第137話 魔道具商売始めましたー

『澤田、転移の魔道具の用意が出来たが、JDAと政府の意見の調整は出来たのか?』

『ああ、その件についてはダンジョン省の島大臣とも話をさせてもらって、冴羽の提案を受け入れる事になった。設置には島大臣も立ち会いたいと希望をもらっているがその辺りは調整をつけてもらいたい』


『大臣はこちらのスケジュールに合わせてもらえるのか? 大臣側でスケジュールの希望とかあれば先に聞いておきたいんだが?』

『出来るだけ早い設置が望ましいだろうとの意見で、明日か明後日であればスケジュールは取れるそうだ』


『そうか、それではアンリ氏に連絡を取って調整をしよう。また連絡を入れる』

『ちょっと待ってくれ、この後博多の協会に顔を出せないか? 今朝、話のあった鑑定や収納の魔道具の現物を見せてほしいんだ。納品価格に関しては実際に動作を確認した上で既存の鑑定ルーペの上位互換品と確認できれば、相応の値段で引き受ける。ただな……D-CANが直接外部への販売を行うのは控えてほしいんだ』


『まぁ、そう言ってくるだろうと思ってたから、安く買い叩かない限りは独占販売で構わない。その辺りは熊谷弁護士にも間に入ってもらった上で契約をしよう。アンリ氏に連絡を取った後で博多支部に向かう』

『了解だ』


 澤田との連絡を済ませ、アンリ氏に連絡を入れた。

 現時点で食堂ではアニメキャラのセンターラグによる金沢への転移が可能なために午後一時に食堂に来ることで調整を付けた。


(さてもう一仕事だな)


 心愛から預かっている鑑定スマホとタブレット、マジックバックパック、転移プレートがアイテムボックスにある事を確認してダンジョン協会博多支部へと向かう。


「どうだ? これがD-CANで発売予定の魔道具だが良い出来だろ」

「凄いな、故障時の対応はどうなる?」


「分解してコピーをしようとしたとかでなければ、現物との交換で対応する。故意による故障の場合は当然だが対応はしない」

「それなら問題ないな」


「ただし販売数だが、魔道具全体で一日十台までだ。種類は問わない。素材の問題で対応できない場合もあるが基本的には翌日納品可能と思っておいてくれ。澤田への直接納品以外では納品を行わないで問題ないな?」

「そうだな、物が物だけに一番怖いのは盗難だ。その対応でいいだろう。問題は高機能バージョンの鑑定スマホと時間停止無しの大容量マジックバッグだがこの二つの商品に関しては価格設定でまだ結論が出ていないんだ。価値としては五十億円と言われても納得するが、それが確実に作成できるとなれば価格的には少し安くしてほしい所だ」


「JDAも営利企業である事に間違いないから当然の言い分だろうな。だが、この商品は世界中が手に入れたいと思う商品で提供できるのは現状ではうちだけだ。当然の価値として最低価格が四千万ドルからだな。それが飲めない場合は、WDAが主催するオークションに定期的な出品をする事になるだろう。そうなればJDAが手に出来るはずだった中間マージンが消え去る事になるぞ?」

「強気な商売だな……だが他でどこにも作れない以上は受け入れるしかないだろう」


「現時点では転移ゲート関連は一般販売の予定は無い。これは政府との折衝でD-CAN側でも必要だと認めた場合のみに作成することになる。価格はワンセットが二千万ドルで設定させてもらう。当然今回の金沢と下関の協会を繋ぐゲートもこの価格だ」

「わかった、一応理事会の承認を受けてからの返答になるが、それで構わないか?」


「ああ、こちらは別に急ぐ理由は無いし、むしろ話をのめないと判断してくれた方がオークションで大儲けできそうだから、それで構わない」

「JDAも当然、二十パーセント程度の利益を上乗せして各国のダンジョン協会に売りつけるだろうし、断る事はありえないだろうがな」


「転移ゲートの承認だけは明日までに頼んでおくぞ。明日設置を行うからな」

「了解だ」


◆◇◆◇


 転移プレートの作成も無事にできたので部屋にこもってTBの寝顔を眺めていた。


「本当にかわいいなぁ。元気に育ってね」


 そう語りかけながら頭を撫でた。

 あ、そういえば【テレパシー】でパスを繋げたらこの子ともお話が出来るかもしれないんだ。

 それと、もう一つは契約魔法! 


~~~~


【アニマルテイム】

 対象の動物に認められた場合、契約を結べる。

 契約を結んだ対象には命令を出来、自分の能力を貸与できる。


~~~~


 これがあったら、テイミングしたのと同じ状態になるんだよね。

 でも、こんなかわいい子猫ちゃんを魔物と闘わせようなんて思うのはダメだよね?


 そんな事を考えているとTBが目を覚ました。

 おなか減ったのかな?


 そう思って子猫用のミルクを人肌程度に温めて哺乳瓶で飲ませてあげた。


「ミャァミャァ」と言いながら、結構な勢いで飲んでくれる。

 満足したようなので、背中を軽くさすってあげたらゲップをしてくれた。


(先生の言う通りにやったら上手く出来たー)


 今ならパスを繋げる事も出来るかな? と思いTBとパスを繋げるイメージをした。

 あ、なんだか繋がった感じがする。


『TB、おなか一杯になったかな?』と聞いてみた。


『ミャァ?』


 声を出してないけど、そう返事をしたのが解った。

 まあ生後一週間じゃ、会話が成り立つわけもないか。

 もしかしたら、テイムしたら変わるかもしれないけどね。


 でも、そんなのはせめてご飯を普通に食べれるようになってからだよね。

 今は元気に育ってくれることだけを願おう。

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