第43話 嬉しい収穫

 いきなり明るい空間が目の前に広がる、湖だ湖面はさざ波に陽の光が反射してキラキラ輝いている。

 〈シルバーフィッシュが居そう〉シャーラの呟きを聞き逃さない俺の聴覚 GJです。

 

 「シルバーフィッシュって美味しいの?」

 

 「はい、こんがり焼くと皮はパリパリで身は脂がたっぷり、何とも言えません。大好きです!」

 

 感嘆符付きの大好きね、俺も魚は嫌いじゃないし此処は漁労に勤しむべきでしょう。

 が釣り具が無い、針と浮きが有れば何とか為りそうだが無い!

 湖が有れば流れ込む川と流れ出る川は必須だよな、狙い目は水の流入口か流出口と澱みなので、取り合えず湖を一回りすることにした。

 

 シャーラと湖畔を巡るが、ルンルンのウキウキですがな。

 どうやって取るのか尋ねたら、考え込んで段々泣きそうになっている。

 

 「網も釣り針も無いの、どうしょう。シルバーフィッシュ」

 

 猫から魚を取り上げた見たいにしょぼくれている。

 可愛いねー。

 

 上流?から流れ込む川が3本と、流れ出る滝が一つ川も一つだが流れが険しくて漁労は無理だ。

 流れ込む川を調べて、少し遡った所で浅くて広くなった所を発見、砂地に石が点々とあるが追い込み漁が出来そう。

 深さ30センチ程度の所に半径5メートルの円形に櫛の歯の様に細い杭を立てていく、上流側1メートル程は開けておきそこからV字型に杭を立てていく。

 

 俺の遣る事を不思議そうに見ているシャーラに、魚を追い込む方法を教える。

 一瞬で満面の笑みを浮かべる猫娘に変身したね。

 

 長い棒を担いで二人して上流に向かい左右に別れて頷く、せーので棒を振りかぶり水面を叩く。

 左右の水面を叩きながら下流に魚を追い立てると、何処にいたのかと思う程の魚が逃げ惑い円形の罠に雪崩込む。

 すかさず入口にも杭を立てると、袋の中のお魚が出来上がる。

 浅瀬に向かって杭を立て浅瀬側の杭を消滅させると、逃げ道が出来たと一斉に魚が浅瀬に向かい跳ね回る。

 

 シャーラは初めて水遊びをする子供の様に〈キャーキャー〉と騒いで魚を追い立て絶賛興奮中。

 

 ふと気付くと、ゴールデンベアが浅瀬で跳ねる魚を食べにのそのそ出て来てる。

 気付いたシャーラがフリーズしているが、それでも〈私の魚・・・〉と呟いている。

 

 「シャーラ、来い!」

 

 駆けよりながらシャーラを呼ぶ、ゴールデンベアはお魚さんに吸い寄せられる様に歩いて来たが、俺の魚は渡さん!

 砦を築くと同時に足場を上げ、お魚を満喫中のゴールデンベアに横からストーンランスを撃ち込む。

 頭に一発撃ち込むと、お魚噛えたまま天国にお引越し。

 大好きな魚と共にあの世行きなら、ゴールデンベアも本望だろう。

 

 「シャーラ、興奮しすぎ」

 

 しゅんとなるシャーラに、警戒は忘れない様にと注意してお魚回収することに。

 1メートル角で高さ50センチの箱を作り魚を並べて行く、頭と尻尾を交互に並べ3段積んだら次の箱を造る。

 一箱21匹として10箱は収納に仕舞ったから当分シャーラの餌・・・食事に不自由はしないだろう。

 残りは逃がそうと杭を崩していると、新たなお客さんだ。

 

 「カイト様、ウォータードラゴンだよ」

 

 ウォータードラゴンってまるっきり鰐じゃないの、然も地球産の倍は楽にあるのが2匹出やがった。

 一匹はお魚に向かうがもう一匹は俺達を食事に選んだ様だ、此処は秘技を使って水中からジャベリンを打ち上げる。

 一撃必殺どうだっと、ムフーしていたらもう一匹も進路変更して俺達に向かって来やがる。

 ままよ序でにお前も死ね! っとジャベリンを水中から打ち上げたが少し狙いが外れて大暴れ。

 暴れて狙いがつけられないので、追加で3発撃って漸く仕留める。

 

 捨て置く訳にもいかないのでタイプ12のマジックポーチに入れる。

 ゴールデンベアは収まったが、ウォータードラゴンは尻尾を含めると12メートルを超えているので、尻尾をロープで縛って頭の方に引き寄せてマジックポーチに仕舞う。

 

 思わぬ重労働で疲れたので、今日は此処に泊まろうと少し離れた所にキャンプハウスを出して休憩する。

 ハウスの中でお茶を飲んで休憩したら、シャーラの興奮も収まってやれやれだ。

 でもシャーラのニマニマが止まらない、水際で一匹捌き今夜は焼き魚で夕食となった。

 

 シャーラは満足そうにお腹を撫でている、俺は旨い酒を呑みながら酒の肴と洒落込んでいる。

 然し、熊も鰐もでかいねー、今の魔力量なら逃げずに闘っても大丈夫だろうけど面倒だよ。

 明日は気になる場所があるので、そこを見てから帰る事にするつもりだ。

 

