第204話 トリノダンジョン攻略
早速、トリノダンジョンの攻略を始めたけど、すでにグレッグと美咲さん達は十五層までは行ってきてるらしいので、最速通路の案内を任せて私と希の絨毯爆撃で順調に進んでいった。
初日は現地時間の十七時までの間に十五層まで到達して攻略を終えた。
だって私たちはそれより前の八時間は普通に学校に行ってきたんだし、結構疲れたからね。
冴羽社長はレベル20に到達して、杏さんもレベル25まで上がっていた。
初日の収穫は、流石に北イタリアのダンジョンだけあってダンジョントリュフの魔物が強烈な香りを放ってきて社長が眠っちゃったり、後は葡萄の木のトレントがまん丸な葡萄の実を飛ばしてきて、日向ちゃんがミスリルトレイで防いだけど、葡萄の果汁が飛び散って社長と杏さんがぶどうジュース色に染まったりしてたよ。
杏さんは白っぽい服を着てたから結構悲惨だったけど、東郷さんがそんな杏さんの姿を見て興奮してたもんだから、女性陣にゴミを見るような視線で見られてた。
それでも、社長と杏さん以外は流石に全員カラーズなだけあって、飛び散る葡萄果汁もちゃんと避けていた。
大量の白トリュフをドロップでゲットしてちょっと幸せだよ。
翌日は、朝の六時から開始してお昼の十二時に二十三層に到達したところで、アンリさん達と合流した。
「お嬢、早かったな。次の二十四層が最終層だ」
「アンリさんお疲れ様です。あれ? 今回は男性陣だけなんですか?」
「ああ、諜報班は色々他の仕事もあるからな。Dランク程度の攻略ではそっちを優先させている。お嬢の祖母ちゃんの所も誰もいない状況には出来ないしな」
「そうだったんですね。グレッグがアンリさん達に同行してないからおかしいと思ったんだよね」
「心愛、俺は別にそんなやましい気持ちで来てるわけじゃないからな」
「へーそうなんですか? ちょっと気持ち悪いけど、杏さんへの感情を隠さない東郷さんの方がいさぎ良いかも?」
そう言ったら、二人とも少し落ち込んでた。
十六層から二十三層までの間は、これといった特徴のないダンジョンだったけど、特徴が無い分単純に敵の強さが上がるので、実力が伴わないとこのダンジョンの攻略は大変なのかな?
アヴェンタドールって名前の雄牛がメッチャ強くて、カメラを構えて撮影してた東郷さんが吹き飛ばされてたよ。
ちゃんとすぐに回復してあげたけどね。
日向ちゃんはアクションカメラを回しっぱなしで、普通にトレイで捌いていた。
でも、ドロップが凄い綺麗な赤身のお肉を落としてくれたから、帰ったらこのお肉でお料理作ろっと。
白トリュフと合わせてローストしたら絶対美味しそうだよね。
日本のダンジョンだと、霜降り肉が出るけどアメリカやイタリアだと赤身のお肉なのは、やっぱり現地の人の好みが反映されるのかな?
