第136話 転移ゲート
「杏さん、ただいまぁ」
「お帰りなさい心愛ちゃん。あれ? その子猫どうしたの? 可愛いわねぇ」
「ホームセンターの駐車場に捨てられてて、あまりにも可愛いから連れて帰っちゃいました」
「そうなの……優しいわね。でも一度ちゃんと病院で見てもらわないとダメだよ」
「はい、早速今から行ってきます」
近所の動物病院を検索して今から診てもらえるかを確認をすると、再び美穂さんに運転してもらって向かった。
「心愛ちゃん、用事は大丈夫だったの?」
「はい、魔道具の作成ですから夜でも構わないです」
「魔道具って、そんなに簡単に作れるものなの?」
「うーん、専用のスキルとか自分の使える能力じゃないと出来ないとか色々制約はあるので、簡単では無いと思います」
「そうだよねぇ。私もそんな能力が欲しいよ」
「頑張ればいつか手に入るかもしれませんからファイトです」
「ねぇ心愛ちゃんはその能力を、他の人が使えるようにもできるって事だよね」
「うーん、出来ない事は無いですけど今のところはそんな事、知られちゃうとそれこそ大変な事になりそうだから、当面は他の人に能力を与えるのは必要最低限にとどめようと思ってます」
「そっか、でも必要最低限って言いながら私も樹里も結構な能力もらっちゃってるよね」
「樹里さんと美穂さんは本当に信頼してますから」
「ありがとう。もっと心愛ちゃんにいっぱーい信頼してもらえるように頑張るね!」
「あ、そういえば前に葛城一佐が言われてたじゃないですか、樹里さんと美穂さんに探索者養成学校の実技教員になって欲しいって話。あれって受けるんですか?」
「それは心愛ちゃん次第かな? 心愛ちゃんが探索者養成学校に通うなら無条件で受けるつもりだよ」
「そうなんですね、そうなったら先生! って呼ばないとダメですね」
「先生って柄じゃないけどね」
そんな話をしながら動物病院に到着して子猫の診断をしてもらった。
病院の受付で子猫の名前を聞かれたのでどうしよう? って思ったけど「『TB』でお願いします」って言っちゃった。
美穂さんに「なんでTB?」って聞かれたけど「なんとなくこの名前が浮かんじゃったんで」と答えたよ。
健康状態は問題なさそうだったけど、寄生虫の検査とかはしてもらった。
予想通りって言うか、生後一週間から十日しかたってないって言う診断だった。
猫を初めて飼うと言ったら哺乳瓶の使い方なんかも教えてくれて、凄く親切な先生だったよ。
「ノミがいた以外はこれといって悪いところはなさそうだけど、母猫の母乳をしっかり飲んでないと抵抗力の弱い子になる事が多いから、具合が悪くなったりしたら早目に連絡してください。生後二か月頃になったらワクチンの接種に連れてきてくださいね」
と言われたので「はい、わかりました」と返事をして帰路についた。
でも……こんなかわいい子を捨てるとかあり得ないよね。
「美穂さん付き合わせちゃってゴメンナサイ」
「心愛ちゃんについて行くのが今のお仕事だから全然かまわないよ」
家につくとTBはすぐにスヤスヤと眠りについた。
(かわいいなぁ、この子のご飯代稼がないとね!)
そう思いながら、転移ゲートを作る事にした。
イメージは魔方陣の描かれた床を転移する感じで、マットの上に立てば発動する魔道具だ。
魔方陣なんて書けないけどね!
~~~~
【転移マット】
対となる二枚のマットの間を転移する
使用ごとに使用者のMP消費
百キロメートル未満 10MP
千キロメートル未満 50MP
千キロメートル以上 100MP
発動にはランキングカードの所持が必要
成功確率5%
必要MP2000
ベースとなるマットの素材で成功率と必要MPは変化する
~~~~
(あー、二十分の一じゃ無理かもしれないなぁ先に確率調べてから買ってきたらよかったな……)
でも買ってきた以上は使わなきゃしょうがないと思って、チャレンジしたけど五回の挑戦で一回成功した。
ちょっとラッキーだったようだね。
ペルシャ絨毯みたいなのを素材に選んだら成功率が高くなるのかな?
イヤイヤ……それは違うかな?
魔法融和性が大事そうだからミスリルのプレートとかがいいかも。
完成品を部屋の端と端に広げて上に乗ってみると、大したタイムラグを感じる事も無く反対側のマットの上に現れることが出来た。
使用者の消費MPもリーズナブルだし全然使えるじゃん。
でもこれを敷く場所は大事かも、ちゃんと転移専用の部屋でも用意しないとダメだよね?
使用するのにレベル制限は無いみたいだねよかった。
これがスキルオーブと魔道具の違いなのかな?
とりあえずは成功したので早速、冴羽社長に連絡したよ。
『社長、朝言ってた転移ゲートなんですけど成功しました』
『おー、よかったー、成功する前提で話進めてたから出来なかったらどうしようって思ってたんだ。早速、そっちに向かうね』
『はい、待ってます』
それから、三十分ほどで冴羽社長が到着した。
「心愛ちゃん、試験中なのに頼んじゃってごめんね」
「大丈夫ですよ、ステータスのおかげで無事に乗り切れそうですから」
「で、完成したのはどれ?」
「これです!」
「こ、これは……」
そこにあったのはアニメの女の子チックなキャラクターが描かれたセンターラグだった。
「これで転移が出来るのかい?」
「はい」
「もうちょっと違うデザインのマットは無かったの?」
「これがお買い得だったので」
「そっか……とりあえず試してみよう」
冴羽社長が二枚のマットの間を行ったり来たりしながら確認した。
「凄いね。距離の制限はどうだったの?」と聞かれたので、表示されてた数字を書き出して渡した。
「なるほどね、でもこれだと俺じゃ金沢までは行けないな」
「MPが百もないんですか?」
「レベル6だからね」
「あー、ポイントの振り分けしてない分を知能に振り分けておきますね三往復は出来ますよ」
「ああ、助かる」
「ちょっと金沢の拠店マンションに片方を敷いてきます」
そう伝えて、転移で金沢に行きマットを敷くと、そのままマットに乗って部屋に戻ってきた。
「大丈夫みたいですね。ちゃんと金沢との間でも行き来出来ます」
「俺も行ってみるね」
そう言って冴羽社長も金沢との間を往復してきた。
「機能は全く問題ないけど……デザインは違うのにできないかな?」
「やっぱりダメですか? でも普通のマットだと成功確率が5パーセントしか無くて効率も悪いですから、ミスリルのプレートとかで作ったらきっと現実的な数字になりそうなんでそうしますね」
「ああ、それで頼むよ。この機能だと三十億円くらいの販売をしたいから、アニメキャラのマットは都合が悪いからね」
「三十億円ですか……それは、この見た目じゃ問題ありますよね」
「じゃぁこの試作品は西新の本社と、ここの食堂を繋ぐのに使いましょう」
「それは助かるな」
在庫で持っていたミスリルのインゴットを錬成すると無事にミスリル製で直径一メートルの円形のプレートの作成ができたので、それをベースに指定すると、MP消費500、成功率80パーセントになった。
「これなら、堂々と協会に売りつけれるね。早速、JDAと話して金沢へのダンジョン設置と、下関の協会支部と金沢の協会支部の間を繋ぐ転移ゲートの設置を売り込んでくるよ」
「よかった子猫の餌代稼げそうです」
「サファリパーク丸ごとの餌代でも大丈夫だと思うよ……」
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