第190話 博多ダンジョンも進めなきゃ
希は他の生徒たちに囲まれて質問攻めにあっていた。
あんな目立った行動をとったんだから、しょうがないよね。
サオリンが「今ならみんな希ちゃんに注意が向いててSAIAの順番待ちが短くて済みそうだから行ってくるね」って言って職員室に向かった。
私は日向ちゃんに「雑談配信ってどんな事やるの?」って聞いてみた。
「雑談配信は本当に雑談ですよ、視聴者の人から質問して貰ってそれに応えていくのが中心かな? 私たちは明日はサオリン先輩のチャンネルにお邪魔する感じだから、サオリン先輩に話を振られたら答える程度で大丈夫なはずですよ」
「そっか、それなら難しく考えないでいいかな?」
「ですです。明日はサオリン先輩のチャンネルだったら視聴者さんいっぱいだから、宣伝を少しさせてもらう事くらいはしますけど、ガツガツ行く必要は無いですね」
「ガツガツは自分のチャンネルでも無いと思うけどね……」
「明日の配信は別として、明後日はダンジョン内から狩りの様子のライブ配信をやってみたいと思ってるんです」
「そうなんだ、どこでやるの?」
「金沢ダンジョンの十一層くらいから始めようと思うんですけどどうでしょうか?」
「いいかもね。お魚と越前ガニの在庫も欲しいし、楽しそう」
「じゃぁ決定でいいですか?」
「うん」
希がようやく解放されたみたいで戻ってきたので、バス乗り場に行って学校を後にした。
金沢の拠点マンションに到着すると、もう建物の取得は終わっているので希と日向ちゃんに部屋を一つずつ振り分けた。
「先輩、こんな凄い部屋に住めるとか夢みたいです」
「喜んでくれたなら良かったよ。希も日向ちゃんも自分の部屋は自由に使ってね。転移ゲートは一階の管理人室に移動させるから博多へはそこから行き来するようにね」
「了解です」
とりあえず部屋は割り当てたけど、三人ともアイテムボックス持ちだし、置いておく荷物もないので、そのまま三人で食堂へ戻った。
「杏さんただいまー」
「お帰り心愛ちゃん、希ちゃん、日向ちゃん」
そう言ってとりあえずカウンター席に腰かけると、後ろのテーブル席に美咲さんと香田さんが座っていた。
杏さんがダンジョンハワイコナコーヒーを淹れてくれている間に話しかける。
「あれ? 珍しい組み合わせですね。どうしたんですか?」
「心愛ちゃんお帰りなさい。まだ聞いてなかったようね。私と香田二尉がクリスマスホーリーに派遣武官で行く事になったの」
「そうだったんですね、頑張ってくださいね」
「他の国の色々なダンジョンを見れるのはちょっと嬉しいかもね。それに攻略に付き合えばスキルもたくさん手に入りそうだし」
杏さんがコーヒーを私たちの前に出しながら伝えてくれた。
「心愛ちゃん。そう言えば冴羽社長が少し鍛えて欲しいって言ってたわよ」
「へー、いきなりやる気になってどうしたんですかね?」
「ほら、転移ゲートを使った交通網を整え始めたじゃない。それで、世界中の流通業界や軍需産業なんかから襲われたり攫われたりする危険性もあるから、自己防衛が出来るようになっておきたいのと、スキルオーブを使うにしてもレベル制限が高いのが多いでしょ」
「確かにそうですね」
「で、レベル三十を目標に鍛えて欲しいらしいよ」
「レベル三十かぁ同じパーティでDランクダンジョンを一か所攻略すれば、届きそうなレベルだけどなぁ」
「そんなに簡単そうに……」
「平日の放課後は出来るだけこっちにいますから都合のいい時に顔を出すように伝えておいてください」
「わかったわ、伝えておくね」
「あ、明日はちょっと都合が悪いですから明後日以降でお願いします」
「了解! そう伝えておくね」
今日はまだ時間的に余裕があったので博多ダンジョンに出かける事にした。
「希、今から博多ダンジョンに行くよ」
「はーい、先輩と一緒にダンジョン入るのは久しぶりな気がしますー」
「そう言えばそうだね、先週末からずっとアメリカに行ってたしね」
「心愛ちゃん。私と香田君も一緒に行っていいかな?」
「勿論構いませんよ」
と言う事で日向ちゃんを加えた五人で博多ダンジョンへ向った。
博多ダンジョンの攻略も進めておきたいし今日は二十五層からスタートして三時間ほどかけて、二十八層に辿り着いたところで帰ったよ。
「そう言えばさっき美咲さんが香田二尉って呼んでましたけど前からでしたっけ?」
「いや、今回の派遣に合わせて一階級上がったすよ。冬月一尉も同じですね」
「あ、美咲さんも昇進したんだ。おめでとうございます」
「ありがとう心愛ちゃん。でも心愛ちゃんと一緒に狩りすると、普段の狩りが非効率なのがよくわかるよね。希ちゃんと心愛ちゃんが基本空中から殲滅した後の狩り残しを倒すだけだから、本当に楽だわ」
「心愛ちゃんがマジモンの魔法少女って感じになってるっすよね。箒に乗って黒猫を肩に乗せて上から魔法でどーんだから」
「でも、やっぱり魔法で狩るより、鈍器で撲殺の方が私的には狩りしてる! っていう感じがして好きなんですけどね」
そう言ったらなぜか香田さんの顔がちょっと引き攣っていた。
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