第10話 魔力高と魔力量

 戸惑う二人を無視して続ける。

 

 「魔力高に対して、俺は魔力量と考えています。お二人は3週間魔力操作を続けて、魔力切れを何度も経験していると思います。魔力が増えたと思いませんか、魔法を使える回数が増えたと思いませんか」

 

 顔を見合わせて考え込み頷く二人、兄弟だよねぇ。

 

 「俺の考えでは魔力高は魔力の質です。魔力量とは、文字通り魔法を行使するための魔力の量だと思います。私はストーンランスの練習では、20、30、40、50mの的を撃っています。40mまでなら、手前の的も含めて同じ威力の有効弾が撃てます。しかし、50mになると威力は半減し命中率も半減します。60mでは論外です。多分お二人は、70m迄なら同じ威力の魔法が打てると思います、弾数は別にしてね。弾数つまり魔法を撃つ回数は、魔力量によって決まると思います。魔力高100や120で魔法が使える様になっても、そこまで数を撃てない人もいると思います。魔力高120の人が最大魔法を撃つには、魔力高40の3倍の魔力量を必要とする、と推測しています。お二人も人に見られない場所を選んで、威力と距離を計ってみる事をお勧めします。推論は間違っていないと思いますよ」

 

 「そんな事は考えた事もなかった。創造神様から授かったものが全てだと」

 「カイトはそれを確かめたの?」

 

 「今もやっていますよ。人が100m撃てるのに、自分は40mしか届かない。どう対抗するかと考えた結果です。俺は空間収納を授かっていますが、魔力量の増大と共に収納量は少しずつですが増えてます。転移魔法も多少は使える様になる筈とだと、希望を持っています。不遜な考えですが、魔法を授けた創造神様は、我々を試しているのじゃないかな。口外禁止を言っておいて何ですが、他では口にしない事をお勧めします。教会に知られたら神を蔑ろにすると・・・」

 

 ヒャルダさん、ソファーに背を預け天井を仰いでぼやいている。

 

 「ついて行けんわ」

 

 ボソリとしたその声を聞き、フィエーンさんも脱力した様にソファーに身を預ける。

 

 「とんでもない人に魔法を習ったわね」

 

 * * * * * * *

 

 ハマワール子爵邸を辞去する時に、子爵様が今後個人的に指名依頼を頼む事が在るので、街に居る時はホテルに居てくれと頼まれた。

 その際一枚の名刺大のカードを渡されたが、ハマワール子爵様発行の身分証で領内フリーパスだそうだ。

 子爵様に用事があれば、カードを示して役人や代官に頼めば無条件で連絡してくれると言われた。

 それと他領に行けば、ハマワール子爵家発行の身分証として通行証になるので何かと便利だそうだ。


 カードに血を一滴落とすと、俺の顔が点描で浮かび下に名前が浮かんでいる。

 ヒャルダさんとフィエーンさんの二人からは、金貨40枚が入った革袋を渡されて、これからも宜しく師匠と言われて頬が引き攣る。

 

 「未だまだ魔法の弟子として、伺いたい事や相談も在ります。居場所が解っていれば安心です」

 「ホントそれ。魔法以外の非常識な事も色々教わりたいし、この街に居る時にはホテルへ尋ねて行くよ」

 

 「食料や香辛料を仕入れたら街を出ますが、この街に戻ればホテルに居ることにします」

 

 子爵家の馬車で送られてエグドラホテルに着く。

 ホテルは裕福な商人達が泊まるホテルの様で、与えられた部屋は角部屋の二間続きだ。

 支配人は、子爵様直々の手配で部屋の主になる子供の俺に対して、丁寧だった。

 

 手荷物は無いので、部屋を確認した後は市場で買い出しだ。

 金貨ばかりが多くて使い勝手が悪いので、商業ギルドに出向き両替を依頼する。

 手数料は1%で高いのか安いのか判らないが、市場で金貨は使い勝手が悪い。

 

 塩、砂糖、胡椒と唐辛子に似た黄色く辛い粉を買ったが、調味料は高く、色々買っても使いこなせないので基本の物だけを買う。

 次にお茶と茶器を探すが市場には無く、店舗を構えた所にしか売ってないらしい。

 野草を乾燥させたハーブティーは有るが、余り好みでは無い。

 どうも子爵様の所で舌が肥えてしまった様だ。

 備蓄食料は味見をしながら買い、以前買って気に入っている店の物は味見をせずに買い込む。

 

 どうも周囲から浮いてると思ったら、子爵様に作って貰った服が上等過ぎる。

 市場で買い物する身分の者には見えない様だ。

 見知った露店のおじさんおばさん達から、口々に立派になったと言われて気がついた。

 慌ててホテルに戻り、以前の冒険者の姿に戻ってやれやれである。

 

 少し遅い昼食をホテルで済ませたが、支払いは不要といわれる。

 支配人から、ホテルでの費用は全て子爵様が毎月一括で支払う事になっていると言われた。

 俺が居ても居なくても今の部屋を押さえて在ると、にこやかに言われてしまった。

 貴族って、太っ腹だよねぇ。

 

