第91話 尋問
「奇襲を受けての対人戦闘はきついな。我々は野獣相手の戦闘訓練はするが、対人戦の戦闘訓練はしないからな」
「そうだと思っていたよ。まっ、奇襲攻撃を受けるのは誰にとってもきついからな。それじゃー俺達は帰るわ」
「それだけを伝えに来たのか?」
「当然だろ。今あんたが言った奇襲攻撃はきついって、知っていれば対処できるだろうし負けないだろう。俺は帰って、埋めている奴等を尋問しなきゃならないからな。生きてるかな」
「それはどういう事だ」
「えっ、何が」
「埋めている奴等を尋問って?」
「街を出た時に、後をつけてきた奴等を埋めているんだ。未だ生きていれば聞きたい事が有る」
アガベが額に手を当てて首を振る、器用な真似をしている。
「カイト、俺達も行くぞ!」
そうアガベが言うと30人程を呼び寄せ、ホーリーに事情を話して後を托し、俺と共にエグドラに行く事になった。
いや地獄だよ、シャーラと二人ならシャーラが俺に合わせてくれるが、31人+1人の森の一族と森を歩くって無理 !
ヒーヒー言っている俺を、可哀相な子を見る目で見るな!
グリンが心配して俺の側に来てくれるが、アガベ達が何かを感じているのが解るので、グリンには近寄らない様にお願いしている。
キャンプハウスの中だけが、グリンと触れ合う場所になってしまった。
地獄の行軍は、行きより3日早い14日目に穴に埋めた奴等のもとに着いた。
* * * * * * * *
6人のうち2人は餓死していたが、4人は程度の差こそあれ生きていた。
お財布ポーチに食料等を蓄えていたのだろう。
穴の蓋を開けると眩しそうに上を見ていたが、アガベ達森の一族がずらりと並んで見下ろしているのを見て硬直している。
「さて急いでいたから放置したが、何の用で俺達が居るのか判っているよな」
「何故こんな事をするんだ。仲間達はどうしている」
「とぼけるなよ。シャーラが声を掛けた時に全員剣を抜いていたよな。俺達は街を出る前から、お前達が後をつけていたのは知っていた。この場所にお前達が来るように、ゆっくり歩いてやったんだよ」
喋る気がなさそうなので、身ぐるみ剥いで素っ裸にして餓死している奴の穴の中に放り込む。
「そいつと同じ様にゆっくりと死ぬか、それとも質問に答えるか好きな方を選べ!」
何も言わず睨みつけてくるので、蓋をして次の奴に問い掛ける。
4人のうち2人が喋ってくれたので、お財布ポーチや武器を取り上げ、食料だけを与えて監禁しておく。
喋らなかったもう1人は、素っ裸にしてもう1人の餓死者の穴に入ってもらった。
取り上げたお財布ポーチや武器等は、一族の者達に渡す。
次は森に潜んでいる奴等だが、一月経っているので居るかどうかだ。
ギルマスに聞いた場所と、聞き出した別の場所をシャーラを案内にアガベの手の者10人と探ってもらう。
帰ってきたシャーラの報告では、2ヶ所共に人が居るが人数は不明。
片方は冒険者達だが、もう一方は騎士の様な雰囲気が有ると言っている。
理由を聞くと、オルラン達の様な雰囲気があると言う。
それぞれが潜んで居る場所は、シャーラ達の足でも10分以上離れているので各個撃破と決めた。
アガベ達には殺さない様に、木剣を使かう様にお願いした。
先ず人数の少なそうな冒険者達の方を襲う。
アガベ率いる30人が綺麗に包囲して近付き、合図と共に無言で走り、見張りが一声あげた時には叩きのめしていた。
すかさずテントの張り綱を切り、テントの上から動く所を狙って木剣で殴りつける。
呻き声しか聞こえなくなった所で、声を掛け1人づつ出てこさせ縛り上げる。
全部で8人、猿轡をし見張りに3人残して次の襲撃場所に向かう。
遠目にも冒険者には見えない、然し見張りが疎かでのんびりしている。
戦争をしている訳でもなし、多分命令待ちって所かな。
見通しがよいので近付き難い、相談の結果東西南北から一斉に走り寄り強襲をかける事に決定。
俺、俺は本当の意味での足手まといなので見物に徹する。。
シャーラの本気走りも早いけど、アガベ達も早いねー。
走り寄るアガベ達を見つけ警戒の声をあげたけど、剣を抜いて構える前に叩き落とされ殴り倒されている。
テントや土魔法で造られたドームから、抜き身を引っ提げて出て来る男達を次々に叩き伏せる。
中には手強いのもいるが、追いついた俺が柔らかバレットを打ち込み、怯んだ隙に木剣で殴られている。
いやー強いですねー、鮮やかですねー、楽ですねー、心配して損した気分だよ。
シャーラなんて少し遅れて走り、ちゃっかり見物に回っている。
此処では17人捕獲できた。
アガベと相談をして、冒険者達8人を連れて来て合流する事になった。
