第150話 解ってはいたけれど
5人は足を固定され、柔らかストーンバレットを散々頭上から打ち込まれて音を上げた。
ボスと補佐3人に冒険者が13人、うち二人が魔法使いだと、素直に答えてくれた。
潜伏場所は迷いの森に向かって時計回りに、2時間少々行った所に、半地下の住居を造っていると喋った。
4人を一纏めにし、食料だけを与えて穴に閉じ込める。
1番素直な男は道案内のために、夕暮れまで俺達に付き合ってもらう。
日暮れ前に、住居にしている場所の手前まで行き観察するが、大して警戒している様子もない。
俺達が来なければ何の問題も無い場所だから無理もないことだ。
男から聞いた詳細な配置状況を確認し、強襲することにした。
先鋒はシャーラ、俺はバックアップ要員に徹する。
出入り口の左右にジャンプすると、傍らに佇む男にストーンバレットのショットガンを打ち込む。
吹き飛ぶ男が派手な音をたてるが、構わず内部に侵入するシャーラ、その後ろを俺が付いていく。
飛び出して来る男達にショットガンを浴びせ踏み込んでいく。
物陰に隠れていてもシャーラにはお見通し、壁越しにソフトボール大のバレットを撃ち込まれ、吹き飛んでいる。
左右から飛び出して来た男に、俺が右シャーラが左にショットガンのバレットを打ち込んで吹き飛ばす。
「何だ! お前達は誰だ!」
「あーそれを、俺達が聞きに来たんですよ。誰に断ってこんな所に住み着いているのかな。聞けば、冒険者達が集めた薬草を掠め取っているって言うし」
「2人だけか。腕は立つようだが余計な事に首を突っ込んだな」
「いやいや余計じゃ有りませんよ。ねぐらを荒らされたらやり返すのが俺の趣味ですから」
「盗賊にしては若いな」
「主持ちの貴方と違って、自由に生きてますから歳を取らないんですよ。ヘイカン・マルサド伯爵様は元気ですか」
「貴様、なぜそれを知っている」
阿呆、腹に一発打ち込んで吹き飛ばす。
やっぱり伯爵様の御一行様か、後6グループと本命グループを捕まえるのは面倒だね。
冒険者達は食料を持たせて穴の中へ、ボスと補佐の3人は尋問だ。
素早くやりたいので尋問前に焚き火を始める。
ボスと補佐3人を大の字に固定し、焚き火がよく見える様にする。
「ヤルザ・エントレに聞いたが、お前達からも大ボスの居場所を聞こうか。言わなければ焚き火で火遊びしてもらうからな。ボスは誰だ?」
3人が一斉に先程口を滑らせた男に目を向ける。
「で、ボスは自己紹介してくれるのかな。火遊びしてからでもいいけどどうする」
〈ペッ〉って唾を吐かれちゃいました。
シャーラが黙ってボスの片足を火の中に入れる。
〈アァァウガァァァー〉顔の上に植木鉢状の物を乗せて、音を絞る。
「よく見ているとよいぞ。ボスの後は部下って相場が決まっているからね」
声が聞こえなくなったので植木鉢を外すと、白目を剥いて気絶していた。
「次、いってみようか。誰からにする? 希望者はいるかな、君は根性有りそうだから君からね」
「喋る! なんでも喋ります」
「では大ボス、ヘイカン・マルサド伯爵の居場所は何処かな」
「ボ ボ ボスしか知らないんです。本当です嘘は言いません」
「んじゃ、ボスの名前は」
「エルト・ハイザクです」
他のボスの名前もペラペラ喋ったが、隣合ったグループの居場所しか判らない様にしていた。
用心深いが、ヤルザの馬鹿が口を滑らしたのを冒険者の一人に聞かれたのは不味かったね。
ハイザクさんには、寝ている所を悪いが起きてもらおう。
ウォーターでお水バシャバシャ掛けて無理矢理起こす。
俺の魔力量ならウオーターで木桶の4,5杯くらいの水は簡単に出せる。
途中から息が出来ないのかウガウガ言っていたが、目を覚ました。
「大ボスの居場所を喋るか、続きをするか選べ!」
黙っているのでシャーラに右手を焼けと、命じた瞬間に喋りますと言った。
最初から喋れば痛い思いをしないのに、何故皆痛い思いをしてから喋るんだろう。
俺なら捕まって尋問されたら、何でもペラペラ喋るよ。
大ボスのマルサド伯爵は、もう一つ隣の向こう側に、地下トンネルを造って生活しているとさ。
此処からだと3時間は掛かると、夜の草原の散歩は嫌いなので朝まで待つことにする。
隣のボスの名はグラフ・ユーザスさんね、こいつを捕まえて案内させていては時間が掛かるので、ハイザクに案内させる事にした。
