第125話 いろんな問題点
杏さんと一緒にダンジョン協会に向かうと冴羽社長と合流した。
「冴羽社長、お帰りなさい」
「ああ、心愛ちゃんただいま。心愛ちゃんに貰った能力のおかげで海外でも普通に活動が出来る事を改めて実感してきたよ。今回のD-CANとしての売り上げは、まず会社で攻略を請け負った金沢ダンジョンの攻略報酬として、二十億円だ」
「えっ? そんな大金がもらえたんですか」
「特務隊やDSFが三千万ドル分の弾薬を消費して攻略出来てなかったんだから、これでも格安だと思うよ。次が、リミットブレイク一万個とエスケープ三十個、パーティ作成三十個の販売、これが四百四十九万ドル日本円で六億七千万円ほどだ。最後がロジャー大尉、グレッグ大尉、君川一尉、冬月二尉に用意した無制限のスキルオーブだがそれぞれ一人二百万ドルで決まった。総額で三十八億六千万円ほどだな」
「なんだかめちゃくちゃな金額ですね」
「心愛ちゃんの協力がなかった場合の被害総額を考えたら、ずいぶん割安だと思うよ」
「でも、冴羽社長がいなかったらそんなお金にするとか考えつかなかったんで、ありがとうございます」
「まあこれが俺の仕事だからな。杏から少し聞いたけど、天津の攻略にも関係してきたんだろ? あまり危険な事に一人で首を突っ込まないでほしいな」
「あ、アンリさんと同じこと言ってる」
「そう言えばその件もあった。ザ・シーカーは自分の組織を作っているのか?」
「そう言ってましたね」
「そうか、心愛ちゃんはザ・シーカーに連絡はとれるのかい?」
「はい」
「一度連絡を取ってもらえないかな、話をしてみたいんだ」
「見た目ヤバイですけど大丈夫ですか?」
「き、きっと大丈夫だ」
そこまでの話をすると、ダンジョン協会のメンバーを交えての会談となった。
澤田理事が話し始める。
「心愛ちゃん。今回の協力に感謝します。JDAとして世界のダンジョン協会に対してイニシアティブを取れた事は、これから先のダンジョン情勢を考えると非常に有意義であったと思う」
「お役に立てたなら良かったです」
挨拶が終わると轟常務理事が話を引き継いだ。
「心愛ちゃんには今回の一連の騒動の中で問題になった事の協力を仰ぎたいと思ってね、勿論直接の要請はD-CANに対して行うんだけど出来る事と出来ない事の確認をさせてもらおうと思ってるんだけどいいかな?」
「はい、私自身も言える事と言えない事はありますから、なんでも引き受けます! なんて事は言えませんが、協力できる部分があれば対応させていただこうと思います」
「了解です。まず最初は獲得したスキルを使えなくする手段って言うのは存在するのですか?」
それを聞いた時にまだ取得していない【スキル消去】のスキルの事を思い出した。
「えっと、ある事はあるんですけど今はまだできません。それってどんな状況で必要なんですか?」
「方法としては存在するんですね。今回スキルオーブで提供された【リミットブレイク】のスキルを犯罪者やテロ組織が入手する可能性を考えれば金沢ダンジョンで無制限に取得されると非常に厳しい状況になりますから……それこそ現状の警察組織などでは対応する事が難しいですから」
「あー……確かにそうですね。使えるようになったら冴羽社長から連絡を差し上げるということでいいですか?」
「はい、それで構いません。次の問題点はダンジョンの消失の問題です。実際にガリッサで起こったように、ゴールドランカーがギフトによってダンジョンコアを破壊すればダンジョンは消失することが確認されました。日本においてもエネルギー政策やポーションでの医療などダンジョン資源の活用は今後の国策として大きな割合を占めます。それを消失させられ、国外に奪われたりすれば根本的な政策が成り立たないので、防止策は必要です。なにかいい考えはありますか?」
「それは問題が大きすぎて私には判断が出来ませんが、例えば、君川さんとかの絶対国を裏切りそうにない人にダンジョンマスターになってもらうとかはダメなんですか?」
「あえて消失させるという事ですか?」
「はい、例えば君川さんなら今でレベル65を超えてますから一度金沢とかを攻略してもらって、再び設置すれば新たなダンジョン自体も六十五層より深くなります。それなら当面誰もたどり着けないしリミットブレイクなんかの問題も先送りできますよね?」
「なるほど、一つの考え方としてはありですが、もし、ダンジョンマスターの君川一尉が不慮の事故に見舞われて死亡したりすればどうなるんでしょうか?」
「それは……考えてもみませんでした。想像もつかないですね」
「そうですか……特務隊の葛城一佐とも協議してみます。あともう一点なんですが、金沢、天津、ガリッサの三か所では対応が終わったとはいえ魔物が大量に溢れだしています。この対応策で何かヒントになるような意見は無いですか?」
「そうですね……実際、天津とガリッサに関しては三日以上溢れ続けて、どれだけの魔物が流出したのか見当がつきませんから、リミットブレイクの所持者に頑張ってもらうしか手段は無いと思います。でも、金沢なら比較的範囲が狭いので結界で範囲を覆って結界の外には出さないという手段も取れます」
「そ、それはもしかして、心愛ちゃんがその結界を用意できるってことかな?」
「そうですね、大丈夫です」
「素晴らしいです。至急、東京に戻って政府とJDAの理事会にかけて対応を急ごうと思います」
私の提案が重大だったみたいで、轟さんと澤田さんが慌ただしく退室していった。
「心愛ちゃん、またできる事が増えちゃったんだね」
「はい、お料理頑張ってますから!」
「えーとね、兄貴たちは慌ただしく出て行ったけど、葛城一佐からも心愛ちゃんにお礼を伝えたいから一度金沢に来てもらえるか? って伝言を預かってます」
「お礼なんていいのに……」
「ほら、美咲や樹里ちゃんたちが博多に来たいらしいし、迎えに来てほしいのもあるんじゃないかな」
「えー美咲さんもですか?」
「なんだか今回ガリッサで樹里ちゃんと美穂ちゃんに実力で負けてる気がするって騒いでたから、何とか理由をつけて心愛ちゃんの護衛に復帰したいみたいだね」
「ええー……」
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