第31話 親不孝通りでお食事

『ダンジョンリフト』で一層に戻りダンジョン協会へと顔を出した。

 まだ杏さんが買取カウンターで勤務してたので、今日の買取をお願いする事にした。


「杏さん、買取お願いします」

「あらもう戻ったの? 早かったわねお疲れ様です。量はどれくらいあるのかな?」


「五十個くらいですね」

「あの短時間でそんなに出るんだね、解ったわカラーズの買取ルームに移動しようね」


 杏さんと三人で連れ立って移動した。

 カラーズの部屋での買取査定を受けるときは、鑑定ルーペの優先使用権があるので早くして貰えるんだって。


 一応協会のAランクはカラーズと同等の権利を有するって内規で決まってるらしくて問題なく使用許可は下りたようだった。

 明日からはSランク認定で買取カウンターに申し込みをする事すら必要無くなるんだけどね。


「私も心愛ちゃんたちの買取が終ったら、そのまま勤務終了だけど、ご飯行かない?」

「あ、はい、ちょっと相談したい事も有ったから助かります」


「何だかね、明日から東京のダンジョン協会本部の次長だった人が、こっちに転勤してくるらしくて、こっちの協会内では落ち着きが無いのよね」

「それって杏さん達にも関係あるんですか?」


「私は今日でもう一般業務は基本しなくてよくなるから、あまり関係無いけど係長たちは結構気になってるみたいね」

「そうなんですねー。今の時期に東京本部から博多に来るなんて何か失敗でもしちゃったのかな?」


「表向きはそう言う事みたいね。でも私は本当は違うと思ってるの。もしかしたら心愛ちゃんにも関係してるかもね?」

「えーそんなの困りますー、面倒なのは勘弁してくださいよ」


「その為に私が居るんだから任せなさい、大丈夫だよ。心愛ちゃんは私が守るからね! 大人の世界のしがらみからは」

「杏さん、よろしくお願いします」


 ◇◆◇◆ 


「結局、今日も宝箱出たって事なの?」

「はい、それも二個も出たんですよぉ」

「希、大きな声で言わないの、一個は開けずに消えちゃったんで中身は一つ分だけですけどね」


「え? 何故開けなかったの?」

「杏さん、ちょっと耳貸してください」


 そう言って杏さんに顔を近づけた。

 ヤッパリいい匂いするよ。


『この部屋って盗聴の心配とか絶対無いって断言できますか?』

『それは約束できないわね』


『じゃぁこの話の続きは外に出てからでお願いします』

『解ったわ、買取だけ急いで終わらせましょう』


「鑑定終了です。今日は十二万三千円ですね」

「いつも通り半分ずつ振り込みでお願いします」


「先輩、私ポーションⅢとか、武器貰ってるからいいですよぉ」

「駄目よ、それはそれ、これはこれだから」


「心愛ちゃん、ポーションⅢも出たの? 本当に凄いわね」

「たまたまですよ」


「うーん、解ったわ。取り敢えずご飯食べに行こう。振り込みは税金と手数料を引いて一人四万九千二百円ね」


 ダンジョン協会を出ると、杏さんのポルシェで出かけた。


「食べたいものとかあるかな?」

「杏さん、ちょっと込み入ったお話とかしたいから、個室で音が漏れにくい所が良いので、カラオケボックスのメニューが一杯あるとことかどうですか?」


「全然構わないよ、じゃぁ親不孝通りに向かおうか」

「OKです」


「私たちのお母さん世代の人は、みんな青春時代は親不孝通りに集まって騒いでたって言っててね、なんかこの場所に憧れがあるんだよね」

「そうなんですね、今は私たち世代ではあんまり来る人居ないですよね」


「一日五千人集まるディスコとか、カラオケボックスが出来る前に流行したステージに立って歌うようなカラオケパブとかが凄く流行ってたらしいよ」

「カラオケパブってどんなのだろう? なんだか聞いただけだとオジサンとホステスさんが一緒に歌を歌ってるようなスナックみたいな店を想像しちゃいますけど」


「私も行った事は無いけど、きっとお母さんとかなら知ってるんじゃない? 聞いてみたらいいよ」

「今度、聞いてみますー」


 カラオケボックスに入った私たちは、適当にオーダーを済ませると話を始めた。


「さっきは何を言おうと思ったの?」

「杏さん、私、杏さんを信用して私の秘密を話します。聞いて貰っても大丈夫ですか? 今から話す事は希と杏さん以外は誰も知らない話ですから、もし話が漏れ聞こえたりしたら、私は姿を消すかもしれません。ていうか姿消さなくても、きっと国とかの管理下に置かれちゃうだけの存在になるでしょうから……」


「心愛ちゃん、大丈夫だよ。私は何があっても味方しちゃうよ。だって心愛ちゃんと一緒に居たら、一生退屈しそうにないからね」

「私ですね、鑑定使えるんです」


「やっぱりそうなんだ。きっとそれって鑑定ルーペより高機能なんだよね?」

「はい、人も見れるし、魔物も見れるし、ダンジョンも宝箱も鑑定できます」


「それで『ダンジョンリフト』も見つけちゃった訳なんだね」

「偶然の要素も大きかったんですけど」


「人も見れるって、どうなの? やっぱり人にレベルとかステータスは?」

「存在します」


「そうなんだね、それは凄すぎて、確かに心愛ちゃんが言ってたように国に幽閉される可能性まであるわね」

「やっぱりそうですか?」


「うん、無いとは言い切れないわ」


 そこまで話した所で、注文したものが大量に届いたので、まずは食事を楽しむことにした。

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