第66話 クリームコロッケと土魔法
家に戻ると杏さんに連絡を入れた。
『心愛ちゃんお疲れ様、おばあちゃんはどうだった?』
『はい、おかげさまで病気は治りました』
『良かったわねぇ』
『ありがとうございます。下関は二十層まで下りましたので明日最終階層に到達予定です』
『流石に早いわね、金沢で大きな動きがあったわよ』
『どんな事ですか?』
『アメリカの最強部隊が助っ人で到着したそうよ。現在特務隊は全員の二百四十名がリフトで最終階層まで行ける状態で、アメリカ部隊が同条件になり次第突入でしょうね』
『なんか凄いですね。アメリカ最強部隊って事はシングルの人とかも来ているんですか?』
『シングルは二名居るそうよ』
『わー会いたいなぁ。って言うか鑑定してみたいなぁ、その人の写真とか澤田課長撮れないんですかね?』
『あ、それ良いアイデアね。そう言えば私も写真で鑑定できる様になってたわレベル二十が条件だった様ね』
『澤田課長に連絡して本人の写真を手に入れる様に頼んでみるわね』
『よろしくお願いします』
◇◆◇◆
お料理も作らなくちゃね!
早速日向ちゃんに連絡を入れる。
日向ちゃんの到着するまでの間に献立を考える。
今日のムカデのお肉、ちょっと怖いけど身は白くてプリッとしてるし簡単にほぐれるから、カニ爪みたいな感じかな?
クリームコロッケが良いかもね。
まずはベシャメルソースを作ろう。
小麦粉をふるいに掛けて弱火で丁寧にからいりする。
小麦粉と同量の無塩バターを入れて馴染ませる。
別鍋に牛乳を人肌程度に温めて、それを数回に分けてベースに合わせていくの。
滑らかに美味しそうな感じになって来たら、ムカデ肉をほぐしながら混ぜる。
本当にカニ肉と同じような感じでほぐれるね、これなら大丈夫かな。
塩コショウで味を調えて、デリシャスポーションを加えて伸ばしていく。
食べる時の衣からトロっと流れ出る感じの硬さをイメージしたら良いよ。
一度冷ますと形が整えやすくなるので、粗熱を取ってから冷蔵庫で冷ます。
魔鶏の卵をよく溶いて、形を整えて小麦粉をまぶしたコロッケをくぐらせてパン粉を付ける。
百八十度の温度でカラッと揚げれば出来上がり。
マヨネーズとケチャップを合わせた、オーロラソースを敷いた皿の上に生クリームをかけ、ソースのコクを出す。
コロッケを盛り付けてセルフィーユを飾って完成だよ!
「先輩、私クリームコロッケ大好物なんです」
「そうなの? それは良かったわ。味も自信ありだから早速頂きましょう」
「先輩! このクリームコロッケ凄いです。濃厚なカニのエキスの様な味がホワイトソースの中に溢れ出してて本当にほっぺが落ちちゃいそうです」
「本当に美味しいねぇ。上質なタラバガニの風味をもっと濃くしたような感じね」
「今日、希から貰ったデータだともう下関ダンジョンの二十層まで降りてるんですね。きっと企業系の探索チームを除けば国内の一般探索者でも最先端なんじゃないですか?」
「どうだろうね? 他の探索者とはダンジョンで出会うこと自体が上層階でしか無いからあんまりわからないかな?」
「私ちょっとその辺り調べてみますね。動画のサブタイトルなんかに使えそうなキャッチコピーになりそうだし」
「その辺りは日向ちゃんに任せるよ。ただ階層が深くなってきて魔法を多用してるから、動画編集的に難しくない?」
「そうなんですよね。ただ、先輩の場合はお料理動画があるし、これが今凄くバズって来てるので、ダンジョン攻略を押すより食材調達と料理シーンを絡める形で編集していけばどうかな? って思ってます」
「確かにそれなら、問題はだいぶ少なくなるかもね。その方向性で行こうか」
「あとですね、先輩に連絡を付けたいってコメントが何件か入っているんですよね。恐らくダンジョン素材採取系の商社とかの攻略部門の人だと思うんですけど」
「あー。そういうのはとりあえず全部スルーでお願い」
「了解です」
「日向ちゃんは家の方は大丈夫なの?」
「あんまり大丈夫じゃないんですけど、一人暮らしとかするにはお金もかかるし、まだ我慢します」
「どうしても我慢できない状況になったら言ってね。助けになれるかもしれないから」
「ありがとうございます。その時にはよろしくお願いします」
日向ちゃんが家に帰るとスキルボードを確認する。
『セレクトスキルの選択権を獲得しました』
【土魔法】
【ダンジョン通信】
あ、新しいの出たぁ良かったぁ。
やっぱり、一度使った組み合わせでは、新しい選択肢を出す事が出来なかったって事なのかな。
料理が違えば、獲得する事自体は可能なんでしょうね。
もうストックが一つしか無いから、二択になっちゃうのは寂しいけど。
【ダンジョン通信】ってなんだろう? 【鑑定】してみよう。
~~~~
【ダンジョン通信】
ダンジョン内で通信機器が使えるようになる。
初回ダンジョンクリアでアップデートあり。
~~~~
これは……
電話なんかが使えるようになるって事かな?
