第24話 ダンジョン特務隊とダンジョン協会の反応
「その情報は本当なのか!」
自衛隊が管轄する日本国内のダンジョン討伐の最前線『ダンジョン特務隊』の指令である葛城一佐は、与えられた情報の重大さに声が自然に大きくなった。
「はい、既に協会内部での検証を終えてからの情報でありますので、ほぼ
「すぐに非常招集を行い現在、横浜ダンジョンに展開する第三班及び四班の元へ伝令隊を向かわせるぞ。情報によると実際に到達した階層までの移動が可能という事だから、現在最深部三十一層へと展開している、ベースキャンプの三十層のセーフティゾーンへ、先週帰還した第一班及び二班のメンバーを送る。緊急招集を掛けろ。何分で集合可能か?」
「非番の者もおりますので、六十分を要します」
「解った。集合次第呼べ」
ダンジョン協会博多支部から世界中のダンジョン協会本部へ、一斉配信で知らされたこの情報は、ダンジョン発生以来五年間で最大の情報であることは間違いない。
一体誰がどのような経緯でこの情報を見つけ出したのか、非常に興味がそそられるが、まずは情報の正確さの確認作業が優先する。
一般向けには日本時間の明日午前九時に正確な情報として配信されるが、ダンジョン内移動方法についての画期的新情報として既に概要だけは一般に対しても案内してある。
これまで部隊の入れ替え時に、片道二週間以上を掛け移動をしていた状況が大きく改善される。
一班十二名体制で常に二班を展開する状況でそれに掛かる経費だけでも毎月二十億以上の経費を計上している現状だ。それが各国で同じように使われているので、この情報一つで恐らく世界中で必要経費の削減分だけでも一か月一兆円規模を超えるであろう。
現在、探索によるメイン獲得アイテムは、ポーション類と鉱石類が主要アイテムとなる。
銃火器は銃弾や砲弾にダンジョン産の金属を使ったコーティングを行わなければ、六層以下では効果が発揮出来ないので攻撃手段のメインはダンジョン内の宝箱から出現する直接攻撃武器が主流である。
しかし、敵モンスターが稀に使用してくる魔法攻撃が存在する以上、人類が魔法を発動できる可能性も捨てきれない。
発動条件は一体何なのだろうか? 宝箱から回収されたアイテムの中には魔法発動デバイスらしい杖状の物も存在しているが、実際に魔法の発動は現時点で確認されていない。
今回のダンジョン内移動の発見されたことに拠り、それ以外のファンタジー要素的な存在が今後発見される可能性は大幅に高まった。
私の在任中にダンジョン探索に一つの回答が欲しいな。
招集から四十五分が経過したときに連絡が入った。
「第一及び第二班全員集合いたしました」
「解った、すぐに行く」
二十四名の隊員が立ち並ぶ中、概要を説明する。
「諸君たちは既に三十一層への到達をしているメンバーだ。今回の新情報によると自分で到達した事のある階層に対しては、自由に移動が可能になるはずであり、今後のダンジョン探索に大きなアドバンテージを与えてくれるはずである。本日ただいまよりの行動は、新たな移動方法を利用し三十一層への移動、無事移動できた場合第三及び第四班員を全員招集して移動方法の伝達を行い一時帰投させる事。今回は第一班及び第二班員も全員ベースを引き上げての帰投とする。明日以降新たな探索計画を組みなおすまでは休暇となる。以上だ」
一団が敬礼をして、早速横浜へとCH47チヌーク輸送ヘリでの移動となった。
◇◆◇◆
ダンジョン協会内部では探索課の課長である『澤田太蔵』の指揮の元、各国及び日本ダンジョン協会本部への対応を行っていた。
今回の情報に対しての各国のダンジョン協会は世界中、二百に及ぶ国と地域から圧倒的な歓迎で受け入れられた。
国内での秘匿も可能であったにもかかわらず世界に同時配信を画策した澤田の英断が日本ダンジョン協会の価値を押し上げた。
必ずしも澤田を褒める言葉だけでは無かったが、これほどの情報だ。
秘匿した場合にそれが漏れ伝えられた時は世界中からバッシングを受ける事も確実に予想出来た為に、それなら中途半端な事をせずに公開して世界中から提供者に対しての報奨金を供出させる方が良い。
世界中から出された褒賞の総額は五千万ドルにも及んだ。
日本ダンジョン協会が情報提供者に対して支払いを決めた額は千二百万ドル。
「随分ピンハネしやがったな本部の狸ども」
「澤田さん、あんまり大きな声で言うと睨まれますよ?」
そう声を掛けて来たのは協会の顧問弁護士で、今回の件にも協力を仰いだ『熊谷信也』だ。
「恐らく彼女『柊心愛』は今回の情報など鼻くそ程度に感じる程の重大情報を知り得ていると思いませんか?」
「多分ですが、そうでしょうね。今回の『ダンジョンリフト』でさえ偶然見付けたりする事は不可能だと思います。恐らく鑑定ルーペよりも優れた鑑定機能を持つアイテムの所持、若しくは、あると噂されているスキルを身に付けているかもしれませんね」
「大島を彼女に専属で付けますから徐々に情報は明らかになるでしょう。こちらが焦って彼女の協力を得られない事になれば意味が無いですからね」
「果たしてもたらされる情報が彼女だけにしか出来ないのか、それとも『ダンジョンリフト』の様に等しく全員が使える物なのかで大きく対応は変わりますね」
「まぁ今はまだ大事に柊心愛を守り抜きましょう。熊谷さんもよろしくお願いしますね」
「解りました。久しぶりに楽しい案件に巡り合えましたよ」
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