第27話
「なんてことを・・・」
トーマス伯爵の配下は混乱している。
無理もないことだが、アルの指示で砲撃を食らったサーキス王国の小型艦はいつ沈んでもおかしくない状態だ。
アルは拡声魔法でサーキス王国の艦隊に警告する。
「ただちに攻撃を止めろ。でなければ砲撃を続行する」
至近距離だったとはいえ、砲撃のもたらす結果は明らかだ。
サーキス王国の戦闘員達は速やかに自分達の船に戻っていった。
そして、逃げるように離れていく。
去り際にサーキス王国の艦隊はこう言って去っていった。
「お前達には必ず報いを受けさせてやる」
一方的に戦闘をしかけ負けそうになれば逃げ出す。
サーキス王国の行いは海賊と変わりない。
砲撃の音が領主館にも届いたのだろう。
港が騒がしい。
港から1隻の小型艦がやってくる。
そしてそのまま旗艦である大型艦に横付けると1人の男性が真っ先に上がってくる。
「トーマス伯爵・・・」
どうやらこの人がこの地の領主であるトーマス伯爵のようだ。
「どうしてあのような行動をとったのか説明してほしい」
アルが説明しようとしたのだがトーマス伯爵の部下が変わりに説明してくれた。
「なるほど。事情はわかった。だが、困ったことになった。申し訳ないが代表者を拘束させてほしい」
「では、私が・・・」
船長がそう申し出るがアルはそれを止めた。
「いや。ここは僕が行くべきでしょう」
「アルフレッド様・・・?」
「失礼ですが貴方は?」
「申し遅れました。マルコシアス王国第1王子。アルフレッド・ド・マルコシアスです」
「これはご丁寧に。私はヒンメルン王国よりこの地を任されております。トーマス・フォン・スーフェン伯爵です」
「やむを得ず状況とはいえ、我が国としては誠意をお見せしたい。お受けいただけますか?」
「そうですね・・・。私としてはアルフレッド王子の申し出をお受けしたい。1船長よりも王族がその責を果たしてくれるなら我が国からの印象もよくなるでしょう」
「と、いうわけで後は任せたよ?」
「アルフレッド様。必ずご無事にお戻りください」
船長をはじめ船員達は何を言っても無駄だと判断したのか送り出してくれた。
アルはトーマス伯爵と共に小型の船に乗りヒンメルン王国に降り立った。
「初上陸がこのような形とは残念です」
「そうですな・・・。私としてもこのような形となり残念です」
トーマスは御用商人からマルコシアス王国との取引結果を聞いていた。
親睦を深め正式に国交を結びたいと考えていたのだ。
だというのにサーキス王国の横槍でこのような形になってしまった。
今回の件をどう処理するかは向かっている王族に委ねる形となるだろう。
トーマスとしてはアルフレッドの援護をするつもりでいる。
それぐらい、マルコシアス王国との関係を望んでいた。
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