 金貨が330枚有るので、この際魔道具やベッド用マット等も買っておく事に決めた。

 最初に冒険者御用達の店に行きマットを見たが、細いし厚みが無くてがっかり、草のマットの方がましだ。

 

 「兄さん、ブラックウルフ20頭を一人で仕留めたんだってね。良い腕をしているねぇ」

 

 「えっ、何故それを」

 

 「フィエーンお嬢様を迎えに行った、冒険者達が噂していたよ」

 

 恥ずかしくなって店を飛び出したが、誰だ人の事をぺらぺら喋っている奴は。

 魔道具店と冒険者御用達以外の店を紹介して貰おうと、商業ギルドに行く。

 魔道具店を紹介してくれと頼むと、頭の天辺から足の先までジロジロ見て鼻で笑われて「君には無理だよ」と吐き捨てる様に言って横を向いた。

 

 仕方がない、冒険者ギルドのヤーハンさんに聞くかとトボトボと引き返していたが、阿呆らしくなりホテルに戻って寝た。

 

 翌朝、遅い朝食を済ませて冒険者ギルドに向かおうと思ったが、思いついて支配人に尋ねて正解♪

 教えて貰ったホーエン商会と看板の掛かった店に行き、店内に入ろうとすると目の前に立ち塞がるがたいの良い店員。

 

 「何の御用ですかな、君の様な者の来る所では無いよ。店を間違えている様だから帰りなさい」

 

 〈薄汚い小僧を店に入れるな〉奥から叱責の声が聞こえる。

 溜息しか出ない。

 冒険者用の服装は不味かったと気付いたが、時既に遅しである。

 諦めて店を出て冒険者ギルドに向かう。

 

 「ヤーハンさん、冒険者御用達の店よりマシな、冒険者用の商品を扱っている店を教えて下さい」

 

 「おーどうしたカイト、しっかり稼いだから足を洗ったと思っていたぞ」

 

 「薬草採取は続けますよ。それで冒険者が使う魔道具とかマットの良い物が欲しいんですよ」

 

 「ん、魔道具なら商業ギルドで聞けば良い店を教えて呉れるぞ」

 

 「駄目です。鼻で笑われて『君には無理だよ』と言われておしまい。ホテルで教えてもらって行った店は、入り口で目の前に立ち塞がれて、来るところを間違えてるから帰れって言われたよ。所で、ポーションってギルドにも有るの?」

 

 「ギルドのは初級ポーションで、軽い傷くらいにしか効かないぞ。薬師ギルドに行けば各種取り揃えているが、中級でもそれなりに高いな」

 

 礼を言ってホテルに戻り、子爵様が用意して呉れた服に着替えて薬師ギルドに向かった。

 薬師ギルドでポーションが欲しいと告げる。

 カウンター越しに椅子を勧められて、どの様なポーションが必要か聞かれた。

 

 「初級ポーションは知ってます。後どの様なポーションが有るのですか」

 

 「基本的には初級・中級・上級ポーションに、病状に合わせた物です。お客様には必要のない、二日酔いのポーション等も御座います」

 

 「怪我は、上・中・下のポーションで治りますか」

 

 「怪我の度合いにも依ります。ポーションは応急と心得ていて下さい。大きな怪我で一本で無理なら二本飲む場合もありますが、最後は治癒魔法師の所に行って下さい」

 

 「では初級ポーションを五本に中級ポーションも五本、上級ポーションを二本下さい」

 

 「初級ポーションが1本銀貨2枚、中級ポーションが銀貨8枚、上級ポーションは金貨2枚になりますが宜しいでしょうか」

 

 頷いて子爵様から頂いた革袋を取りだし、金貨9枚を置く。

 その際、店員に革袋に付いた子爵様の紋章が見える様にする。

 店員がさりげなく革袋を見て、店の奥から各種ポーション12本を持ってくる。

 

 「これを入れておくケースは在りますか?」

 

 「はい御座います。ケースのお代は結構です。サービスさせて頂きます」

 

 礼を言って受け取り、冒険者達も買いに来るのかと尋ねると、ベテランの高ランク冒険者達が来ると教えてくれた。

 彼等が身の周りの品を買いに行く店を教えて貰い、その店に向かう。

 

 教えられた〔ナカサラの店〕って看板を見つけ中に入る。

 数名のシルバーかゴールドクラスと思われる冒険者達が、ロングソードを物色している。

 店内を見回すと色々有り、マット置場に行き物色する。

 160cmにようよう届く俺なので、丈は問題なし。

 幅の広いのを探すが、問題は厚みがない。

 店員に希望を伝えると注文品になり、10日前後掛りお値段もそれなりにかると言われた。

 収納から革袋を取り出して一掴みの金貨を店員に見せると、頷いて注文伝票を書き金貨2枚を要求された。

 金貨を2枚を支払い、伝票を受け取り他に欲しい物はと顔を上げると、カウンター奥のに見覚えのあるものが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る