第52話 お魚とドラ猫

 今回はひたすら森の奥を目指して進んだ。

 前回は森の奥に来るまでに時間が掛り、帰りの採取が疎かになった反省である。

 早い話し、シャーラがシルバーフィッシュとレインボーシュリンプで頭がルンルン♪ になっていたせいもある。

 

 湖の獲物と周辺を捜索して美味しい物を探すのが、今回のメインテーマである。

 夜のキャンプハウス内では、薬草香木図鑑,薬草全図,香辛料図鑑を見ているが、実物が無いので頭に入らない。

 王立図書館での騒ぎが無ければ、動物や野獣の図鑑か一覧が見られたのにつくづく残念。

 

 奥に向かって20日も過ぎた頃に狐に跡をつけられた、どうも俺達の匂いを追って来ている様なのだ。

 シャーラと同時くらいに気がつき、俺の気配察知も中々のものだと自画自賛したいが、先ずは避難だ。

 砦を造り様子を伺うと、純白のおきつね様だ。

 

 俺の肩口くらいの体高って事は約140センチ胴体が3.5~4メートルは有るな。

 頭と尻尾を入れたら10メートルは越えそうだが、尻尾のフサフサモフモフ感が何とも。

 

 「シャーラ、知ってる?」

 

 「白いのは初めて見ました、どうします」

 

 覗き穴から見ると頻りに砦の周囲を嗅ぎ回っている、あれっ・・・根本を掘り始めたぞヤバイ。

 砦の根本に刺を生やす。

 

 〈ヒャン〉って聞こえておきつね様頻りに前足で鼻を擦っている、今のうちに砦の根本全体に刺を生やしておく。

 シャーラと二人なので少し大きめの砦を作っている、地面を固めて座り込みお茶にする。

 今回は討伐はしないと決めているし、元々逃げられないときでないと反撃をしないので籠城だ。

 

 「ほうって置くに限る。討伐しても又オークションになったら金貨が増えるぞ」

 

 俺の言葉に、嫌そうな顔で黙り込んだシャーラ。

 綺麗なモフモフの尻尾は魅力的だが、襟巻きには大き過ぎるしな。

 そんな事を考えていたらおきつね様、すぐ側で丸くなって寝はじめたたよ。

 面倒な奴だね、砦の上を見て周囲の枝振りの良い木を探す。

 

 「シャーラあの木の枝に跳ぶぞ、絶対に声を出すなよ」

 

 頷くシャーラの手を取り、枝の上に立つイメージでジャンプ。

 〈ヒッ〉って小さな悲鳴を漏らしたが、おきつね様は耳をピクピクしただけで寝ている。

 砦と刺を崩れる寸前の砂に変え、次の枝にジャンプ3度ジャンプして地上に下りる。

 

 「はぁ~転移魔法って便利ですよねぇ。私はどんな魔法を授かるのかしら」

 

 「神様次第だね。望んで得られるものでもなさそうだし、てか欲しい魔法をお願いすれば貰えるのかしら」

 

 「私、神様に土魔法と転移魔法に治癒魔法お願いしてみる。土魔法ってとっても便利なんだし転移が有れば森では無敵だわ」

 

 「治癒は」

 

 「フィエーン様みたいに使えたらいいなって、カイト様と居て怪我をしたり病気になったら治してあげます」

 

 俺より大きくなった、シャーラの頭をなでなでして出発だ。

 何度かフォレストウルフやオレンジスネイク等に出くわしたが、砦に篭ってやり過ごしたりジャンプして難を逃れた。

 

 一度シャーラの言う、グルーサモンキーに襲われた。

 気配も無く頭上から襲ってきたが、間一髪でシャーラと二人砦に篭った。

 覗き穴をから観察して見るとシャーラの言ったとおり、樹上地上を問わず素早い身のこなしで面倒そう。

 体躯も俺と変わらないがマッチョ体型で、俺なんか掴まれて振り回されて一巻の終わりだ。

 

 こいつが又しつこい、50~60匹の群れが交代で襲って来る。

 ジャンプして逃げても、何処から見ているのか暫くすると群れが現れる。

 

 「確かに厄介な奴等だね。シャーラが嫌うのも頷けるよ」

 

 「どうします暫く此処でキャンプして諦めるのを待ちますか」

 

 「いや、奴等を潰す。追い回されるのは気に入らない。俺達を襲った事を後悔させてやる」

 

 此処でなら、秘技を使っても誰にも見られる心配がない。

 遠慮せずに遣らせて貰うぞ、猿共め。

 先ず近くの奴等の手足を埋めて固定する、殺さずに騒いで仲間が近寄って来るのを待つ。

 手や足の一本だけ埋めて固定しただけだから命の危険はない。

 然しビックリして必死になって騒ぐから、好奇心から仲間が集まってきている。

 