「お前に案内してもらうぞ、嘘を教えたり時間稼ぎは許さないからな」
「この足でどうやって歩けと言うのだ!」
ブチキレているよ、怖いねー。
「大丈夫だよ治してやるから」
〈ヘッ〉って言ったきりポカンとしている。
〈なーぉれっ〉シャーラの一言で酷い火傷の足が綺麗に治っていく。
焼け焦げたズボンは無理だけどアンヨは治ったので、歩けないとは言わせない。
ハイザクと補佐の3人が、火傷の治った足とシャーラを交互に見て口をパクパクさせている。
補佐の3人は冒険者達の所に放り込み、ハイザクに案内させようとしたら情けない顔で足を見てこれは無いだろう。
ズボンとブーツくらいは替えさせろよと言われた。
確かにな、お財布ポーチを渡して着替えさせるが余計な事をするなと釘を刺しておく。
シャーラが俺の前に出てハイザクを見ている。
値踏みするようにシャーラを見ていたが、首を振ると黙ってズボンを履き替えお財布ポーチを返して寄越す。
「あんた達は何者だ? 凄腕の魔法使いってのは充分身に沁みたが、姉さんの剣の腕も並じゃないな」
「薬草採取が専門の冒険者さ。行こうかヘイカン・マルサド伯爵様にご挨拶だ」
《カイト、人族が向かって来るよ》
《有難う、どれくらい離れている》
《ん、後少ししたら見えるよ》
さいですか、高い所から見ているグリンがもう少しって言ってもな。
取り敢えず穴に籠もってやり過ごすか、敵なら落とし穴に落ちてもらえば良かろう。
シャーラと道の前後に別れて挟み撃ちにすることにした。
ハイザクは穴の壁に手を埋め、俺の隣で通り過ぎる奴が誰か説明させる事に。
20人近い人数の集団で、如何にも騎士といった雰囲気の者が半数近くいる、敵認定だが一応確認をする。
「お仲間に間違いないよな」
ハイザクが覗き穴から見て、渋い顔で頷く。
最初に捕らえたヤルザの所の冒険者に聞いた、身なりの良い華奢な抜け目のない感じの男は見当たらない。
《グリン、シャーラに捕まえろって言って》
《ん、判った》
1番後ろを歩いている奴から足下に穴が開き落ちて姿が消える。
隣でハイザクが唸り声をあげている。
後ろから順に落していくと、7人目で前の奴が気づいた様だ。
後ろを歩いていた奴の気配が消えたのを察した男が、振り向いて何か騒いでいる。
前を歩いていた奴等が振返り騒ぎ始めたので、先頭の奴等は俺が穴に落して蓋をする。
目の前で足下に穴が開き人が落ちるのを見て逃げ出そうとするが手遅れだよ。
「なんてこったい、こんな凄い魔法使いが居るなんて聞いてないぞ」
「気にするな、ただの土魔法だよ。さて伯爵様は居ない様なので行くか」
穴を元に戻し地上に出る。
「えっ、おい! 奴等を捨てていくのか、死んでしまうぞ」
「大丈夫だよ、伯爵様を捕まえたら出してやるよ。こんな所で騒いでないで、さっさと伯爵様の所に案内しろ」
20人近い人数なら伯爵の手勢全員って事になるがそれはないな、多分隣のグループから引き抜いていると思って間違いあるまい。
残っているのは多分半数だが従者2名は戦力外と思われる。
問題は魔法使いの腕だが、やり合って見なければ判らない。
ちょっと手間取ったが、お昼前には伯爵様の潜む地下トンネルの入り口近くに着いた。
「あそこに木の棒が2本立っているのが見えるか」
シャーラが言われる方を見て首を傾げる、どうかしたのかとハイザクの言う方向を見ると、いきなり鼻に衝撃を受けて叩き飛ばされた。
〈敵襲だー、魔法使いで手強いぞー〉
走りながら絶叫しているが、首枷に両手を固定されているので走り辛そうだが、絶叫が止まらない。
〈敵だー、油断するなー〉
「カイト様」
「撃て逃がすな!」
叫びながら走り去るハイザクが、いきなり弾け飛んだ。
《カイトに何をした!》
グリンの怒りの声が頭に響く、手に鼻血がべっとり付いているし、口の中に異物があるので吐き出すと歯が3本転がり出た。
「カイト様大丈夫・・・って鼻血止まってるし傷が無い」
ん、手に付いた鼻血は未だ乾いてもないのに鼻の痛みは無いし、歯を吐き出したのに歯が抜けた様子も無い。
鼻を擦ると血が袖に付くが痛みは全く無い。
「綺麗に治ってます」
解っていたが凄いな、シャーラがホケーっと見ている。
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