第223話 王さんと孫さん

 社長たちの食事も終わり、私は一度部屋へ戻った。

 なんで? って、勿論スキル獲得のためだよ。

 流石に、大勢の人の居る前じゃスキル獲得なんてできないしね。


 今回も目の前に現れているスキルは四つともスキル強化だけど、なんのスキルを強化するべきかな?


 少し考えたけど、これから先もっと強い敵が現れてくるのも間違いないし、レベルの上昇も必要だよね。

 そう考えると【超成長】を強化するのが正解かもね。


 よし、超成長を強化してみよう。

 今までの超成長はこんな感じだったけどどう変わるのかな?

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【超成長】

 取得経験値が増加する。


 LV1~20 二倍

 LV21~40 三倍

 LV41~60 四倍

 LV61~80 五倍 適用中

 LV81~100 六倍

 LV101~120 七倍

 LV121~140 八倍

 LV141~160 九倍

 LV161~   十倍

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【超成長・弐】

 現在のレベル×10%の経験値ボーナスが発生する。

 

 自分及びパーティメンバーに有効。

 パーティメンバーの経験値ボーナスの10パーセントが自分に与えられる。

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 これは……直接的には今のレベル帯じゃ、そんなに変わらないけど、パーティメンバーが多かったら、かなり効果が上がるね。


 そうなると……千葉ダンジョンで出ていたJOBを獲得するのもありかも……

 私には、あの時五種類のJOBが出ていて、先生たちが獲得した【教師】のJOBも出ていたんだよね。


 これがあれば、最終的には五十人のパーティが組めたから、クリスマスホーリーの攻略で使ったりしたら凄い事になりそうな気がするよ。

 あれ? もしかしてJOBにもスキル強化使えちゃったりするのかな?

 そうだとしたら、かなり凄い事になりそう……


 次のお料理で試してみようかな。


 超成長にスキル強化を使って食堂に戻った。

 咲さんとサオリンがもう帰るという事なので、サオリンは金沢への転移ゲートを使って、咲さんは冴羽社長と一緒に事務所から名古屋へ戻るそうだ。


 この後で、咲さんとDライバー社の安定株主の銀行の人と会う約束を取り付けていたらしいよ。

 遅い時間なのにみんな働き者だよね……


「心愛ちゃんはなにしてたの?」

「ちょっと、思いついた事があったので考えてました。王さんと孫さんはスキルの取得ですよね」


「そうそう、なんか凄いスキルがもらえるんだって?」

「でも、一応、目立たないですけどタトゥだから嫌だったら言ってくださいね」


「そんなの全然、平気だよ。心愛ちゃんは私たちの裸は見た事無いよね」

「無いですよー」


 そう返事をすると孫さんが女性ばかりとは言え、食堂の中でいきなり上半身裸になった。

 その背中には神々しい入れ墨が大きく入れられていた……


「ほら、私たちはみんな王ちゃんに守護神を見てもらって、背中に描いて貰ってるから、今更、タトゥが増えても全然平気なんだよ」

「そうだったんですね……」


「王さんは、自分の背中には描けないですよね?」

「そうね、だからここに描いてるの」


 そう言うとスカートをまくり上げた。

 その太腿に艶やかな女性の入れ墨がほほ笑んでいた。


「おっぱいの周りに描こうかと思ったけど、それだと鏡を見ながらになっちゃうから左右反転しちゃうし、ここに描いたんだよ」

「えっと……聞いてもいいですか? 孫さんの背中の人は誰ですか?」


「私の背中に描かれているのは私のご先祖様で、私と同じ名前を持つ孫尚香だよ。三国志の劉備の奥さんだったんだよ」


 その返事を貰った時に、王さんが言った。


「私と孫ちゃん、グランデとペティーテに関しては、それぞれが孫尚香、王昭君、大喬、小喬の加護を持っていたんだよ。私以外の三人は、三国志でもなじみが深い名前だよね。で、私には少し特殊な能力があって、人の守護神が見えちゃうんだよね。で、守護の力をより強く発揮するためには、この刺青が重要なの。ほとんどの人はご先祖様の姿が見えるんだけど、時々、特別な加護を持った人もいるわけ。この中にも二人いるよ」


「えーっ誰なんですか?」

「それはね、心愛ちゃんと杏さんだね」


「私もなんだ……私には誰がついてくれてるんですか?」

「心愛ちゃんにはアテナ様がついてくれているよ。きっと、この世界が闇に閉ざされる事があっても、心愛ちゃんなら闇を払ってくれる存在になるはずだよ」


「そんな大それた事、私には到底出来そうにないです」

「私は、そんな事は無いと思うよきっと世界は心愛ちゃんが守ってくれるんだと思う。杏さんも聞きたいでしょ?」


「はい」

「杏さんにはアフロディーテ様がついてくれてるよ。アテナ様の妹だね」


「ええー、どう考えても杏さんがお姉さんなんですけど?」

「理由はわからないけど、二人の守護神様の関係はお互いの手の届かない場所をカバーできるような関係だから、きっと意味があるんだと思うよ」


「あの、質問してもいいですか?」

「勿論いいよ」


「守護神様って、生まれた時から決まってるんですか?」

「必ずしもそうではないわ。送ってきた人生の中で、より力の強い存在に昇格する事もあるわよ」


「そうなんですね……」

「今の守護神様の加護をより強く現すには、私たちのように入れ墨を入れる方法も有効だと思っていいよ。一体入れとく?」


「そんな簡単には決められないですよ。学校に怒られそうだし」

「まぁその気になったらいつでも言ってね。スペシャルな入れ墨を入れてあげるわ」


 うーん……杏さんなんか今の話を聞いてから、ちょっと無言で考えてたみたいだけど、いきなり入れ墨入れたりしないよね……


「今日は、孫さんと王さんの魔法陣を描くために来てもらったんだから、そっちを済ませましょう」

「じゃぁお風呂場に案内してー」


「えっ? なんでお風呂なんですか」

「私たちは、描ける場所が少ないから、全身を見ながら入れた方がいいと思ってね。心愛ちゃんのうちのお風呂は超広いって前に言ってたじゃん。一緒にお風呂に入りながら入れて欲しいよ」


 なんだかよくわからないけど、結局みんなでお風呂に入って、そこでタトゥを入れる事になった。

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