第154話 札幌ダンジョン
ロジャーとグレッグが戻って来て、札幌ダンジョンに付いてくるっていう話になったんだけど、美咲さんからダメ出しが入った。
「ロジャー、今、国内の未攻略ダンジョンに他国のゴールドランカーを入れるなんて許可できないわよ?」
「えっ? まじか美咲。そこはなんとかしてくれよ」
「それこそ、さっき話に出てたけど、ロマノフスキーとかの他のゴールドランカーを断る口実が必要だから、そこは譲れないわね」
「しょうがねえな。千葉ダンジョンはJOBが取れるんだっけ? そこならOKなのか?」
「葛城将補に聞かなきゃわからないけど、おそらく大丈夫じゃないかな?」
「しょうがないからひとまず千葉ダンジョンでJOB獲得してくるぜ。心愛、ちょっと俺たちを金沢に連れて行ってくれないか?」
「えー、あっ、金沢ならここから転移ゲート繋げてあるからそれで行っておいでよ。転移先がマンションの部屋の中だから鍵はちゃんとかけてよ? そういえば、グレッグが随分大人しいけどどうかしたの?」
「あ、ああ。ちょっと考え事をしていた、大丈夫だ体調とかは問題ない」
随分静かなグレッグがちょっと心配だったけど、アニメチックな転移マットに案内した。
「これが噂の転移ゲートなのかよ。すげぇチープなデザインだな」
「見た目は気にしないで」
「心愛ちゃん、君川三佐がこちらに合流したいそうだから、ついでに迎えに行ってきていいかな?」
「そうなんですね。じゃぁ合鍵を渡しておきます」
ロジャーと美咲さんにそれぞれ合鍵を渡すと三人は金沢へ転移していった。
「樹里さんと美穂さんはどうするんですか?」
「勿論心愛ちゃんについていくよ。二尉が戻ってくる前に出発しましょう」
「大丈夫なんですか?」
「きっと大丈夫!」
札幌までの距離は二千キロメートル以上あるから二回は中継しなきゃいけないのかぁ。
そう言えばスキル強化を転移魔法に使えば一度で行けるようになったりしないのかな? 次のお料理作った時に挑戦してみよう。
横浜と仙台の拠点を経由して札幌ダンジョン協会そばのマンションへ到着した。
ここも高層マンションの最上階で、ベランダからは時計台がよく見える。
札幌ダンジョンは時計台の向かい側に現れている。
五人で早速ダンジョン協会札幌支部に向かって、攻略済みの二十層までの地図を購入した。
札幌ダンジョンは、結構探索者が多い印象だった。
美穂さんが情報をくれた。
「札幌ダンジョンはね、十層から十五層までの間が自衛隊の教育課程で利用されてるの。私たちも教育隊の時はここに半年ほど駐留してたんだよ」
「へー、そうなんですね。それじゃぁ十五層までの地図はいらなかったかな」
「あの頃は、まだ満足に戦えない状態だったし、怪我しないようにするのが精一杯で中がどうだったとか、ほとんど覚えてないよゴメンね」
「今なら、鼻歌まじりで大丈夫そうですけどね」
五人で十層までを順調に下りていくと十層に協会のチェックの人と自衛隊の人が並んで立っていた。
「この先は協会ランクB以上の方のみが入場できますので協会ランクカードを確認させていただきます」
協会の人にそう言われたから、私は協会のランクカードを出した。
希と日向ちゃんもSランクのパーティカードを持っているので問題は無いよ。
「えっSランクなんですか? 若いのに凄いんですね。確認OKです」
続いて自衛隊の人にも声を掛けられる。
「本日は十二層で訓練が行われていますので、そこを通る時は出来るだけ戦闘を避けて通り抜けをお願いします。自衛隊は弾丸を使う事が多いので、十分注意をしてください」
そう言った後で私の後ろに立っていた美穂さんと樹里さんに気付いた。
「お、進藤と相沢じゃないか? どうしたんだ、まさか再訓練じゃないだろ?」
「ご無沙汰しています岡田一曹。今はこの三人の護衛任務を兼ねて、同伴しています」
「自衛隊からの護衛が付くってその子たちはどんな存在なんだい?」
そう言った後で、樹里さんと美穂さんの階級章に気付いた岡田一曹と呼ばれた人が急に気をつけをした。
「失礼いたしました。准尉。出世なさったんですね」
「そんな、やめて下さい教官。恥ずかしいですから」
「いえ、そういうわけにはいきません。私は下士官ですから」
そう言いつつ、敬礼の姿勢で私たちが通るのを見送った。
「樹里さん……岡田さんってどんな人なんですか?」
「ここの教育部隊の教官だよ。めっちゃ厳しくて私も美穂も良く泣かされてたわ。それがあるから今の私たちがあるのも確かなんだけどね」
「でも、やっぱり自衛隊って階級で扱いが全く変わるんですね」
「そうだね。さすがにさっきのはやりすぎだと思うけど……」
その日は十一層に降りたところでダンジョンリフトを使用して、一層に戻り帰宅した。
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