覚的にわかりやすく感じてもらえるようにSAISを一台持ってきていたので早速使い方を教えると、お互いを鑑定してはしゃいでいた。
先生たち中々いい感じだよね、ゴールインも近いかも? って思ったよ。
「柊、このポイントってなんなんだ?」
「それは、レベルアップした時にステータスに振り分けられない余剰ポイントなんですけど、そのタブレットを使うと全部ステータスに振り分けることが出来るんです。折角ですから振り分けてみてくださいね。おすすめは運高めですよ」
「ねえ、柊さん。これって実は凄い機械だったりするのよね?」
「そうですね、一台二千万ドルしますから壊さないで下さいね?」
「えっ……」
その言葉を聞いた瞬間に橋本先生が慌てて、タブレットを落としそうになった。
野中先生が成長したステータスで橋本先生の足元に滑り込み、体を張ってタブレットを守る。
「先生、その動きが咄嗟に出来るならちゃんとステータスは使いこなせてますね。安心です」
「柊さん、怖いですからこれはお返ししておきますね」
SAISをアイテムボックスに収納して、午前中で博多ダンジョンの十層まで自力で頑張ってもらった。
八層のアンデット地帯だけは私の魔法で切り抜けたけどね。
食堂に戻ると、希たちも戻ってきていた。
お昼ご飯は希が買ってきたハンバーガーで済ませて千葉へ向かう。
会議室で君川さん達と合流して今日の予定を確認した。
「本日は二十一層からスタートして最終、二十四層の攻略を行う予定だ。特務隊としてまだ現時点で単独のダンジョン攻略を成し遂げていないので、最終層の碑文の解読だけを心愛ちゃんにお願いして、一度特務隊第一班だけでの攻略に挑戦してみたいのだがいいだろうか?」
「はい、私たちは構いませんよ。エスケープの在庫は大丈夫ですね? 無理をしないで困難だと感じたら必ず早めに脱出をしてください」
「ああ、ありがとう。では早速出発しよう」
みんなで二十一層に移動すると、とりあえず二十二層までは特務隊の人だけで進んでもらって、私たちは後ろからついていくことにした。
主に斥候の役割を果たしていたのは、幸田三尉と佐藤三尉の二人だ。
二人とも下関の攻略の時に私と一緒にドラゴンゾンビに挑んだ人で、私のファンクラブを作ったとか言ってた人だ。
私は当然通路の鑑定をしているから、どこにトラップがあるか見えているけど、幸田三尉たちは勿論トラップの位置とかわからない。
(斥候職のJOBとかが一般的に広まらないと大変そうだな)
とか考えながら、時々湧いてくる魔物を撃退していると、長い坂道の様な一本道に差し掛かって半分くらい進んだところで、私には見えていたトラップを香田三尉が不用意に踏んでしまった。
(あっ)
と思った時には『ゴーッ』という音とともに大量のヌルヌルした液体が坂の上から流れてきた。
「みんな私につかまって」
と叫んだけど、周りにいた先生たちと希、日向ちゃん以外は間に合わなかった。
私は重力魔法でとりあえず浮かび上がり避けたけど、他の人たちはヌルヌルの液体と共に坂道の一番下まで滑り落ちていった。
みんな怪我はなさそうだけど……絵面が酷い。
そのまま、重力魔法でバランスを取りながら坂の下まで戻ると、浄化を使えるメンバーが頑張ってなんとかヌルヌルを取り除いた。
香田三尉が「すいません」と謝っていた。
「えーと……確認ですけど、他のダンジョンもトラップは結構ありますよね? 今までどうやって突破してたんですか?」
「トラップは、ほとんどの場合見た目に若干の違和感があるから、そこを避けながら突破が基本でした。さっきのトラップみたいにはっきりした違和感がない時はわかんないですね」
「それって結構大変ですよね」
「だから、五年かけてもこの階層までしか攻略が進んでないんですよ。この辺りの階層だと一層攻略するのに二月以上かかったりするのは普通でしたからね。それにこのダンジョンはアタックの度にトラップの位置が変わるのもあるから、攻略が後回しになっていたんです」
「そうなんですね……」
三十層より上の階層では即死級の罠は宝箱以外では滅多に現れる事が無いから、まだなんとかなったんだろうけど、Cクラス以上のダンジョンだともっと酷いトラップもありそうだ。
スキルかJOBの充実が求められるよね。
このままじゃ時間がかかりそうなので、結局昨日までと同様に私が鑑定して、希が罠解除を行って進むことにした。
二時間ほどで最終層まで到着するといよいよボス部屋だ。
早速謎文字の鑑定をする。
『己の身体能力を駆使して辿り着いて見せよ。試練を乗り越えし者、新たな力を身に付ける』
「どうやら……アトラクションダンジョンの真骨頂みたいな感じですね。予定通りチームシルバーだけで入ってみますか?」
「ああ、一度挑戦させてほしい。もし駄目だった時はその結果で作戦を立てたいと思う」
「わかりました」
エスケープのスキルオーブがある以上はそこまで心配しなくても大丈夫だと思って送り出すことにした。
美咲さんは突入組で、樹里さんと美穂さんは留守番組になった。
今回はあくまでも『チームシルバー』で成功させたいみたいだね。
「突入!」
君川三佐の号令で突入していった。
「どう思う心愛ちゃん?」
「どうでしょうね。攻略してほしいとは思うけど、初見では難しいんじゃないでしょうか」
「だよねー」
樹里さん達も攻略できるとは思って無いようだった。
もっと上司たちを信頼した方がいいと思うよ?
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