 次に集まっている猿をランダムに、両手両足を土魔法で固定し転がしていく。

 流石におかしいと気づいた猿が離れていくがストーンアローで仕留める。

 もう大恐慌をおこし、逃げ惑う猿を砦の中から秘技を使ってのストーンアローで撃ち殺す。

 敵の位置が判らないだろろな、いきなりストーンアローが現れ避ける間も無く当たるのだから。

 半数以上を殺して砦から出る、後は手足を埋めた奴とか両手足を固定されて逃げられない奴を始末して終わり。

 

 「シャーラ、魔石だけでも取っておくか」

 

 嫌そうな顔で首を横に振るシャーラを見て苦笑い。

 俺もいらないので捨て置く事にする。

 こんな森の奥なら野獣が片付けてくれるし、人里から遠いので迷惑も掛からない。

 

 シャーラの方向感覚恐るべし、前回とほぼ同じ場所に着いた。

 今日は湖到着を祝い、キャンプハウスでアーマーバッファローの焼肉パーティーだ。

 シャーラは目の前にシルバーフィッシュがちらついて膨れっ面だが、明日からお魚三昧だと宥めて今日はお肉!

 

 快晴の朝いそいそと二人で以前お魚を追い込んだ場所に向かう。

 少し地形が変わっているが、此処をキャンプ地と定めるとシャーラに向かって宣言、気分の問題ね。

 追い込み漁の最中に邪魔されない様、最後の追い込み場所には頑丈な柵を造る。

 ゴールデンベアやウォータードラゴンでも通さないぞ、ふん!

 

 追い込みの柵全てが完成したので、シャーラがやる気満々で長い棒を持っているが駄目!

 ウォータードラゴンが居るとは知らなかったので、川の中でドタバタ魚を追い込んだけど今回は無し。

 

 シャーラは円形の最初の追い込み場所にて見学、俺は上流から石を打ち上げ派手な音を立てて魚を追い回す。

 〈ドッボーン〉〈ドッボーン〉連続して水面に石が落ち、驚いた魚が右往左往しながら円形の柵の中に入る。

 柵の上に立つシャーラ大喜び、騒ぐと落ちるぞと言おうとしたが遅かった様でバランスを崩して落下。

 ひしめき合うシルバーフィッシュの中に落ちたが、立ち上がった時にはシルバーフィッシュを抱えてニッコリしている。

 

 お魚抱えたドラ猫かお前は、って突っ込みはやめておく。

 最後の追い込み場所の柵を開け、水面を叩いて追い込むがシャーラは今年もはっちゃけている。

 再び頑丈な柵を閉め、ゴールデンベアでもウォータードラゴンでも此処までは来れないだろうからゆっくり回収だ。

 

 今回はシャーラの分だが1匹を4日で食べると計算して少し多めの21匹入り5箱を確保。

 侯爵様達4人分を同じく5箱に俺の分42匹2箱と、予備(シャーラの分)1箱の13箱を収納に入れて今日の仕事は終わった。

 

 因みに柵の外ではブラックベアにレッドフォックス,ウォータードラゴンがおこぼれを狙って大騒動になっていた。

 シャーラと二人満足してキャンプハウスにジャンプ、お魚パーティーの美味しい夜を過ごす。

 

 大満足の夜が明け、今日はレインボーシュリンプを捕るぞと意気込んで澱みに向かう。

 澱みが無くなっていました。

 魚を捕った場所も多少地形が変わっていたが、上流側は変わり過ぎ。

 レインボーシュリンプを求めて彷徨う事になるとは、幸い別の場所に澱みを見つけ試しに銛を打ち込むと、取れましたレインボーシュリンプ。

 澱みの近くにキャンプハウスを出し、今夜はお試しで取れたレインボーシュリンプを二人で堪能した。

 

 夜なべをして作った網を広げ、長い棒を十字に組み網の四隅を留める、所謂四つ手網だ。

 若干・・・少々歪だが、一辺3メートルの四つ手網の中心に棒を取り付けて括り澱みに沈める。

 重すぎる、シャーラと二人掛かりでも上がらない。

 

 「シャーラ少し逃がすぞ、これじゃレインボーシュリンプに引きずり込まれる」

 

 網を上げるのを止めて暫く待ち再び網を上げる、15匹捕れたがこれでも結構重かった。

 引き上げた網を斜めにしてエビを落とし、暴れるエビの頭を叩いて殺し箱に入れていく。

 1箱50匹程度入れては、せっせと収納に仕舞う。

 最初の2箱3箱は嬉々として箱詰していたが、無言でエビの頭を叩き箱に放り込んでいく単純作業になって10箱で止めた。

 概算500匹程捕れたので、もういいやとなったのが本音だ。

 

 俺達は200匹も有れば十分だから300匹は侯爵様に差し上げる事にした。

 何故かシャーラがもう2箱作るので、何故だと尋ねるとフィ様の分だと言って詰めていた。

 フィ、懐かれてるねー。

 

 他にも湖の周辺で美味しい物は無いかと探して3日、二枚貝や田螺の大きいのを見つけたが捕る気にならず放置した。

 森も実りの季節を迎えているので、果実の収穫をしながらエグドラの街に向かう事にした。

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