第127話 日本政府の決断
JDAでの内部調整を終え、森会長を始めとした四名で首相官邸へと移動した四名が政府側との協議に入る。
島 :「森会長、概要に関しては書面で確認させていただきました。政府としても早急に対策を取るべく、担当部署の立ち上げを行いました。当面この担当部署ダンジョン省の特命大臣を兼務する内閣官房長官の『島颯太』です」
この場には政府側から内閣総理大臣『藤堂晃』官房長官『島颯太』防衛大臣『斎藤達也』警察庁長官『土方斗真』が参加している。
斎藤:「早速ですが、金沢周辺の防衛に関してはJDAさんから提案のあった結界の構築を早速実施していただきたいと思いますが、これに関しての問題点はあるのでしょうか」
澤田:「それに関しては私の方から返答させていただきます。結界内部への出入りに関して制限がかかるそうです」
斎藤:「具体的にはどういう内容でしょうか?」
澤田:「今回設置予定の結界は金沢ダンジョンを中心に二十キロメートルの範囲ですが、出入りは一か所だけに限定されるようです。周辺を航空機や船舶が通過する事も結界への衝突事故の可能性が起こります」
斎藤:「視認は出来ないという事ですか?」
澤田:「そのように伺っています」
藤堂:「その辺りは運航の規制を掛ければ問題ないでしょう。至急設置に向けて動いてください」
轟 :「設置に関してですがD-CANという企業が担当します。企業である以上当然経費が発生しますが、それは認可されるのでしょうか?」
藤堂:「過去に例のない案件なので価格に関しては当然、調整させていただきますが国防のために必要なものとして認めましょう」
轟 :「了解いたしました。早急に手配をいたします」
土方:「私の方からの質問ですが、ダンジョン外の活動において能力を保ったまま行動が出来るスキルが現れたそうですが、それは事実でしょうか?」
結城:「その件に関しては事実です。ただし現状ではD-CANの販売するスキルオーブを使用するか、金沢ダンジョンの最終層で取得するしかありませんので犯罪者の手に渡る可能性は低いと思われます」
土方:「D-CANという企業から一般人に流出する可能性は無いと保証できますか?」
結城:「現状では、スキルオーブに関してJDAを通しての販売以外は認めていませんので可能性は低いと考えます」
土方:「D-CANという企業は信用できるのですか?」
結城:「社長は元協会理事の冴羽という者が行っており、主な商品の開発などは博多支部所属のS級探索者『柊心愛』が行っております。彼女には協会から専任の管理官もつけており当面の問題は少ないと思われます」
土方:「彼女に関しては既に国から要警護対象と認定していますが、公安の訓練を受けた捜査員たちが度々姿を見失っています。なにか特殊な移動方法などをお持ちの様ですね」
澤田:「JDAとしては全ての能力を把握しているわけではありませんが、移動に関しての能力を所持している事は把握しています」
土方:「日本の不利益になるような行動があれば拘束もやむを得ないと考えますが、協会側としてはどう思われていますか?」
森 :「彼女に関しては、仲良く付き合うのが一番得策だと考えますな。もし拘束を行っても先程話題に上がった移動系の能力で簡単に脱出するでしょうし、その上で日本を見限れば彼女を受け入れたい国はいくらでも存在します。損しか残らないでしょうな」
藤堂:「土方君、森会長の言われることは正論だと思う。どうでしょう我々も柊さんと仲良くなれるよう橋渡しを頼めないですか?」
澤田:「総理、柊さんは女子高校生ですよ? 仲良くと言われると彼女の方も困るのでは?」
藤堂:「少なくとも彼女が日本の命運を握っている事に間違いはありません。女子高生であろうが、直接話のできる状況にしておくことは重要です。D-CANの社長も含めて一度呼んでいただけませんか?」
澤田:「日にちなどの調整はいかがいたしましょうか?」
藤堂:「早い方がいいですね。例えば今とか」
澤田:「現在、担当管理官とともに博多にいるはずですので連絡をしてみます」
澤田が杏に確認の電話を入れた。
『兄さんどうしたの?』
『ああ、総理が冴羽と心愛ちゃんに会いたいそうだが今から来れるか?』
『ええっ? 総理が直接ですか? 一応聞いてみるけど、どうだろう……』
「冴羽さん、心愛ちゃん。総理が会いたいって言ってるそうだけど今から首相官邸に来れるかですって」
「えっ? 総理って総理大臣の事ですよね?」
「そうね……他にいないと思うよ」
「そんなの無理ですー」
「心愛ちゃん、どうせこんな日は来ると思ってたし、それなら早い方がいいと思うよ。関係者はみんないるみたいだし今後の事を考えればさっさと終わらせた方がいい」
「冴羽さん、結構大物ですね。普通もっと
「そんな事を言ってたらこれから先の商売に影響が出るからね。心愛ちゃんも面倒だろうとは思うけど、ちょっと付き合ってくれ。大丈夫だ心愛ちゃんは俺が必ず守るから」
「社長、男前の発言してますけどレベル上げたんですか?」
「いや……まだ6のままだ」
「頼りにならないなぁ。でも仕方ないから付き合います。守ってくださいね」
『兄さん、OKみたいだから今から行くわね十分ほどで付くと思うわ』
千里眼を発動すると、首相官邸の人気のない庭に転移先を決めテレポを発動した。
「心愛ちゃん。いきなり敷地内はまずいと思うよ?」
「えっ? そうなんですか」
杏さんの言葉に返事をしたら、すぐに警備の人たちが大勢で取り囲んできた。
(銃まで構えてるよー)
冴羽さんが前に出て説明する。
「総理に呼ばれてきました。すぐに確認を取っていただければと思います」
「一体どうやって敷地内に侵入したんだ」
「その辺りは機密情報と言う事で……」
そんな会話をしていると確認が取れたようで、官邸の中から警護班の人が出てきて案内をされた。
「初めまして、お呼びと伺ったので取り急ぎ参上しました。D-CANの社長を務める冴羽と申します」
「平社員の柊です」
「柊心愛さんの専任管理官を務めるJDA博多支部の大島です」
そう挨拶をすると、テレビでよく見かける人が近寄ってきて手を差し出した。
それぞれ握手をすると一言言われた。
「首相の藤堂です。一応、警備の人たちが困るから直接官邸の敷地内に来るのは勘弁して下さいね」
「はい……すいません」
でもそのおかげで来る前に感じていたような緊張感は取れたので、結果オーライと言う事で……
警察庁の土方さんと言う方が聞いてきた。
「本当に転移などという事が可能なんですね。まさか博多からここに来るまでに五分もかからないとは……その能力は他にも使える方がいるのでしょうか?」
「えーと、今の所他に使える人は知りませんけど、ダンジョンからスキルオーブが出ますからそれを手にした人が居たらわからないです」
「私とも仲よくしてくださいね」
「あ、はい……」
斎藤さんや島さんという大臣さん、ダンジョン協会の協会長である森さんともそれぞれ挨拶と握手をし、今までの話の流れなどの説明を受け一息ついた。
「えーと、今私たちが呼ばれたのは要約すると、友達になってくださいっていう事ですか?」
「そうですね、おじさんたちじゃダメですか?」
「いえ、あの、駄目じゃないですけど、恐れ多いです」
「心愛ちゃんに頼むことが沢山あるので友達価格でお願いしたいからね」
「その辺りは社長と話してください。私はさっぱりなんで」
「了解です」
「今後は政府閣僚の中で直接D-CANや心愛ちゃんと会話する機会があるのは島官房長官になります。連絡する事もありますからよろしくお願いしますね」
「冴羽社長、機密を含む案件が多くなりますので出来る限り人を介さずに直接お話しさせていただきたいと思います」
「了解いたしました」
「森会長、ダンジョン協会からも専任者を出していただきたいのですが」
「澤田理事が適任でしょうな」
「はい、承ります」
「心愛ちゃん、早速ですが金沢の結界の件をよろしくお願いします」
「はい」
心愛たちが再び金沢に戻っていき、ダンジョン協会のメンバーも首相官邸を去る。
残された四人の閣僚たちがつぶやいた。
「日本の命運は、女子高生に委ねられるか……」
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