第60話 ネギマ鍋と味噌煮込み
下関ダンジョンで今日の目標だった杏さんのレベル二十を達成して三人揃って転移で食堂に戻るとポーションⅥ以外のドロップ品を杏さんに預けて解散となった。
午後三時頃まで狩をしたのでドロップ品は全部で百二十個以上はあったよ!
さぁ今日はお料理もしなくちゃね! 雷魔法と身体強化が欲しいよね。
お料理二つ作らなきゃ。
早速、日向ちゃんに電話をするとすぐに来てくれるって返事をもらったので、その間に献立を考えることにした。
でも日向ちゃんいつもすぐに来てくれるけど、ご両親から何も言われないのかな?
一品はダンジョンマグロのネギマ鍋が良いかな。
もう一品はダンジョンオーストリッチのお肉が一杯残っているけど、デリシャスポーションを使う事に意味のあるお料理かぁ……結構難易度高いよね。
よーし味噌煮込みを作ってみようかな。
献立を決めたタイミングで日向ちゃんも到着したので早速料理を始める。
日向ちゃんももうこのキッチンスタジオに慣れてきたので撮影機材のセッティングもすぐに終わる。
味噌煮込みは普通に作っちゃうと六時間は煮込まないと美味しく無いけど秘密兵器を使っちゃおう。
圧力鍋だよ!
まずは時間のかかる味噌煮込みからだよね。
一口大の大きさにオーストリッチのお肉を切り分けて、一度さっと湯通しをする。
デリシャスポーションをオーストリッチの量に対して、ひたひたになる様に注ぎ、ネギと生姜を一緒に入れて、しっかりと圧力鍋の蓋を閉じて火にかけた。
蒸気が上がって来るまでは強火で、蒸気が上がったら弱火にして一時間程煮込む。
その間に、ネギマ鍋を作らなきゃね。
マグロは大きめのお刺身サイズに切り分けて、さっと霜降りをする。
お野菜は白ネギを三センチメートルサイズのぶつ切りにして、表面をバーナーで炙る。
お豆腐は今日は木綿豆腐が合うよ。
一丁を十二分の一くらいのサイズに切るのが丁度いい。
青味は三つ葉を三センチメートル幅に切って用意しておく。
お鍋に三つ葉以外の材料を丁寧に並べて、別鍋で『デリシャスポーション』八杯、薄口醤油一杯、お酒一杯、味醂〇.五杯を合わせて一煮立ちさせたお出しを素材を盛り付けた鍋に注ぐ。
お鍋を火にかけて、一煮立ちさせて三つ葉を入れて火を止める。三つ葉に余熱で火が通れば出来上がり。
取り敢えず、アイテムボックスに仕舞って置いて、味噌煮込みの仕上げに取り掛かる。
圧力鍋の蓋を開けて、別のお鍋にざるを載せて、中身を移す。
お出しは更にシノワで濾して、合わせたお味噌を溶かし込む。
この時のお味噌は、赤味噌三に白味噌七の割合で合わせ、お酒でちょうどいい硬さに溶き味醂を少し加える。
甘めが好きな人は、お砂糖を入れてもいいけど私は白みそと味醂の甘味だけで十分かな?
オーストリッチのお肉を鍋に戻す。
一緒に煮込んだネギと生姜は、この時に取り除く。
そのまま、ゆっくりと混ぜ合わせながら三十分程煮込めば出来上がり!
ご飯を用意して先に出来上がっていたネギマ鍋もアイテムボックスから取り出す。
「うーん、三つ葉の香りが凄い美味しそう」
「心愛先輩、今日のお料理も美味しそうですね匂いだけで逝けそうです」
「日向ちゃんもセリフが希っぽくなってきたね」
「えー、希と同じ扱いは嫌かも」
さー実食!
ネギマ鍋はポン酢を用意して、お鍋のスープで半々に割って、食べる。
「幸せな味だよね!」
「本当に幸せです」
次は味噌煮込みだよ。
こっちは柚子胡椒を添えて食べる。
美味しいなぁ。
すっごい柔らかくて、ダチョウの少し野趣の強い風味も、お味噌との組み合わせでまろやかになってて、柚子胡椒のピリッとした辛みが美味しさを引き立ててくれる。
これなら、歯の悪いお婆ちゃんでも大丈夫なくらいだよ。
「先輩今日もごちそうさまです。次のお料理も楽しみにしてますね」
「ねぇ日向ちゃん。ご両親には夜に出かけても何も言われないの?」
「それですね、実はこの間の事があったじゃないですか損害賠償がどうたらこうたらって言ってた」
「うん……熊谷先生がご両親とお話しされた件ね」
「あの時に弁護士先生に色々説明されてからも両親は納得してなかったらしくて、家の中の空気は最悪なんですよね。一番腹が立つのは私の怪我がポーションのお陰で完全に治ったじゃないですか。父がそのせいで損害賠償が請求出来ないみたいなことを口にしたことですね」
「ええっ、それは酷いね。怪我が治ったことを素直に喜ぶべき話だよね」
「うん。それで私も頭にきて喧嘩になっちゃったんです。だから家にも居づらくて、両親も私と顔を合わすのがバツが悪いみたいで、出かけても何も言わないですね」
「そうなんだ。日向ちゃんは、この先どうしたいの?」
「うちですね、実は両親ともに再婚同士で私はお母さんの連れ子だったんです。父は恐らく無職で、パチンコばっかりしてるような人なんです。お母さんのひもの様な状態だと思います」
「それって……結構ハードな環境だね」
「うん……お母さんは病院の看護師だからそれなりの収入はあるからなんとかなってますけど、余裕はないですね。それに……看護師って夜勤とかあるじゃないですか泊まり込みの」
「そうだろうね。大変な仕事だって言うのはわかるよ」
「母が夜勤で父と二人っきりになった時が凄く不安なんです。私を女として見てて視線が怖いっていうか気持ち悪いっていうか、とにかく我慢の限界って感じですね」
「何かあってからじゃ遅いから、この間の弁護士さんに対処方法を相談しておくよ。日向ちゃんは大変だろうけど、とにかく、お父さんと二人きりの時に隙を見せないようにしてね」
「はい、ありがとうございます」
日向ちゃんが帰って行って一息ついたけど、想像以上に話が重くて参っちゃったよ。
さっきから出てるスキル取得画面を確認した。
『セレクトスキルの選択権を取得しました』
【土魔法】
【雷魔法】
【身体強化】
あ、新しいのが出ない。スキルの種類はこれで終わりなのかな?
