第164話 金沢で一騒動

 劉さん達と別れて博多に戻った私は早速、冴羽社長に連絡をした。

 今は二十三時を過ぎている。


『社長、遅くにすいません』

『どうしたんだい心愛ちゃん』


『中国の劉さんから重要な情報をいただいたので、早急に知らせる必要があると思ったので連絡しました。今から食堂に来ていただけますか?』

『わかった、すぐに行こう』


 十五分ほどで到着した冴羽社長と杏さんと私の三人でテーブルを囲み劉さんから聞いた情報を伝えた。


「凄い情報だな……早速アンリさんに伝えて対応策を練ろう」


 冴羽社長が、アンリさんと打ち合わせをするために、百道のホテルに向かうと私は杏さんと話を始めた。


「心愛ちゃん、劉大佐から情報を聞くのに電話なんか使ってないよね? まさかまた一人で中国に行ってきたの?」

「ごめんなさい、行きました」


「心愛ちゃん……そんな行動をしてもし他の人にばれたりすると、とっても面倒な事になるから危険な事をしたら嫌だよ」

「わかってはいたんですけど、劉さんの性格からしてどうでもいいような情報で呼んだりしないって思ったから行くべきだと判断してしまいました」


「心愛ちゃんは、強くて優しいね。でも、まだ青春真っ盛りのJKなんだからもっと気楽に生きてもいいんだよ」

「でも、私にしかできない事もあるから、ちょっと頑張らなきゃいけないかな? っていう気持ちもあるんです。駄目ですか?」


「うーん……駄目じゃないよ。心愛ちゃんがやりたい事をやればいいと思う。ただね、もうちょっと私たちも当てにして欲しいかな? って思うの。一人で抱え込んじゃわないでね」

「はい、それは大丈夫です。杏さんを、おもいっきり当てにしてますから」


「そう、それならいっか。さっきの話にも出てきたけどロマノフスキー少佐は日本に来てる可能性が高いって事なの?」

「確定じゃないんですけど、諸葛さんがそう思ってるなら、ほぼ外さないと思うんですよね」


「何が目的なんだろうね?」

「とりあえずは、やはりJOBの取得のために来ると思うんですよね。有ると無いとじゃ全然強さに差が出ますし」


「美咲とも少しロマノフスキー少佐の事を話したんだけど、ソフィアの尻に敷かれてるっていうイメージだったんだよね」

「えっ? そうなんですか。それは私の描いてたイメージと違いすぎる情報です。もっと冷血漢な人のイメージでした」


「でしょ? 一度会って話してみたら意外に協力しあえる関係になれたりするかも?」

「そうだったら、ダンジョンを攻略していく上で重要な鍵になりそうですね。そう言えば前に少しアンリさんが言ってたんですよね。ロマノフスキーの事で何かあったら俺に言え的な事を」


「そうなの? どんな繋がりなんだろうね、でも、それなら今こそ相談するタイミングじゃないかな?」

「そうかもしれないですね。今は冴羽社長と打ち合わせ中だろうから、明日にでも相談してみます」


「そうね、もう遅いし明日も学校でしょ?」

「はい、じゃぁ今日はもう寝ますね。おやすみなさい」


「おやすみ」


 翌日になって、放課後、希と日向ちゃんを連れて金沢にやって来た。

 また小学校の校庭を借りるためにダンジョン協会に顔を出すと、そこには信じられないような組み合わせのメンバーが集結してた。


 まず、チームシルバーのフルメンバーと樹里さんと美穂さん。

 ロジャーとグレッグのアメリカコンビ。

 それに、アンリさんが二十人ほどの人たちと一緒に居た。


 場がカオスすぎるんですけど……


「あの……こんにちは。いったい何事なんですか?」

「よお、お嬢。うちのチームのメンバーたちだ。お嬢は初めてだったな」


「あ、はい。王さんと孫さんだけは、お祖母ちゃんのとこで挨拶だけさせてもらいましたけど」

「今日はうちのメンバーでJOBの取得だけしておこうと思ってやって来たんだ」


「そうだったんですね。皆さんとっても強そうな方ばかりですね心強いです。女性の方たちも素敵な方ばかりだし」

「心愛、俺たちにも話しかけてくれよ。無視されると悲しいじゃねぇかYO」


「ロジャー、別に無視したわけじゃないし、初めて会う人から挨拶するのが普通でしょ?」

「そうか、それならいいんだけど。聞いてくれよ二十層までたどり着いてJOB取得したぜ」


「てめえばっかり話してんじゃねーよ。心愛、俺のすげえカッケーJOBを聞いてくれ」

「なんのJOBが出たのグレッグ?」


「NINJAだ。カッケーだろ」

「なんか凄そうだね。鑑定はしたの?」


「まだだ、SAIAを借りようと思ってここに来たら、このメンバーが集まってたってとこだな」

「そうなんだ。ロジャーは何を取ったの?」


「俺は、勇者は出なかったんだがヒーローって言うのがあったからそれにした」

「それもなんか凄そうだね。って言うかグレッグすっかり元通りになったね」


「あー心愛、聞いてくれグレッグの恋煩いの相手が見つかったんだ」

「えー日本にいたの?」


「って言うか、ザ・シーカーのチームメンバーだった」

「よく本人を目の前にしてそんな会話出来るよね……」


 ロジャーに暴露されてグレッグがいきなりロジャーを殴った。


「てめぇ、絶対殺す。人の純愛を大声で話しやがって」

「どーせ駄目なんだから、とっとと玉砕した方がいいんだよ。親切で言ってやってるんだ」


 そう言いながら、起き上がりざまにサマーソルトキックでグレッグの顎を蹴り上げた。


「ロジャー、グレッグ、二人ともステータスオール一でスキル全部使えなくしちゃうよ?」


 私のその言葉に二人がいきなり土下座した。


「「心愛、それだけは勘弁してくれ」」


「お嬢……ランキング二位と三位を土下座させるとか凄いな。流石、五郎の娘だ」


 チームシルバーのメンバーもその光景を呆然と見ていた……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る