第184話 リメンバーパールハーバー

 パールハーバー基地で一晩を過ごして、早朝からホノルルダンジョンへ向った。

 シャイアンダンジョンと同じように最終層まではロジャーとグレッグと一緒に三人で最速ルートで降りる。


「ロジャー、ホノルルダンジョンは食材をドロップする敵はいるの?」

「ああ、十一層くらいからマヒマヒが結構出てくるな」


「マヒマヒってなに?」

「でかい魚だよ。この辺りの釣りでは一番人気があるな。ルアーで釣れるし、引きも強いから楽しいぞ」


 十一層まで下りたらロジャーが言ってた通りにマヒマヒが現れた。

 金沢でも思ったけど魚系の魔物が空中を泳ぐ姿はやっぱり違和感があるよね……


 ってかマヒマヒってシイラの事なんだね。

 日本ではそんなに高級魚のイメージは無いけどハワイでは高級魚として扱われているんだって。


 雄と雌で形が違って雄は頭の形が角ばってるんだよね。

 お父さんが「刺身でもうまいんだが、こいつは捌いてみないと刺身でいけるかどうかわからんから、買い付けが難しい魚だ」って言ってたなぁ。


 照り焼きやムニエルでも美味しいけど、独特の酸味があるから好き嫌いの分かれる魚なんだよね。

 

 でも、ダンジョン産のマヒマヒならきっと味にマイナス要素が無いような気もするから楽しみだなぁ。


 十五層までの間では、他にもシーフード系の敵がたくさん出てきたので、アイテムボックスの中には在庫がしっかりとたまったよ!


 十六層以降ではシャイアンダンジョンと同様で、爬虫類系って言うか恐竜系の魔物の割合が増えてきた。

 でもシャイアンもホノルルもあんまり巨大な恐竜は出てきてないから、Bランクぐらいのダンジョンに行けばきっとブラキオサウルスとかティラノサウルスみたいな大型の恐竜に会えるかもね。


 二十層を超えると植物ステージに突入してここではコーヒー豆がマシンガンの様に襲ってきたりしたけど、結界を張れる私にはあまり関係ないよね。

 美味しそうなコナ・コーヒーの豆も手に入ったよ。

 ロジャーに聞いたら、ダンジョン協会ホノルル支部の売店でダンジョン・コナ・コーヒーの豆は百グラム二百ドルもするんだって。


 朝の七時前からスタートして、夜の八時過ぎまでかけてようやく最終二十三層まで到着した。

 ここで一度ダンジョンの外に出て、明朝チームαとβのメンバーと合流してからボス戦を始める事になった。


 グレッグからホノルルの最終層の扉に描かれていた、謎文字の写真をスマホに転送してもらって部屋に籠った。


『リメンバーパールハーバー。撃破せし者、水中での自由を手に入れる』


 ……これは、なんだか、嫌な予感がするかも。


 翌朝、他のメンバーも揃い早速、最終二十三層へダンジョンリフトへ移動した。


「ロジャー、今回の敵はちょっと特殊かもしれないよ……」

「どうしたんだ、心愛元気がないな」


「扉に刻まれた碑文が『リメンバーパールハーバー』だったの」

「なんだって……まぁ心愛が気にする必要はないさ」


 そう言って扉を開け放つと、そこには海が広がっていた。

 海上に黒い霧が立ち込めると、巨大な船が現れた。


「あれは……赤城か」


 グレッグがそうつぶやいた。


「赤城って?」

「あの船の名前だ。太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃で日本側の旗艦だった空母だな」


「やっぱりそうなんだね。あの船を沈めたらいいのかな?」


 そう言っているうちに、空母の甲板から次々にプロペラ機が飛び立ってきた。


「芸が細かいな……九七式艦上爆撃機だぜ」

「私は赤城の方に行ってくるね」


「心愛、ちょっと待て今この状況だと対空兵器が不足している上に、俺たちが空母に乗り組む手段がない。一度出て作戦を立てて再突入をした方が良くないか?」

「わかったよ。じゃぁ一度エスケープで脱出しましょう」


 そう言って全員が一度脱出した。


 パールハーバー基地へ戻りロジャーとグレッグを中心に作戦会議が行われた。

 

「どう見ても、大昔の爆撃機だったし、現代の対空自走砲でも持っていけば恐れる心配もなくないか?」

「どうやって持っていく?」


「私がアイテムボックスに入れて持っていきましょうか?」

「赤城に対してはどう攻撃する?」


「びっくりして鑑定してないけど……ダンジョンボスだからって特別な攻撃方法を持っていないその当時の性能のまんまって言うパターンじゃないのかな?」

「なんでそう思う?」


「だって、アイテムボックスが無ければ戦闘機と空母を相手に出来るような装備なんてまず運べないし、このランクのボスだと思えばそれだけで十分な脅威だと思うんだよね」

「なるほどな、確かにその可能性は高い。二十三層まで空母や爆撃機を相手に出来るような装備を運ぶ条件だけでも相当な難題だ」


「きっとそのパターンならロジャーのギガントショットを甲板のど真ん中とかに打ち込んだら沈められないかな?」

「俺は、心愛みたいに飛べないぜ?」


「グレッグはヘリコプターの操縦できるよね?」

「ああ、任せろ」


「じゃぁ自走砲三台と、ヘリコプター一機を持っていけば大丈夫だよね?」

「あくまでも、相手が通常兵器であればだがな」


「やってみる価値はあると思うよ」


 早速基地で武器を用意してもらうと、私のアイテムボックスに仕舞い込んで再び二十三層に向かった。


「突入したら、すぐに自走砲を三台とヘリを出すからうまく立ち回って下さいね」

「その辺りに関しては俺たちはプロだぜ、任せろ」


 再び突入すると予定通りに、自走砲三台を取り出した。

 九七式爆撃機が飛び立つと、一斉に射撃を初めて見事に撃ち落とし始めた。


「やっぱり、何の特徴もない当時の性能みたいだな」

「じゃぁ赤城は、ロジャーに任せるよ」


「おう、グレッグ操縦は任せたぜ」


 私も箒に乗って、上空へと舞い上がった。

 九七式爆撃機は滑走路から飛び立つ暇もなく撃ち落とされていく。


 現代兵器って凄いな……

 グレッグがSH-60シーホークって言うなんかかっこいいヘリコプターで飛び立つと赤城の上空に位置どった。


 ロジャーがギフトを発動して赤城の艦橋を真上から攻撃する。


「くらえ! ギガントショット」


 その一撃で爆発炎上を始めた赤城は、海中に消えていった。


 スタート地点に台座に乗った水晶が現れている。


 グレッグがヘリを着陸させると、私も地上に降りて自走砲とヘリを収納した。

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