 次の日は気になった澱みに向かい、覗きこむとやっぱり何かいるがはっきりしない。

 土魔法で三股の槍を造りロープを括りつけ、澱みに投げ込んでみた。

 ロープに手応えがあり、引き上げてみるとエビだ。

 透明な川エビのでかい奴、日本なら3~4センチの川エビでかき揚げにしたら美味しいやつだ。

 然し、此処の川エビは胴体だけで軽く30センチを超えていて、頭の先から尻尾迄だと60センチ超えだ。

 

 大量に欲しいがどうやって捕まえるか、シャーラに聞こうとしたら腰が引けてビクビクものでエビを見ている。

 

 「シャーラはエビが嫌いなの」

 

 「エビっての、これピンピン跳ねるし固いから嫌い」

 

 そりゃまぁ大人の腕程もある胴体で跳ねるから、当たれば痛いだろう

 

 「シャーラ、火を焚くから薪を集めろ」

 

 竈を造りその上に大きな鍋とエビが楽に乗るフライパンを造りお湯を沸かしフライパンを熱する。

 みてろシャーラ、大好物に変えてやるからな。

 一匹は茹で、もう一匹は焼いて食わせてやるぞ、エビの美味さを思い知れ!

 焼いててびっくり、透明なエビの殻が虹色に替わっている・・・何じゃこりゃー食えるのかな。

 茹でた奴も、艶は無いけど虹色になってる。

 

 少し噛じってみたが、旨いってもんじゃないぞこれ!

 夢中で食べていると、シャーラが横からつまみ食いして目を輝かせている。

 俺は死んでも良いから全部食べる! 腹一杯食べるぞ!

 

 「ん? シャーラはエビが嫌いって言ってなかったか、ん」

 

 「嫌いです・・・固い所は、でも柔らかい所は好きになりましたから食べます」

 

 笑ったね。

 腹一杯食べて休憩し、大量に捕るにはどうすれば良いのか二人で考えたが思い浮かばない。

 仕方がないのでので、銛でちまちま捕ることにした。

 銛を改良して6本の銛を円形に配置し、ロープをつけて投げ込む。

 必ず1匹か2匹捕れるので、引き揚げては石の斧で頭を一発叩いて箱に詰める。

 箱はシルバーフィッシュを入れたのと同じ箱を造り、せっせと詰め込んでは収納に仕舞う。

 一箱に50匹は詰めたと思うが、1日掛かりで12箱作り疲れて終了。

 

 次に来る時には、網と釣り針は忘れない様にしようと誓い、街に向かう事にした。

 帰る途中で、目の前を横切るオレンジ色の蜂が蜜蜂だと教えられた。

 然しその蜂は日本のスズメ蜂の2倍はある蜂で、蜜を採るのは命懸けになりそう。

 蜜は欲しいけど命は惜しいと悩んで居ると、シャーラが大丈夫ですと笑っている。

 

 シャーラが周辺を探して草を大量に集め、俺に大きな水瓶を作らせるとその中に集めた草を詰め込んでいく。

 夜になるのを待って巣の風上から近付く。

 壺の下に開けた穴から火を点け、大量の煙りを巣の方向に流れる様に調節している。

 最後には巣に穴を開け直接煙りが巣の内部に流れこませ、巣の壁を切り取って蜜の塊を取出していく。

 蜜用に造った大きな壺は、みるみる切り取った蜜で一杯になる。壺二つをマジックポーチに仕舞うと蜂が目覚める前に退散する。

 

 二人とも蜜でベトベトなので歩きながら、ウォーターで何度も洗いクリーンでさっぱりする。

 後の処理は帰ってからすることにした。

 もう一つの収穫は、ホウホウ鳥の卵を13個と鳥を8羽も手に入れたが、シャーラの美味しいって言葉に弱いんだよな。

 

 前を歩くシャーラが立ち止まり、顔を上に向け何やら真剣な顔で匂いを確かめている。

 シャーラがこれを始めると、何か良い物を見つけた時である。

 野獣に気付いて匂いを確かめる時にも同じ事をするが、眉に皺がより顔が引き締まるので違いが分かる。

 

 「フィ様に良いお土産を見つけました。取りに行きたいけど良いですか」

 

 頷くと匂いを辿って進むが、こういう時は一直線に進むのがシャーラである。

 藪や叢に大量の蜘蛛の巣を物ともせずに突き進む。

 芳しい香りが立ちのぼっている、灌木の根本を掻き分け下草を見て微笑んでいる。

 

 「カイト様、見つけました♪」

 

 後ろから覗き込むと下草の緑色に紛れてよく見えないが花の様だ。

 

 「それは?」

 

 「香り草です、芳香華と呼ばれています。人族では滅多に手に入らなくて、冒険者ギルドでもとても高いんです」

 

 シャーラの手にはクロッカスによく似た全体が薄い緑色で25センチ程の草丈に10センチ程の半透明な花が一つ咲いている。

 これじゃ草の中に有ったら見つけられない。

 

 「根本から採って大丈夫なのか」

 

 「根を掘り返さ無ければ来年又生えてきます。根本から採らないと花が直ぐに散って香りも無くなります」

 

 群生地の様で辺り一面が芳しい香りに包まれている。

 シャーラが見事な花を選んで10本ばかり採取した、細長い筒を造ってやると水を入れてから一本ずつ入れて蓋をする。

 大事そうにマジックポーチに仕舞うと、満足してエグドラを目指して歩き始めた。

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