第56話 ダチョウ南蛮蕎麦とシークレット
澤田課長と別れて自宅に帰還すると早速料理に取り掛かかることにして日向ちゃんに連絡を入れた。
鑑定をオーブにして渡しちゃった以上、私が見られる可能性もあるし【シークレット】取っておかないと。
十分ほどで日向ちゃんが到着すると早速料理を始めた。
「先輩、今日の探索の動画データ、希から預かりましたけど希と二人で物理だけでミノタウロスを倒すとか超凄いですね」
「ある程度のステータスがあればそんなに難しくはないよ。私のお父さんなんか四年前の時点で毎日のようにミノタウロスのお肉をダンジョンから持って帰ってたからね。勿論ソロだったはずだよ」
「四年前だったら、それってトップクラスの強さじゃなかったんですか?」
「どうだろ? ランキングカードは見せてもらったことなかったし、私もまだ小学生だったから、あんまりよくわかってなかったし」
「優秀な遺伝子を引き継いでるんですね」
「少なくともお料理に関しては結構引き継いでる部分はあるかな?」
今日は『ワイルドオーストリッチ』を使ったお料理を作るよ。
ダチョウ南蛮蕎麦を作っちゃおう。
まずお肉は柵取りして、お刺身用のマグロみたいな形に整える。
厚さは三ミリメートル幅くらいで丁寧に切り出して、薄塩を当てて十五分程寝かして置く。
染み出して来た余分な水分はキッチンペーパーで吸い取る。
一枚づつ片栗粉をまぶして、沸騰したお湯でさっと湯掻いて、氷水に取る。
濃口醤油とお酒と味醂を同量で合わせたたれに生姜と輪切り唐辛子を少量入れて、先程のダチョウ肉と焼き目を付けた白ネギを煮込む。
「とっても食欲をそそる匂いだよ」
この状態のお肉の煮付けは『治部煮』っていうお料理だよ。
お蕎麦は、乾麺をたっぷりのお湯に塩を少量入れてから茹でて、ざるに打ち上げる。
一煮立ちした時に、びっくり水と言うお湯の量の一割程度の水を差して上げる事で、茹であがった時の表面の滑らかさが違うんだよ。
これも氷水で一度キュッと引き締めて置く。
今日は温かい蕎麦を作るから、お出しは『デリシャスポーション』十二杯、淡口醤油一杯、味醂〇.三杯を一煮立ちさせる。
そこに、茹であがったお蕎麦を加えて、もう一煮立ちで出来上がり。
丼に入れると、治部煮を沢山並べて、上から刻み葱をたっぷりとかける。
「先輩! いつもながら超美味しそうですね」
「でしょー」
実食!
「すごーい、ダンジョン産のダチョウのお肉はメチャ柔らかいんですね」
「だよねー、私もこんなに柔らかいって思わなかったよ。極上のヒレ肉って感じだよね」
「ごちそうさまでした。帰ってから早速十層攻略の動画アップしますね! あ、先輩、お料理動画の反応も滅茶苦茶いいですよ一気に登録者数も五千人超えました」
「そうなんだ、それは嬉しいね。日向ちゃんの編集技術のお陰も大きいから収益化したらバイト代は期待してね!」
「頑張ります!」
日向ちゃんが帰ると早速スキルの獲得をする。
『セレクトスキルの選択権を取得しました』
【土魔法】
【雷魔法】
【シークレット】
【身体強化】
あ、これも欲しいなぁ。
でも、今日は先にシークレットって決めてたからね。
お蕎麦は希と杏さんのも必要だね、冷めないうちにアイテムボックスに仕舞っておこう。
明日はどうなるのかな?
◇◆◇◆
「せんぱーい、お早うございますぅ」
「希ちゃんおはよう。心愛ちゃんは今シャワー浴びてるよ」
「ぇぇ今日はパジャマ姿見れないんだ、折角早起きしたのにぃ」
「杏さんの胸に埋もれさせて貰ってもいいですか?」
「別にいいけど、それよりもバストアップの体操をする方が良いんじゃないかな? 毎朝ここで一緒にやれば、効果は出ると思うよ?」
「先輩も一緒にやらないかなぁ」
「心愛ちゃんは、ああ見えてCカップはありそうだから、大丈夫じゃないかな?」
「杏さんのカップサイズって何ですか?」
「私はGだよアンダー65でトップが90だからね」
「裏山ですぅ、もぎたいですぅ」
「大きいと肩凝るし、良い事ばかりでも無いよ? 満員電車とか大変だし」
「それって触られたりするんですか?」
「そうだね、結構多いよ」
「一度死ぬまでに言って見たい言葉のトップ3に入ってますよ、私的に」
「希、なんで朝から全開で、そんな話してんのよ」
「先輩ー匂い嗅がせてください、それで落ち着くから」
「却下」
「酷いですぅ」
「杏さんと希にちょっと食べて欲しいお料理があるから、カウンターの席に座って」
そう伝えて、ダチョウ南蛮蕎麦を二人前用意した。
「わーメチャ美味しそうですぅ」
「見た目もボリューム感あって、素敵ね」
「お味も自信作ですよー」
「あ、シークレットってなんだろう?」
「それですね、ステータスの隠蔽とか出来るので覚えておいた方が良いと思って、鑑定されても能力がバレない事は大事だと思うんで」
「心愛ちゃんありがとう、助かるわ。課長に見られたらどうしようと思ってたから」
「そうでしょ、でもレベル二十が必要だから、杏さんも少し放課後頑張って貰わなきゃいけないです」
「判ったわ、じゃぁそれまでに会社関係や下関の家の件をやっておくわね。あ、昨日の夜、私の出張中のアイテムの納品やっておいたわよ。総額で八百万円弱だったけど、ジャベリンはオークションに掛けるから含まれてないよ」
「結構凄かったですね。取り敢えずは私の口座にお願いします。杏さんに活動費用でもう百万円ほど渡しておきますね、希の分は三分の一で二百七十万円渡すわね、あ、希はマジックバッグ持ってないか、現金だと危険だから口座に入金しておくね」
「せんぴゃい、二百七十みゃんえんってにゃんでしゅか」
「ん? 希の取り分だよ?」
「イヤイヤイヤイヤイヤおかしいでしょ先輩。そんな金額女子高生に持たせるのって、私の身体目当てなら先輩なら無料でいいんだから、それに先輩が色々能力とかくれて無かったら絶対無理な話なんですから、そんなの受け取れないです」
「困ったなぁじゃぁ私が預かっておくけど、必要な時に言ってね」
「はい、基本的にこうしましょう、先輩、私は先輩の会社の従業員で、毎月決まったお給料を貰うのってどうでしょう?」
「希がそれでいいなら構わないけど、杏さんどう思いますか?」
「そうね、冷静に考えて希ちゃんの言ってる事の方が正論だと思うわ。すべては心愛ちゃんのお料理が前提条件であるし、そうじゃなければ、こんな常識外れのドロップは絶対にあり得ないですし」
「じゃぁ希はお給料ね、額は私が決めるけど、これは断らせないよ?」
「はい、家計が困らない程度であれば先輩と一緒に居れるだけで構いませんから」
「じゃぁ毎月五十万円とボーナスは六月と十二月に出すね」
「ひゃいしょれでも五十万円もあるんですか?」
「お母さん楽させてあげてね」
「先輩ー、一生付いていきますぅ」
「だから、私は普通に結婚して幸せな家庭を築くんだから、一生とか無理」
「ぶれないですね」
だが、この日は、まだまだ大きな事件が待ち受けている事を、この時点で三人は気づいていなかった。
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