冒険者達のテントは元通り立てなおし、仲間が帰って来るのを待ち伏せする事に。
そいつ等を捕獲するために、5人ほど残す。
さーて、お待ち兼ねの尋問タイムだ。
17人を外向きの輪にして足を固定、冒険者8人は内向きの輪にして足を固定した後で、ちょっと御挨拶をする。
「長らくお待たせした様だが、じっくりとお話しましょうね。素直な方は痛い思いをしなくて済みます。そうで無い方は・・・ちょっと痛いかな」
シャーラに頼んでいた、最初の6人の中の素直に喋った2人を皆の前に連れて来て目の前を歩かせた。
「彼が誰だか解るよな。少し痩せているけどね。1月前に捕らえて穴の中に放置していたんだが、生き残った4人の中の2人だ。もう2人は喋る事を拒否したので、飢え死にした奴と同じ穴の中にいる」
「彼を見てよーく考えろ。素直に喋って生き延びるか、素っ裸で餓死した奴と同じ穴の中でゆっくり死ぬか」
「お前は狂ってる、まともな人間のする事では無いぞ!」
「なーに言ってんの、人を殺しに来たんだからやり返されて当然だろ。人を罵倒する前に、お前達は何をする気だったのか考えろ。拷問するのは面倒だし、嫌いだから放置しているだけだよ。放置する前に聞いてあげたよ、喋るか?とね」
「カイトそんな事は俺達に任せてくれ、素直に喋る様に躾てやるよ」
「だそうです。皆さんが痛い思いをして耐えても、貴方達を送り出した奴は、痛くも痒くも無いからね」
「俺は喋るぜ! 何でも聞いてくれ」
「じゃあ喋る前に、お財布ポーチを外して使用者登録を解除してくれるかな」
「えっ・・・これは俺の全財産が・・・」
「ズタボロにされて喋ってから差し出すのと、今差し出すのとどっちがいい」
それはそれは、ニッコリ笑って言ってやりました。
使用者登録を解除して投げて寄越したのを、アガベに渡す。
「素直だから犯罪奴隷5年くらいにする様にご領主様に言ってやるよ」
「俺も喋る。こんな馬鹿な事で死にたくねぇ」
2人目がそう言うと、他の冒険者達がボロボロの二人を見ながら次々に追従した。
冒険者達はエラードが拠点で、エラードの冒険者ギルドのギルマス、ヘルザクから依頼を受けエグドラに来たこと。
依頼内容はアガベ達の居場所確認と、アガベを誰が手引きしてエグドラ冒険者ギルドに引き抜いたか。
出来ればアガベを引き抜いた奴を排除することで、成功報酬金貨10枚で引き受けたと。
冒険者に見えない17人は、エラードの領主ホウゼン伯爵の私兵で、赤ら顔の毛むくじゃらがボスだと教えてくれた。
何故此処にじっとしていたのか聞くと、子供2人を拐いに行った手練れの6人が消えたので、様子がおかしいと指示を仰ぐために、エラードに人を送り連絡待ちだとさ。
間抜け!
エグドラの街には後8人がいる事も喋ってくれた。
「さてとご領主様から何を言われて此処に居るか、喋ってもらおうかな」
赤ら顔の髭もじゃのおっさんに優しく聞いてみる。
〈ペッ〉って唾を吐かれたが、即座に側に居た一族の男に殴られている。
足を固定しているので逃げられないし、殴られて後ろに倒れたら頭を蹴られて痛そう。
それからは前後左右から殴られ蹴られて、ボロボロになり呻いている。
シャーラが側にいき〈なーぉれッ〉の一言で回復する。
いきなり痛みが引き、元に戻った自分の体をマジマジと見ているが、再び暴力の嵐に見舞われ呻いている。
暫く髭もじゃは放置して、隣の男に優しく声をかける。
「喋る気は有るかな。無ければ髭もじゃと同じ目にあうけど耐えられる?」
震えながらも黙っている。
いきなりのボディブローで、ゲロを吐きながらくの字になって呻く。
襟首を掴んで引き起こされ、再びボディブロー。
彼が回復するまで隣の男に質問すると、協力的な態度の方でした。
髭もじゃは名前をドーゼン、エラードの領主ホウゼン伯爵の裏の仕事をしている。
今回は、アガベ達がエグドラに現れたら見せしめにしろと言われ、冒険者達を見張りに使い待機していたって。
「だってさ、俺とあんた達が標的だそうだがどうする」
「カイトはどうする気だ」
「俺はこいつ等から、直接攻撃を受けていない。だが冒険者達に俺と名指しはしていないが、排除しろと命じた奴には死んでもらうさ」
「此奴等はどうする」
「侯爵様に引き渡す。全員犯罪奴隷確実だがドーゼンとその部下は死ぬまでだな。取り合えずお財布ポーチやマジックポーチを取り上げよう」
マジックポーチのランク5が1つ、お財布ポーチが冒険者達の分も含めて13個集まった。
犯罪奴隷になる奴等には必要ないので、全てアガベ達森の一族に渡す。
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