解んないな……
もしかして組み合わせで新しいダンジョン食材とデリシャスポーションの組み合わせじゃないから新しいスキルは出なかっただけかも。
それだと味噌煮込みでも新しいのは出ないはずだけど違う素材の組み合わせの料理を作るまでは解らないなぁ。
予定通りにまずは【雷魔法】をGETしておこう。
続けて二つ目のスキル獲得画面……
『セレクトスキルの選択権を取得しました』
【土魔法】
【身体強化】
あーやっぱり新しいスキルは出なかったかぁ
でも取得するのは決めてたし『身体強化』を取得!
一応【鑑定】して置かなくちゃね。
~~~~
【雷魔法】
雷神トールの加護により、様々な雷に纏わる能力を使えるようになる。
エレクトリック LV1
イナズマソード LV5
イナズマランス LV15
落雷 LV35
雷神降臨 LV100
電光石火 LV10
~~~~
【身体強化】
攻撃力、防御力、敏捷性に補正が掛かる。
LV1 10%
LV20 20%
LV40 30%
LV60 40%
LV80 50%
LV100 60%
LV120 70%
LV140 80%
LV160 90%
LV180 100%
~~~~
どっちも予想通りだったから希にも食べさせないとね。
身体強化と電光石火とか併用しちゃうと、自分の動きを制御できるか心配かも。
あ、そう言えお母さんに電話しなきゃ。
『お母さん、お婆ちゃんの具合ってどうなの?』
『あら心愛、お婆ちゃんねあまり良くないんだよね……一応、心愛も覚悟はしておいてね』
『お婆ちゃんの病気は何なのかな?』
『お婆ちゃんね、肺がんなの。ほら、たばこ好きじゃないお婆ちゃん。もうあちこち転移しちゃっててね、高齢だから進行は遅いんだけど、体力的に手術は難しいんだって、お婆ちゃんお洒落さんだから、髪が抜けるのは嫌って言って、抗がん剤も断ってて、もう痛み止めのモルヒネだけ打ってる状態なの』
『私、明日行っても良いかな? お婆ちゃんの顔が見たいから』
『きっと喜ぶよ、孫は心愛一人しかいないし』
『解った。朝一の電車で行くね、駅からはタクシーで直接病院に行くから』
『待ってるよ』
やっぱりか……お婆ちゃん「たばこ止めるくらいなら、死んだほうがましだし」って言い続けてたし大体お爺ちゃんと結婚した理由も「たばこ吸う女でも許してくれる人」だけが理由だったくらいだしね。
その割にはメチャ仲良かったけどね。
希と杏さんにも連絡しておこう。
『希、明日は探索昼からになるから、午前中はゆっくりしててね。私ちょっとお婆ちゃんの所に行って来るから』
『先輩、了解です。お婆ちゃん大事にして上げて下さいね』
『杏さん、今大丈夫ですか』
『あ、ちょっと待っててね』
『忙しそうな時にごめんなさい』
『納品をしてただけだから、大丈夫だよ。決して男の人とHな事とかしてないから安心してね』
『そんな事思わないですよ、希じゃないし』
『そうなんだ。心愛ちゃんも十七歳なんだから、そんなのも興味はあるでしょ?』
『それは……無いと言ったら嘘になりますけど、そうじゃ無くて、明日はお婆ちゃんの所に顔を出すから探索はお昼からにしますって言う連絡です』
『そうだったんだ。でも心愛ちゃん、私が付いて行くと経験値の振り分け勿体ないし、隠蔽ももう取れたから、探索は二人の方が良いよ。私一切戦って無いし』
『そう言えばそうですね、了解しました。じゃぁ探索終ってから連絡しますね、日曜日だしゆっくりとお休みして下さいね』
『ありがとう、じゃぁ心愛ちゃんも無理しちゃだめだよ。おやすみなさい』
『はい、おやすみなさい』
日向ちゃんの家の事も心配だけど、明日は、お婆ちゃんの元気な顔が見れたらいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます