第78話

アルは客人3人の様子を確認するために客室に向かった。

3人はちょうど朝食を食べているところだった。

「昨日はよく眠れましたか?」

「いや、それが・・・。なんか落ち着かなくて・・・」

「慣れない環境ですからね。そこは慣れてもらうしかないですね」

これから1ヶ月はここで寝泊まりするのだ。

この環境に慣れてもらうしかない。

アルは使用人に声をかけて自分の分の食事を持ってきてもらう。

その間も不安を取り除くようにコミュニケーションを続けた。

朝食も食べ終わりアルは3人に今日の予定を確認する。

「今日はどうしますか?」

「せっかく異国の地に来たんだ。街を見て回りたい」

「わかりました。通訳は僕がするので行きましょう」

こうしてアルは3人を連れて街に繰り出した。

街の人達はアルがこうして出歩くことに慣れている。

だが、今回は異国人である3人が一緒だ。

念のために護衛を手配した。

3人は色々なことに興味を持ち商品に手を伸ばしていた。

「気になった物があったら言ってください。予算はたっぷりありますから」

「感謝する」

今回はアルが支払っているがお小遣いを渡して貨幣制度について学んでもらうことも必要かもしれない。

その後も、色々なお店をまわり様々な物を購入した。

「そろそろお昼にしましょうか」

「城に戻るのか?」

「いえ。せっかくですから街で食べていきましょう」

アルは学生時代に行ったことのお店に案内する。

「よぅ。久しぶりじゃねぇか」

「お久しぶりです」

「注文はどうする?」

「パエリアを4人分お願いします」

「わかった。少し待っててくれ」

店主はそう言うと生け簀から必要な材料を取り出すと調理を開始した。

「どんな料理なんだ?」

「それは見てからのお楽しみですね」

店内にいい匂いが広がりすぐに注文したパエリアが提供された。

それぞれスプーンを手に口に頬張る。

「これは美味いな」

魚介の味がよく染み込んだ米は相変わらず絶品だ。

かなりのボリュームがあったのだが、あっという間に3人は完食していた。

「まだ食べますか?」

「いいのか?」

「えぇ。好きなだけ食べてください。おやっさん。3人にお勧めをお願いします」

「わかった。今日はいい品が入ったからな。それを出してやるよ」

そう言って店主は調理にとりかかる。

出てきたのは香ばしい匂いをしているイカ飯だった。

「これも美味そうだな」

3人はそう言ってパクパクと食べている。

それを見てアルはほっとした。

地球での話ではあるがイカに嫌悪感を持つ外国人もいるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る