でも電波が届くようになるって事は、私以外もみんな使えるようになるの?
この説明だけじゃわかんないなぁ。
でも今日の所は【土魔法】だよね
一応【鑑定】しておこうかな。
~~~~
【土魔法】
大地の神ガイアの加護を受け大地に纏わる様々な能力を身に付ける。
マッド LV1
セラミックソード LV5
セラミックランス LV15
クエイク LV100
クリエイトゴーレム LV50
ピットフォール LV10
クレイウオール LV30
~~~~
うん、予想通りだけど、クリエイトゴーレムってゴーレム作れるようになるのかな?
便利そうだね。
◇◆◇◆
「心愛ちゃんおはよう」
目が覚めると食堂からコーヒーのいい香りがしてきたので顔を出すと、杏さんがコーヒーを淹れていた。
「杏さんおはようございます」
「今日で会社設立が完了するからね、今日からは正式に心愛社長になっちゃうよ」
「絶対に社長って呼ばないで下さいね?」
「そう言う訳にもいかないわよ、私達だけの時は良いけど、公的な何かをする時は呼称は大事だからね」
「出来るだけ、そういう場に出る必要が無いようにお願いします」
「わかったわ」
「昨日のアイテム渡しておきますね」
「はい、確かに預かったわ。心愛ちゃん……下関の事だけど無理はしないでね。恐らくだけど中国が攻略に失敗したわ」
「え、それって本当ですか?」
「発表があった訳では無いけど、アメリカが掴んだ情報では攻略部隊が突入した後バックアップの部隊だけが引き上げたのを確認したらしいよ」
「攻略の途中ならバックアップの部隊が引き上げる事はあり得ないから、恐らく全滅して引き上げたんだろうとの見方らしいよ」
「うわぁっ……て事はダンジョンマスター的な存在は、通常の三十層を攻略できる程度の力じゃ無理かもしれないって言う事ですよね?」
「今日の昼に金沢も作戦が開始される予定だったけど、その話を受けてちょっと決断が遅れているらしいよ」
「アメリカ情報では、中国の部隊は遅れていた攻略に焦って二線級以下の部隊で突入を敢行したらしいっていう話しもあるから、本当に手も足も出ないのか只の実力不足の部隊での無謀な突入が問題だったのかの判断が付かないらしいからね」
「後者であって欲しい話ですね。もしかして魔法が必須の敵だったとかなら、私達だったら問題無いけど、それも絶対そうだとか判断できないですよね」
「私としてはもう少し情報がはっきりするまでは、心愛ちゃんにも突入を控えて欲しいわ」
「考えておきます。少なくともはっきりしない状況では、希は連れて行けないですね」
「一人でなんて絶対だめだからね」
「私は無茶なんてしませんよ」
「先ぱーい、杏さんおっはよーございまーす」
「おはよう希」
「今日は下関楽しみですね」
「う、うんそうだね」
「なんか歯切れ悪いですね先輩?」
「学校行こうか」
「はい」
どう判断するのが正解なのかな?
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