第145話 先生も大変なんだね

 結構すごい展開になってたことにちょっとびっくりしたけど、扱う品物の金額や希少性から、こういう展開がある事は十分予想できたよね。

 もっと気を付けるようにしよう。


 でも、日向ちゃんに関しては、あのお義父さんでも流石にこれで近寄ってくるような馬鹿な真似は出来ないだろうから、逆に安心かもね。


 今日は色々ありすぎたなぁ。

 

「そう言えば学校で言ってた探索者養成学校の編入試験は希望を出すでいいの? さっきのお母さんたちの話じゃないけど、今の学校だと友達が狙われたりする可能性もあるから、このままっていうわけにはいかないからね」


「はい! 先輩がいるところが私のいる場所ですから」

「もちろん私もです」


「わかった、それじゃ早速週明けに願書だすから、二人も書いておいてね」

「「わかりましたー」」


「私たちが落ちる事はまず無いと思うけど、いったいどれだけの人が願書だしてくるんだろうね?」

「うーん、どうなんでしょうね。全国から募集するんだから、結構いっぱいいそうですよね」


 定時制や通信制を合わすと高校生は日本で三百三十万人ほども存在するのかぁ。

 百人に一人が希望しても三万人以上だよね……


 学校の定員は大目に考えて一クラス四十人で十クラスとしても一学年四百人か、三学年で千二百人くらいが精いっぱいだよね? それでも競争倍率は二十五倍くらいになりそうだなぁ。

 でもどんな人たちが集まるのかな? 私たちの知らない実力を持った人たちが集まりそうだから、結構楽しみかも。


 今日も色々ありすぎたし、早めに寝よう。

 希も家に帰り、日向ちゃんも自分の部屋に戻った。

 TBを杏さんから受け取ると杏さんも自宅へ戻った。


 でも警察の警備局の人たちってまさか二十四時間体制でガードについてるのかな?

 青木さんも、班で行動してるって言ってたから、三交代か四交代で常時誰かついていると思って間違いなさそうだね。


 それよりも気になるのは、お母さんとお祖母ちゃんについている謎のガードだ。

 中国系の女性四人って言ってたよね。

 誰だろう? そう考えていると一つ思い当たる事があった。


 アンリさんが攻略班と諜報班を持ってるって言ってたよね。

 その人たちかもしれない。明日にでも聞いてみようかな?


 今日の千葉ダンジョンで手に入ったポーションや金属類を錬金してから、TBにミルクをあげて一緒に眠りについた。


 翌朝は学校は休みなので、朝は私が和食の朝食を用意して日向ちゃんと希の三人でご飯を食べていると野中先生から電話がかかってきた。


『柊か、休みの日の朝早くからすまないな』

『おはようございます。どうされたんですか?』


『俺と橋本先生なんだけどな、正式に転勤が決まったんだ。ちょっと早くなるけど入学願書の書類審査から協力してほしいらしくて六月の頭から転勤になる』

『そうだったんですね。私も週明けに願書は提出しますけど、もし受かればまたよろしくお願いしますね』


『柊たちは全く心配してないさ。それよりもネットの情報なんだが、応募総数が三十万人近くなるんじゃないかって予想が出てるのが心配だ……』

『マジですか? あ、すいません。本当ですか? 凄い数ですね私は精々百人に一人くらいかな? って思ってたんですけど』


『まー、ランキングカードも持ってないような希望者もいるだろうから、そんな子たちは、書類審査以前の問題で落とされるだろうけど、ランキングカード所持者だけでも二十万人くらいは居そうな雰囲気だな』

『凄いですねー。先生たちも大忙しじゃないですか。体調には気を付けてくださいね』


『ああ、ありがとう。今日、連絡を入れた本題なんだけどな、金沢はスタンピードのせいで、街中でも魔物がいる状態だろ?』

『確かにそうですね』


『先生たちのレベルで無事に生活していけるのかな? って橋本先生と話してたんだ』

『そうですね。二十九層までの魔物が溢れだしてしまっているので、レベルはもっと上げた方がいいのは間違いないですね』


『やっぱりそうだよな……柊、先生たちを少し鍛えてもらえないか?』

『いきなりですね。でも、私も先生たちが怪我したりしたら嫌ですからいいですよ』


『本当か? 今日とかはダンジョンに行ったりするのか?』

『はい、もう少ししたら出かけるところでした。先生たちも来ますか? ただ……少し特殊な事情で、私たちと一緒にダンジョンに潜ったのは秘密にしてもらいたいです』


『ああ、それは約束する。今から橋本先生と一緒に柊の家に向かうな』

『はい、お待ちしてます』


 電話を切ると希が聞いてきた。


「先輩、野中先生来るんですか?」

「うん。橋本先生と一緒に来るって」


「千葉に連れて行くんですよね?」

「そうだよ」


「大丈夫なんですか?」

「特務隊の人たちとは昼過ぎからの約束だから、午前中にちょっとスパルタで十層まで潜れるようにしてあげようかなって思ってるよ」


「心配しかないんですけど……」

「希と日向ちゃんがいるから大丈夫だよ。気にかけてあげてね」


「わかりましたー」


 杏さんと美咲さん達も来て、ちょっと賑やかになった所で先生たちもやって来た。


「先生、おはようございます」


「おはよう。朝から急に頼んで悪いな」

「柊さん、おはようございます。今日からよろしくお願いしますね」


 橋本先生も結構やる気満々な感じだった。


「えーと、初めて会う方たちもいるから簡単に紹介しておきますね。自衛隊のダンジョン特務隊に所属している冬月美咲二尉と進藤樹里准尉、相沢美穂准尉です。冬月二尉は日本の女性では最強ランカーなんですよ」

「初めまして野中です。そんな凄い方とご一緒させていただいていいのか?」


「午前中は私たちと一緒に行動してもらいます。午後からは美咲さんの所属しているチームシルバーに合流しますから頑張ってくださいね?」

「場違い感が凄いんだが本当に大丈夫なのか?」


「先生たちにダンジョンで怪我をしてほしくないんです。そのためには強くなる事が一番大事ですから。それと、樹里さんと美穂さんの二人は学校が始まったら実技教官として先生達の同僚になる予定の方なんですよ」

「あ、そうでしたか。よろしくお願いします」


 野中先生と橋本先生に頭を下げられて美穂さんと樹里さんが結構焦っていた。


「先生方、私たち本当に戦う事しかできないですから、先生に頭を下げられるとか申し訳ないんで、頭を下げないでください」

「今日は私が生徒の立場ですから、そういうわけにはいきません。よろしくお願いします」


 先生たち真面目過ぎだよね……

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