第26話

商談は無事にまとまったが、問題となったのは商品を下ろす作業だった。

中型の輸送艦が港に入れないため小型の戦闘艦に載せかえ、何度も往復して運ぶ。

そんな中、新たな船がヒンメルン王国の港にやってきた。

やってきたのはサーキス王国の商会に所属する艦隊だ。

中型の輸送艦1隻に小型の戦闘艦が3隻同行している。

マルコシアス王国艦隊からすれば驚異となるような数ではない。

だが、ここでサーキス王国の艦隊が非常識な行動をとってくる。

いくらでもスペースは空いているのにマルコシアス王国艦隊にどんどん近づいてくる。

止まるように手旗信号を送るがそれを無視してマルコシアス王国艦隊の至近距離で停船した。

そして拡声魔法だろう。

大声で一方的に告げてくる。

「ここは我々の定位置だ。直ちに退去せよ」

アルとしては呆れてしまう主張である。

この地の領有権はヒンメルン王国にあり、領主であるトーマス伯爵からは何も言われていない。

これに慌てたのはたまたま居合わせたトーマス伯爵の部下である。

確かに普段この場所にサーキス王国の艦隊が停泊しているのは事実である。

新規で取引しているマルコシアス王国よりも付き合いは長い。

だが、彼等は街の人達からは嫌われていた。

荷物の積み降ろしの間、上陸しては問題行動を繰り返していたのである。

「どうしましょうか?」

アルはトーマス伯爵の部下に問いかける。

「いえ。このままでいいでしょう。彼等の言うことを聞く必要はありませんよ」

この判断が悲劇を生むとはこの時はまだ、誰も知らなかった。




「どかぬなら、仕方ない。実力で排除する」

そう宣言するとサーキス王国の艦隊がさらに接近してくる。

標的になったのは護衛のために連れてきていた小型の戦闘艦のうちの1つだった。

こんな暴挙に出てくるとは予想できず他の艦のフォローは間に合わない。

相手ははじめから攻撃するつもりだったのだろう。

小型の戦闘艦に相手の魔法が殺到する。

そのまま接近され次々に小型の戦闘艦に相手の戦闘員が乗り移ってくる。

小型の戦闘艦に乗っているのは訓練されているとはいえ、経験の浅い新人が多い。

このままでは少なくない被害が出るだろう。

アルはここである決断をした。

「攻撃されたのなら仕方ありません。狙える艦は相手の小型艦を砲撃せよ」

援護に向かっていて砲撃できない艦もいるがそれでも砲撃可能な艦は相手の小型艦に標準を合わせる。

至近距離からの砲撃だ。

相手の小型艦は耐えることができず、砲撃により大穴があいた。

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