第169話 東郷さんといえば……

 朝になって希と日向ちゃんを連れて、博多ダンジョンに向かうと東郷さんが待っていた。


「おはようございます。昨日は色々ご迷惑をおかけしました。今日は撮影の件よろしくお願いします」

「おはようございます、東郷さん。変な写真は撮らないで下さいね?」


「そこは大丈夫です。ダンジョンに潜る前にカフェで打ち合わせをさせていただいてよろしいでしょうか? 勿論、代金は経費で負担させていただきますので」


 了解をして、ダンジョン協会に併設してあるカフェに向かった。

 カフェに行くと美咲さんと君川さんがロジャーとグレッグと一緒にコーヒーを飲んでいた。


「ハーイ心愛、朝早くから珍しいな」

「あれ? ロジャーとグレッグって未攻略ダンジョンの立ち入りは禁止だったんじゃないの?」


「あー、それはマッケンジー長官に交渉してもらって、チームシルバーと一緒に潜る場合は許可が出たんだ」

「良かったね、今日の午後にちょっと話したいことがあるから、ダンジョンから戻ってきたら食堂の方に顔を出してもらえるかな? 出来れば美咲さんと君川さんもお願いしたいんですけど、無理だったら構いません」


 私の言葉に、なにかを察してくれた四人は了承をしてくれた。

 私がゴールドランカーのロジャーやグレッグ、それにチームシルバーのトップ2と仲良さそうに会話していたことで東郷さんの表情がちょっと変わった。


「あの……柊さん達は高校生ですよね? 世界のトップと言ってもいいロジャーたちとなんで知り合いなんですか? しかも相当親しそうですよね?」

「それは、まぁ色々です。それよりも、東郷さんってランキングはどれくらいなんですか? 一般探索者で二十三層に行けるとか普通に考えてほぼ国内の一般探索者ではトップクラスですよね?」


「柊さんや真田さん、木下さんのランキングを教えていただけるなら、私のランキングカードもお見せしますよ」

「えっと、ランキングは雑誌に載せたりはしないと約束するなら教えますけど?」


「ええ、勿論それはお約束します」


 そう言って、お互いのランキングカードを見せあった。


「東郷さん……グリーンランカーなんですね。順位で五万位台なんてマジで国内の一般探索者じゃトップクラスじゃないですか」

「イヤイヤイヤ、レッドランカーの高校生が存在する事の衝撃の方が大きすぎますって……希ちゃんだって、イエローランカーでしょ。俺はグリーンですけどダンジョン発生当時から五年間、時間がある限り潜り続けての順位ですからね。実質一年や二年でカラーズになれるとか信じられませんよ……」


「今日の撮影は希が飛竜で飛んでる所の撮影だけで問題ないんですよね?」

「はい、それで構いません。でも心愛ちゃんも、希ちゃん以上に凄い能力持ってるんでしょ? 少しだけ見せてもらえればと思います。日向ちゃんのメイドスタイルの狩りにも興味ありますし」


「うーん、今日はあまり時間が無いから、それはまた今度って事で!」

「わかりました。それでは時間も勿体ないので早速向かいましょうか」


 そう言って、ダンジョンリフトを使い二十三層に向かった。

 早速、桃ちゃんをモンスターカプセルから召還すると、まずカプセルの存在に興味を持たれた。


「そのカプセルは……一体どんな道具なんですか? ドロップ品? いや、協会のアイテムリストにも載ってないですよね?」

「その辺りは、まだ非公表でお願いします。ですが、これは魔道具ですね。値段をつけると一個が百万USドルを超えるのは確かですけど、それでも確実にテイムが出来るっていう商品じゃないので、売り出される予定もないです」


「そうなんですか……でも、そんなアイテムが手に入るって凄いですね」

「私たちはD-CANの所属ですから」


「えっ、あのスキルオーブの販売や鑑定タブレットの開発をしたD-CANですか」

「はい。希、桃ちゃんと一緒に飛んできて」


「はーい、桃ちゃんお願いね、終わったら今日も果物食べ放題だよー」

「クエッ!」


 そう返事をした桃ちゃんが、希を首元に乗せるとダンジョン内を自由に飛び回った。

 この階層は魔物は野菜関係の魔物ばかりで、動き回れる敵は少ないんだけど、その分実や種を飛ばしてくる敵も多いので、撮影中の東郷さんを日向ちゃんのミスリルシールドで防ぎ、私は天津で覚えた【カウンター】スキルではじき返して、お野菜たちを倒していった。

 東郷さんは、その様子に感心しながらも希の飛ぶ姿をシャッターに収め続けていた。


「心愛ちゃん、掲載号の付録にこの様子の動画のアクセスキーをつけて動画公開もさせてもらって構いませんか?」

「希がいいと言えば構いませんけど、私たちのダンチューブチャンネルのリンクも一緒に張らせてくださいね」


「それは必ずお約束します」

「東郷さんの狩るところも少し見せてもらっていいですか?」


「心愛ちゃんたちに比べると、地味ですけど少しやってみますね」


 そう言ってマジックバッグから取り出したのはアサルトライフルだった。


「私の相棒はこいつです。弾丸がダンジョン鋼コーティングでちょっと高額なので、一撃必殺での狩りが基本です」

「よく民間でM16アサルトライフルとか所持できますね?」


「あーカラーズになれば申請次第で銃火器の使用許可は下りますので、なんとか手に入れました。漫画の主人公の暗殺者に憧れてたのもあったので」

「そう言えば、東郷さんって名前の主人公の人が使ってたのと同じ武器ですね……」


 東郷さんがM16を構えてお野菜たちに狙いをつけると、本当に一撃で敵のコアを打ち抜いて倒していった。


「凄いじゃないですか、チームシルバーの人たちでもこんなに確実に仕留めていける人はいなかったですよ」

「私は臆病者ですから、確実に弱点が解っている敵しか戦わないですから、チームシルバーの人たちとは覚悟が全く違いますよ。でも、これで鍛えているお陰でシャッターチャンスも逃さないです」


 何気に凄い東郷さんを少しだけ見直したよ。

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