第131話 待伏せ
「あの二人はどうした」
「二人って、テイルドラゴンを譲ってくれた二人の事か」
「余計な事を言うな! あの二人はヨルムの里で、大勢の仲間を殺したそうだな」
「エドラが無警告で仲間と共に襲いかかって返り討ちに合っただけだ。エガートも長老面して殺せと命令し、腰巾着共々返り討ちに合うという情けない事になったがな」
「お前は、それを黙って見ていたのか」
「変な事を言うな。どちらが悪いのか一目瞭然だぞ。無警告で襲って返り討ちに合う。ヨルムの里で、集団で襲いやり返されて全滅。情けない事だと思わんのか。最もテイルドラゴン狩りで、後ろで喚くだけの逃げ腰のお前達に聞いても無駄か。勇者ハマンはどうした」
「黙れ! 余計な事をペラペラ喋るな!」
「そりゃー喋られると不味いよな。日頃の大口が腰抜けの戯言だとばれるからな。お前達も勇者ハマンの腰巾着の一員か」
そう言われた一団だが、彼等のオーロンを見る目は冷たい。
「好き勝手嘘を並べてもお前達は長老会の命に背いたんだ。長老会はお前達を処分する決定をした。あの男と猫人族の女の居場所を言え、俺も同じエルフの仲間を処分したくない」
「フルーザさん、確かにさっきまで5人居たんだ、間違いないない。近くに隠れて居る筈だ」
「死にたくなければ言えよ」
周囲のエルフ達が槍を構え弓を引き絞る。
「お前達、長老会やハマン達から好き勝手に使われ、死んでいきたいのか」
「あの二人はカイトとシャーラと呼ばれているそうだな。ダルク草原で長老達5人と多数のエルフが死んだ原因も奴だぞ」
「知っている、俺もあそこで死ぬところだったからな。死ぬ原因があの二人だと? 長老会があそこに行けと命令したんだぞ、あそこは茨の森だった。茨の森に踏み込むなとの言い伝えを無視した結果だ」
「あの二人が、ダルク草原の話をしなければ誰も死なずに済んだ筈だ。あの二人は長老会の名で処分が決まった。居場所を言えば、お前達は助けてやる」
オーロンが鼻で笑うと、フルーザが〈殺せ!〉と喚くのと同時に切り掛かる。
数十本の矢が3人に突き立ち、斬りかかられたオーロンは剣の柄に手を添えたまま、袈裟斬りに切られて倒れた。
不穏な話し合いから、いきなり殺しの命令に対処が遅れた。
フルーザと周囲の者を落とし穴に閉じ込めると立っている者全てにショットガンを撃ち込んでいく。
シャーラも何処からか攻撃しているのだろう、色々な方向から悲鳴が聞こえる。
オーロンの周囲の者を排除したので地上に出ると、3人共ハリネズミの様な状態で絶命していた。
「カイト様」
「やられたよシャーラ、仲間をあっさり殺すとはな。悪いが息の有る奴を、死なない程度に治療してくれ」
周囲に倒れ呻き声をあげる奴等から、聞きたい事がある。
落とし穴の蓋を開け、中の奴等の足を固定する。
剣や弓に手を掛ける者にはストーンバレットを打ち込む。
詠唱している奴をには口の中に泥団子を咥えさせ黙らせる。
フルーザが手足を固定され、睨みつけてくるが一言も喋らない。
周囲の者達は何が起きたのか解らず狼狽えている。
「お前は簡単に仲間を殺すなぁ。金に目の眩んだ長老達や、ダルクの森で死んだ奴は仲間だが、事実を指摘する奴は敵か」
「何処に居た! 放せ!」
「お前、面白い事を喋ってたよな」
「煩い! 仲間達はどうした、何故お前がそこに立っている」
煩いので腹に一発喰らわせる。
「カイト様、大分逃げられましたけど追いますか」
「放っておけ、どうせ長老様の所に報告に行くんだろう。なぁフルーザ」
穴の中の8人を地上に戻す。
足を固定され手を拘束された状態で穴の中から上に持ち上げられ周囲が見えた時にフルーザの後ろにいた二人が発狂した。
〈何だこれは! 人の仕業じゃない、気狂いめ!〉
〈ハヤーザ•••ハヤーザ、何て事をする人殺し! お前を殺してやる!〉
腹にストーンバレットを打ち込んで黙らせる。
「仲間を簡単に殺す割には仲間思いなんだ、エルフって変わった性格しているな」
腹を抱えゲロを吐きながら睨む二人に言ってやる。
「フルーザさっきの続きを聞かせてくれよ『長老会の名で処分が決まった』って言ってたよな」
震えながら睨むフルーザに、素直に喋ってもらうにはお仕置きが必要な様だ。
面倒なのは嫌いだが久し振りに焚き火をする。死んでいる奴等の剣を火の中に突き刺す。
足を固定したままの8人を円陣に並べなおして準備完了。
「何が始まるか解るよな、フルーザお前から試してみるよ。『長老会の名で処分が決まった』って言った話を詳しく説明しろ」
