第78話 下関再挑戦
希と二人で二十二層へとリフトで向かう。
「あれ? 希気付いた?」
「はい、気付きました選べますね」
最終階層は入り口とボス部屋の奥の、脱出用魔法陣の部屋を選択できた。
「出口の方に行こう」
「了解です」
魔法陣の部屋へ到着すると、ボスを倒した時に現れていた水晶と台座があった。
「希、これって一度倒すと誰でも選べるのか、最初の討伐者だけが選べるのかが、まだ解らないね」
「ですよね、でもなんだか私達だけの様な気がします」
「それは私達がこのダンジョンのマスターの様な扱いって事なのかな?」
「そうじゃないかなぁ?」
「他の人が辿り着いたら判るよね」
「ですね」
まぁ折角辿り着いたし、とりあえず、この水晶にパーティー作成を付与する能力を与えようかな。
【付与】をイメージすると、スキルを選択できるイメージが広がった。
んー、やはり魔法とかは一種類しか選べないかぁ。
それも階層の数字を超える習得レベルの魔法は選択できないんだね。
とりあえずは、パーティ作成を付与してみた。
他にも設定できるのかな? と思い、ヒールをイメージしてみた。
あ、出来るね。
でも獲得する方はどうなのかな? 私のセレクトスキルの様に選ぶんだろうか?
それとも全部かな?
でも今現在この部屋にボスは存在しない。
裏からだから出ないのかな?
「希、一度出て今度は前の扉から入って見ようよ」
「解りましたー」
一度入口に戻り、今度は二十二層の階段部分へとダンジョンリフトで向かった。
「あ、大事なこと忘れてたね。素振りしなきゃ」
「私もストレッチー」
二人で準備運動をした後で奥へと向かった。
敵を撲殺しつつ四十分程で最終ボスの部屋の前へと立つ。
「戦えるんなら、経験値稼ぎには良いんだけどねぇ」
「ですよね!」
扉を開けようと思ったが開かなかった……
「「残念」」
「先輩、ボスって二十四時間立たないと復活しないっていってなかったですか?」
「あ、そういえばそうだね。八時以降じゃないと分からないねー」
しょうがないのでロジャーたちと約束した十八時までこのフロアで狩りをする事にした。
◇◆◇◆
約束していた十八時前になると協会支部の買取所に併設してあるカフェへと向かった。
少しだけ待っているとロジャー達が現れて、その後ろから『チームシルバー』らしき一団も現れた。
恰好がやばいね。
戦争? って感じだ。
まさかその恰好でカフェに来ないよね?
周りからも遠巻きに注目を集めているし知り合いと思われたくないよぉ。
ロジャーが声を掛けて来た。
「Hey心愛、俺達に何をした?」
やっぱり気付いたか……
「鑑定させてくれた、お礼ですよ」と、他の人に聞こえない様に耳元で囁いた。
「キスしてくれるかと思ったぜ。毎日鑑定してくれ、今すぐしてくれ、ハリーアップ!」
「駄目ですよ。またそのうちね」
「心愛ちゃんありがとう、ドロップの確率も明らかに上がったわ。噂のオーブも一つ出たわよ」
「そうなんですか? いいなぁそれ後でじっくり見せて下さい」
「そうね、ここは目立つから、ちょっと会議室抑えて貰って来るわね」
さすがに『チームシルバー』はそのままカフェに来るような事は無く、会議室へと向かって行った。
会議室に入るとロジャー達に確認したら既に二十層まで到達していた。
ドロップ率が上がったから狩りが楽しくて二十二層まで辿り着かなかったんだって。
『チームシルバー』も十八層まで到達したそうだ。
君川一尉に「調べたい事が有るので明日の十六時に二十二層に集まっていただけますか?」と頼むと快く了承して貰えたよ。
ロジャー達は別に頼まなくても勝手に来るだろうしね。
杏さんに電話したら二十時半から、博多の協会会議室でミーティングを行いたいと伝えられたので、それぞれ別行動で博多に集まる事になった。
テレポの事をどう説明するかで迷ったけど今は私からは何も言わない事に決めて、希と二人で下関のマンションに戻ってシャワーを浴びてから自宅に戻った。
なんとなく察してくれた美咲さんは君川一尉と一緒に戻る事にしたみたいで、他の『チームシルバー』のメンバーは、このまま下関で宿を取るそうだ。
◇◆◇◆
「心愛ちゃん、希ちゃん、お疲れ様、ちょっとだけいいかな?」
「どうしたんですか?」
「あっち」
杏さんに促された方向を見ると『冴羽課長』が居た。
私は杏さんに小声で聞いた。
「あれ? 冴羽さんって協会辞めるとか言い出したんじゃ無かったんですか? ここに何で居るんですか?」
「なんだか計画があって是非心愛ちゃんに協力をしてほしいらしくて、提案を聞くだけ聞いて貰えないかって言われたの」
「で、聞いたんですか?」
「心愛ちゃんが一緒の時に説明したいので、今日はその話をする日程だけで構わないから、挨拶をさせてくれだって」
「ぇぇ、面倒なのは嫌ですよ?」
「でもさ、悪意がある様には感じないし話だけは聞いてあげていいんじゃないかな?」
「うん、杏さんが言うなら話だけは聞きますよ」
「こんばんは、冴羽さん」
「柊さん。ダンジョン攻略されたそうですね、素晴らしいです。今後のダンジョンを取り巻く環境は大きく変わります。勿論その中心に存在するのは柊さんだと私は思っています。今後の事を踏まえて一度お時間を取って頂けませんか?」
「んー、あのですね、私女子高生で学校もあるし、基本ダンジョンの探索も放課後しかしないんで、あまりお役に立てないと思いますよ?」
「勿論、私生活を優先で構いません。その上で出来る事を少しずつでも柊さんなら十分な成果が期待できますので」
「お話だけは一度伺いますから、水曜日祝日の午前中でもいいですか?」
「勿論、柊さんのご都合に合わせます」
「後ですね、私、敬語とか柊さんって目上の人に呼ばれるのが凄い苦手だから心愛でお願いします」
「それは……努力します」
「努力しないと無理なんだ、冴羽さん、なんかおもしろーい」
横で話を聞いてた希のツボに何故だか今の会話が嵌ったようだった。
「ちょっ希、失礼でしょ?」
「あ、気にしないで大丈夫です」
「なんだか私の思ってた冴羽さんとイメージ違いますね?」
「そうですか、いい方に違っていれば良かったですが、それでは水曜日の午前中に伺います。九時頃で構わないでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
そう言って冴羽さんは帰って行った。
「心愛ちゃん、もういい時間になっちゃったからそろそろ、博多ダンジョンの方に移動して貰っても良いかな?」
「はーい、何だか忙しいですよね」
「ごめんね、無理のない範囲で協力してくれたらいいからね?」
「先輩、私は難しい話聞いても良く解んないから帰りますぅ。また明日の朝来ますね!」
「希、お疲れ」
ちょっとだけ希の立ち位置が羨ましいと思ったよ。
今日の順位は!
真田 希 16歳(女) レベル42 ランキング 24,184,365位
柊 心愛 17歳(女) レベル46 ランキング 3,359,912位 ランクブルー
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