そして迎えた二十四層。
一番奥にもう見慣れてきた感のある大きな扉が現れた。
「お嬢、なんて書いてある?」
「えーとですね『暴れ牛と跳ね馬の戦いを凌駕する者、最速の証を手に入れる』ですね」
「心愛ちゃんって車は詳しい?」
「えっ? 杏さん、馬と牛に車関係あるんですか?」
「うーん。関係ありそうな気がしただけだよ」
私には良くわかんなかったけど、他の人はなんとなくわかってたっぽい。
「グレッグ、なんか想像ついてるの?」
「あー、レースっぽい何かがあるような気がするな」
「レース? よくわかんないな。みんなすぐにエスケープを発動できるように準備してから入りましょう。危険と思ったら迷わず使ってくださいね」
「了解」
全員で扉の中に入ると、中は四百メートルほどの直線道路の様になっていた。
私たちが居るのは、その道路のちょうど中間点辺りだ。
その中間点に縄が一本上から垂れ下がっていて、縄の先にはプッシュボタンの様なものが設置してある。
既視感あるよね……
きっと千葉ダンジョンと同じようなパターンだろうと思った。
そう思っていると、目の前にシグナルランプが現れると同時に、道路の両端に大きな馬と牛の魔物が現れた。
シグナルが赤点灯になると、全員が金縛りにあったように動けなくなった。
黄点灯に変わり、青点灯に変わると同時に金縛りは解けたけど、馬と牛が凄い勢いで真ん中に向かって走り始めた……
どうなるのかちょっと見てみたくなって、クリスマスホーリーのメンバーと私たち全員を結界で覆って様子をみた。
それから五秒弱の時間で道路のほぼ中央付近、私たちの目の前で牛さんとお馬さんが激しく衝突した。
その衝撃波は凄かったけど、とりあえず結界で守れた。
でも、部屋の方がもたなかった。
部屋の内部が崩壊を始めちゃった。
危険と思ったので、エスケープを使う指示を出した。
全員一層へ無事に戻ったよ。
「心愛、大丈夫か? 攻略のポイントはわかったのか?」
「えーと、はい、大丈夫です。攻略法はわかりました。シグナルが青になってから牛と馬がぶつかるまでの間に、ぶら下がってた縄を登って上にあるボタンを押すのが正しい攻略法だと思います」
「あの縄って二十メートルはあったよな? 五秒くらいであれを登るってできるのか?」
「グレッグが身体強化全開で登ればギリギリ間に合うかも?」
「流石に俺でも五秒は自信が無いな」
「希はどう?」
「桃ちゃんで飛んでも五秒は難しいかな?」
「そうかもね、テレポも千里眼で確認してから発動のラグがあるからブルーシグナルになってからの発動しか出来ないとしたら、間に合わないと思う」
「じゃぁ、どうする?」
アンリさんがそう聞いてきたけど、答えは結構簡単かも?
「この中でパワーが一番強いのは、やっぱりグレッグかな?」
「そうだと思うが、戦うわけじゃないならSAIAで極振りすればパワーはどんだけでも強く出来るだろ?」
「あー、そうだね。じゃぁとりあえずグレッグのステータスをパワーに極ぶりするね。それで、シグナルが青になったと同時に、希をプッシュボタンに向けて放り投げて。希はボタンを押すのに集中してね」
「なるほどな、それなら簡単そうだ」
「了解でぇす」
「私は、失敗した時にすぐ結界を張れるように待機してるからね」
作戦も決まったので、再び全員で最終層に戻った。
さっきと同じようにレッドシグナルの点灯と同時に身動きが取れなくなる。
イエローシグナルからブルーシグナルに変わった瞬間に、グレッグが希を思いっきり放り投げた。
希が押しボタンの横を通りすぎる瞬間に押しボタンを足で蹴った。
すると、牛と馬の走ってくる道路がいきなり陥没して、牛と馬は深い穴に落ちて行った。
それと同時に押しボタンのあった場所に水晶と台座が現れた。
希は、グレッグに投げられた勢いが強すぎて結構上まで飛んで行ったけど、桃ちゃんを呼んで無事に下りてきた。
「これでクリアみたいですね。みんなでスキル獲得してしまいましょう。アンリさん? 宝箱開けるまでちゃんと待ってくださいよ」
「ああ、同じ間違いは繰り返さん」
グレッグが縄を登って台座の水晶を触った。
『【敏捷強化】スキルを取得しました』
「お、敏捷強化だったぞこれは嬉しいな」
私がスキルを獲得するためにダンジョンコアに触った時にはいつも通りに『NO530ダンジョンの通信環境が解放されました』というアナウンスも流れたよ。
全員がスキルを獲得して、道路を渡った場所にある扉を開けると宝箱が三個並んでいた。
「今日は希でいいよね?」
そう聞くと全員頷いたので、希が宝箱を開ける。
「ど真ん中ですぅ」
そう言って開け放つとチャイルドシートが前後に列になったような椅子が出てきた。
「先輩、なんですかこれ?」
早速心眼で確認する。
「希、結構当たりかも【ドラゴンシート】だって。桃ちゃんに付けたら二人乗りできるみたいだよ。桃ちゃんに負担かけずに騎乗できるんだって」
「やったぁ、日向ちゃんも乗れるね」
「ええ、それ嬉しいかも」
宝箱の中身を確認すると、アンリさんがギフトを発動してトリノダンジョンは消滅した。
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