太腿に焼けた剣を突き立てると、泣き喚くが喋ろうとしない、反対の足にも突き立て、次の奴に向かう。
「止めてくれ、命令されただけだ。お願いだ」
「そう、じゃ俺が命令する。喋れ!」
喋らなければお仕置き決定、次々と焼けた剣を足に突き立てられても、誰も喋ろうとしない。
「見上げた根性だねー、言っておくがお前等全員殺す。楽に死ぬか散々痛い思いをした挙げ句、生きたまま野獣の餌になるか、好きな方を選べ」
両足の次は両肩に焼けた剣を突き立てる。
両耳を削ぎ落とし目を焼かれて初めて喋る奴が出てきた。
「止めて下さい。何でも喋りますから。長老会がカイトとシャーラに金貨5,000枚を騙し取られた。その上ダルク草原に長老達を誘き寄せ、鏖にしたと」
「オーロンは何て言ってた」
「オーロンは、ダルク草原で生き残った恥さらしだ。だから仲間たちから遠ざけられていた、何も聞かされていない」
「オーロンはダルク草原の事実を知っていて、お前達や長老達に警告していた筈だぞ」
「精霊樹の森とか、茨の森に踏み入ってはならないとか、寝言を言ってた。長老達が草原に精霊樹の森が出来る筈が無い。精霊樹の森は森の奥深く、人を寄せ付けない場所にしか出来ないと教えてくれた。長い時を生きた、長老の知恵と知識に間違いは無い!」
「お前は何故喋る気になったんだ」
「長老達の事を喋れば、仲間達にリンチされた後にナイフを足に突き立てられて森に追放になる」
「ほぅ中々厳しい掟だが、長老に都合の良い掟だな」
「もうどうでも良い、同じ死ぬなら楽に死にたい」
「では七つの里の名と位置を教えろ。ヨルムの里を起点に言え!」
「ヨルムの里の北に5日行った所にフルマの里、其処から東に6日でセンザだ。センザから南に3日でホリーの里に出る。フルマから西に6日行けばエムナで、エムナから北に7日でサハバだ」
「後一つは」
「ヨルムから西に4日の所にムースが在る。これで七つの里の長老会を作っている」
紙に書いていてうんざりしてきた、これを殺しのためだけに歩くのかよ。
(サハバ)
↑北7日
(エムナ)西6日← (フルマ) →東6日(センザ)
↑北5日 ↓南3日
(ムース)西4に← (ヨルム) (ホリー)
喋った奴はショットガンで楽にしてやる。
シャーラに治療してもらい、何とか生きている奴らにも位置関係を聞いて周り、嘘でない事を確認する。
死にかけていたのを助けられたので、素直な良い子達だよ。
のこる7人の脹脛を焼けた剣で突き刺し足の拘束を解く。
詠唱していた奴は、顎を蹴り砕いてやる。
「長老共に忠誠を誓うお前達は、野獣の餌になってもらう。ゆっくり死ね!」
《カイトでか耳が沢山来るよ》
《判った有り難う、グリン》
シャーラが姿を隠す。
ヨルムの里の方から来た様だが、俺の存在に気づいたのか足が止まる。
木の陰から俺の様子を伺っている。
「何の様だ、お前達も敵対するなら死んでもらうぞ」
「カイト殿、ヨルムの里のヘンザだ。敵対はしない、そちらに行ってもよいか」
「あんた一人だけで来い、他の奴等が近づけば殺す」
一人姿を現しゆっくりと近づいてくるのは、確かにヨルムの里長ヘンザだ。
オーロン達が見えない様に、少しで手前で止める。
「どうして此処が判った」
「助けを求めて来た奴等に聞いた。カイトに襲われて皆殺しになったと言ってな。あんたは自分が攻撃されなければ攻撃しないので、話がおかしいと思ったから確認にきた」
「そいつ等も来ているのか」
「ああ、場所を案内してもらったからいるぞ」
「そいつ等を呼んでくれ」
ヘンザが呼ぶが、怖がって誰も来ないので、ヨルムの連中だけ来てもらった。
《グリン、シャーラに伝えてよ。残っている奴等の足にストーンアローを打ち込んで、逃げられない様にしてと》
遠くから悲鳴が聞こえるが気にしない。
ヘンザ達ヨルムの者達をオーロンの所に案内する。
「何て事を」
ヘンザと共に来た者たちもオーロン達の姿を見て声もない。
「あんた達を呼びに行った奴も、このフルーザの仲間だよ。テイルドラゴン討伐の事は知ってるな」
「ああ長老会の決定だと言って、人を寄越せと言ってきた。今回はオーロンを指名してきた」
「ハマンって奴を知ってるか」
首を振るヘンザに、長老会は20人でテイルドラゴン討伐に行かせたが、そのハマンや倒れて呻いているフルーザ達が闘わず逃げ腰だった事等を全て話して聞かせた。
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