第213話 サオリンのダンジョンライブ④
日向ちゃんのパーフェクトヒールで怪我も治ったサオリンが視聴者に向かって呼びかけた。
『みんな心配させちゃったかな? ごめんなさい』
その一言で一気にチャットログが流れ始める。
kuroushi:サオリン無事でよかったよおおお
Junkin66:てかなんて豪華コラボ? 咲姐さん来てるし
tphana:マテ……色々おかしいz
natsuki-s:5,000円:パイセンちゃん希ちゃんありがとー
Lurdis:10,000円:あのでかい黒猫は何?
・
・
・
ponpontaa:20,000円:心愛ちゃん……普通に箒無くても空に浮いてた気がするのは気のせいか?
airi_01:3,000円:オーガキングって……ダンジョンボスなんでしょ? なぜ完封で勝てるんだ……
kuroganejin:サオリンのジャーマネって戦う姿始めて見たキガス……しかも股間突き刺すとかコワッ
masterribon:事故が起きてから救援勢が来るまでの時間……まさか……仕込みか?
kuma83:44,444円:ヒナちゃん……回復魔法持ちなんだ……SUGEEEE
@4649714:みんなありがとおおおおおサオリン無事で本当に良かったあああ
・
・
・
・
ログがもう凄い事になっていた。
この時点で、同接人数を確認すると、なんと三百万人越え、ダンチューブのライブ配信では勿論記録的な数字になっていた。
心愛たちも、オーガキングが消えたのを確認するとサオリンの元に駆け付けた。
「サオリン大丈夫? 身体はちゃんと動くの?」
「心愛、ありがとー。多分骨が何本か折れてたのは解ってたんだけど……さっき日向ちゃんが、魔法かけてくれて治っちゃったみたい」
「サオリン先輩……内緒って言ったのにー」
その言葉に希が突っ込む。
「日向ちゃん……ライブ配信してるし……内緒は絶対無理だと思うよ」
「だってぇ」
サオリンが咲たちにお礼を言う。
「咲さん、麗奈さん、マネージャー本当にありがとう。こんな危険なところに駆けつけてくれて」
「沙織、あなたのピンチには駆けつけて当然だよ。私たちの大事な妹だからね」
「そうだよ、私たちは来て当然だから、お礼は心愛ちゃんと希ちゃんと日向ちゃんにだけ言ったらいい」
「心愛、希、日向、本当にありがとうね」
「まぁそれはいいから、折角宝箱出てるし、さっさと開けて視聴者さんを楽しませなきゃ」
「心愛、宝箱を私が開ける権利なんてこれっぽちも無いよ。心愛が開けて」
「私たちは、通りすがりに、美味しそうな敵がいたから勝手に横殴りして美味しい経験値をごっそり貰っただけだし、宝箱はサオリンのでいいよ。希もそう思うよね?」
「ですですー、経験値ごちでーーーす」
「えー、そんなのマジで困るし」
「サオリン、早く開けないと消えちゃうかもだよ? 視聴者さんが残念がるよ?」
「咲さん。どうしたらいいんですか?」
「ここはまず開けてしまいなさい。お礼はここを出てからまた考えたらいいし」
「はい……わかりました」
やっとサオリンが納得して金色に輝く宝箱の前に立つ。
心愛が心眼で確認して罠が無い事を確かめた。
「罠は無いから思い切って開けてねー」
「なんで解るの? でも了解です」
思い切って宝箱を開けると中から出てきたのは鎖だった。
「鎖って……」
心愛が早速心眼で見る。
~~~~
【マジカルチェーン】
糸状にしたミスリルを編み込んだ鎖縄
【JOB
強く意識する事で長さが一メートルから五十メートルに可変し分割も可能になる。
魔力を流す事で形状固定も可能。
~~~~
鑑定結果をサオリンに伝えた。
「サオリン、どうやらサオリンの希望通りの武器が出ちゃったみたいだね。良かったねー」
「マジ? これって私が貰っていいの?」
「勿論だよ」
「なんか……めっちゃ嬉しいけど、流石に気が引けちゃうよおお。どうしようマネージャー」
「ここは、素直に貰っておきなさい。お礼は咲や私からも心愛ちゃんに別の形でするから」
「咲さん、それなら私たちにサイン下さいー、みんな欲しがってたんで。サイン色紙にはちゃんとそれぞれ名前入れてもらえたら嬉しいです」
「そんなの百枚でも二百枚でも好きなだけ書くよ。全身にお経のように書き込んであげるのでもいいわよ?」
「どこの耳なし芳一ですか……」
「とりあえず戻るよ。視聴者の皆さんに挨拶しなさいサオリン」
「はい」
『みなさー-ん今日は私たちのライブを見に来てくれて本当にありがとうございましたー。予定外の事故も起きちゃって心配かけてごめんなさい。次は、雑談ライブの予定ですー。また遊びに来てくださいね。それと心愛ちゃん、希ちゃん、日向ちゃん。咲さん、麗奈さん、マネージャー。本当に今日はありがとうございましたー。では皆さんまたねーバイサオー』
その挨拶に十万回以上のバイサオーの返事を貰いながらサオリンのダンジョンライブは終了した。
ダンジョンから出ると、咲さんに改めてお礼を言われて、今日はこの後冴羽社長や熊谷先生と話があるから、明日の晩御飯をみんなで一緒に食べる約束をさせられて解散になった。
話し合いには専務の百合さんも参加するために、流石に今日の事故の事で一人にするのは不安だからとサオリンも一緒に博多へ行く事にした。
「心愛ちゃん、希ちゃん、お疲れ様。日向ちゃんに沙織ちゃんも大丈夫?」
冴羽社長と杏さんが待っていてくれて、美味しいコーヒーを淹れてくれた。
「社長、杏さんただいま。間に合ってよかったです」
「でも、あれだね。心愛ちゃんたちがオーガキングが相手でも無双できる事を全国って言うか、全世界に向けてばらしちゃった感じだね」
「ですよね……でも、大っぴらにした方が逆に気を使わないでいいのかも? 変な事をして来る人もいなくなるだろうし」
「それはあるかもね」
その日の夜のうちに、このライブ配信の切り抜き動画は凄い勢いで拡散し、世界中で一億再生を超える再生数を稼ぎ出す事になった。
それに伴い、この動画に出演していたメンバーのそれぞれのチャンネルでも、大幅なフォロワーの増加を果たしていた。
二百万のフォロワーを持っていたサオリンは三百万人に。
五百万のフォロワーを持っていた咲さんは六百万人に。
そして三十万人のフォロワーだった心愛たちのチャンネルは一気に百五十万人のフォロワーに増加していた。
この日のライブで飛び交ったスパチャは、脅威の三千万円にも届いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます