第23話 希のステータスアップ

 ダンジョンに入ると、希が早速スマホを準備して撮影を開始した。

 もう既に『ダンジョンリフト』の情報は公開されているので、人目を気にせずに堂々と使用できるから五層へとリフトで移動した。


 一人ずつしか使えないから、そこだけはちょっと不便だよね。


「希、真っすぐ六層に降りる階段に向かうよ」

「はい、了解です」


 階層守護者の場所に向かいながら、出て来た敵を金棒でジャストミートして進み階層主の場所へとたどり着いた。


「希は、ここは初めてだよね?」

「はい、そうですね。ここの中ボスはどんなのが出るんですか?」


「初めて見るとちょっと衝撃的かもね一応人型だよ」

「えーどんなのだろう?」


「出たよ、攻撃は単調だけど素早いから気を付けてね。ナイフだと首筋を切り裂けばいいんだけど、今回は私が倒すから動きを見て、もし近づいたら避けるだけでいいよ」


 現れた中ボスは、二足歩行の鶏だった。

鶏王けいおう』って言う敵だよ。

 頭には真っ赤な鶏冠とさかが付いていて、筋骨隆々とした体躯に真っ白な羽毛が全身を覆っている。


「先輩、結構キモイですね」

「でしょ? くちばしでつついて来るだけなんだけど、結構タフなんだよね。まぁ私はもう慣れたけどね」


 金棒をバッティングフォームで構えて、近づいて来た所を思いっきり振りぬいた。


「ジャストミート!」


『グチャ』っという音と共に、鶏王は壁際まで吹っ飛んで黒い霧に包まれて消えて行った。

 その場にアイテムが残された。

 魔鶏の卵と魔鶏のお肉が落ちていた。


「ラッキー、卵の在庫少なかったから助かるぅ」

「先輩、見事なバッティングフォームですよね。プロ野球選手でもやっていけるんじゃないですか?」


「うーん、どうだろうね? やれそうな気もするけど男の人ばかりの中に混ざる気は無いからね。それに練習とかする時間も無いから今はパスだよ。六層は基本的に獣型の敵だよ、ボアと狐と熊がよく出るね」


 五層の中ボスを倒したことでセーフティゾーンへの扉が開き、ダンジョン協会の職員の人のカードチェックを受ける。


「お、柊さんじゃないですか、先日はありがとうございました。随分助かりましたよ」


 ミノタウロス討伐の時に出会った佐藤さんだった。


「佐藤さんも大変でしたよね。その後は別に呼び出しとか受けなかったですけど、大丈夫だったんですか?」

「状況的に柊さんに問題がある事はあり得ないと私が証言しましたので、大丈夫なはずです。ただ……」


「ただ?」

「女子高生の柊さんの実力が高すぎる事が話題にはなりました」


「あ、そうなんですね。それはあんまり嬉しく無いかも……」

「チェックはOKです。お気をつけて」


 希と二人で六層へと降りて行った。


「希、ちょっとそのままじっとしててね」

「え? なにかあるんですか?」


「いい事よ」


 私は、ステータス調整を立ち上げて、希のステータスを振り分けた。


 真田 希 16歳(女) レベル9  ランキング 2,972,864,583位


HP 900

MP  90

攻撃力  9 

防御力  9

敏捷性  9

魔攻力  9

魔防力  9

知能   9

運    9


ポイント90


スキル:無し


 希の戦闘スタイルだと今はまだ魔法は使わないし、敏捷、防御、攻撃と運だよね。


HP 2500

MP   90

攻撃力  26 

防御力  25

敏捷性  25

魔攻力   9

魔防力   9

知能    9

運    50


ポイント  0 


 これで、よっぽどのことが無い限り大丈夫なはず。


「希、OKだよ。どう? なにか変わった感じがする?」

「先輩、私どうしちゃったんだろう。なんか凄い力が湧きだして来て、体が軽く感じます」


「そう、良かったね。それが本来の今の時点での希の力なんだよ、この階層なら今なら敵はほとんど格下になるから、落ち着いて対処したらいいからね。武器がナイフだから、基本は急所をピンポイントで狙う攻撃を心がけてね。出てきた敵の急所はその都度指示を出すから、今日は希がメインで行くよ」

「なんか、行けそうな気がします! 先輩、私頑張っちゃいますよ!!」


 それから、一時間ほどの時間を希の狩りに費やした。

 複数同時出現時以外は総て希に任せたけど、上がったステータスで軽快に敵を倒していった。


「先輩、何だか私凄くないですか? てか先輩、なんで私の能力引き出したり出来るんですか?」

「内緒、でもその力は余り人に知られない様に気を付けてね。下手をすると国や怪しげな組織に狙われちゃうからね」


「気を付けますぅ怪しげな組織って何だかドラマみたいですね」

「今日はもう帰ろうか、昨日の分もまとめてアイテムを換金してから帰ろう。収入は半分ずつ分けるよ」


「私が半分も貰ったら、気が引けちゃいますよドロップは殆ど先輩なんですから」

「パーティで狩りをする以上はそれは絶対条件だよ。これ以上メンバー増やす予定は無いんだけどね」


「えぇ、でも助かります。うちは母さんのパート収入だけだから」

「そうなんだ、それなら少し頑張らないとね」


 協会の換金所に行って、買取を頼むと昨日の分と合わせて七万六千円になった。

 二人の口座にそれぞれ手数料と税金を引いて、三万四百円ずつの振り込みになり、希が大喜びしてた。


「放課後の時間で三万円とか超凄いですぅ。私一生先輩から離れませんから」

「私は結婚して幸せな家庭を築くんだから、その時までついて来たりしないでよね」


「えぇ、そんなの駄目です。私と結婚しましょう」

「出来る訳無いじゃん。却下」


 買取が終了して、ダンジョン産の食材を並べているコーナーへ行くと結構色々な物があった。


「ダンジョン産のフルーツとかあるんだねぇ。何層で取れるんだろう?」


 と希と話していると「フルーツは二十層から下の階層で取れるようになるよ。今日の新情報のお陰で今から先は徐々に値段も下がると思うから、もう少し待ってからの方が良いと思うよ」と、協会の販売員さんが親切に教えてくれた。


 鮮魚コーナーがあったので、ダンジョン産のマグロみたいな綺麗な赤身の魚を五百グラムほど買って帰った。

 百グラム辺り千五百円もしたよ。

 高いけど美味しそう。


 何を作ろうかな? 


 今日時点の心愛のランキングは、1,538,352,620位

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