第28話
拘束?されたはずのアルであるが監視の人員はいるものの不自由はしていなかった。
与えられたのは領主館の客室の1つであったし、監視の人員を連れてではあるが街中の探索も許可された。
アルはその状況を受け入れ監視の人員に色々聞いたりとこの状況を楽しんでいた。
その姿を見てトーマスは苦笑いするしかない。
「肝が据わっているのか能天気なのか・・・」
判断に迷うところである。
だが、監視の人員にそれとなく聞いたところでは色々な物に興味を持ち、常に自国のことを考えているように見える。
それでいて街の人達を不快にさせることもない。
トーマスから見たアルは理想の王族像といっても言い。
「アルフレッド様。数日で我が国の王族が到着するとのことです」
「そうですか・・・。その方はどういう方なんですか?」
「今回来られるのは第一王女様です。とても聡明な方なので悪いことにはならないかと」
「ご迷惑をおかけします」
「いえいえ。私としてもサーキス王国の連中には思うところがありましたのでスカッとした気分です」
政治的にはよろしくない結果となっただろう。
だが、トーマスはそんなことを尾首にも出さなかった。
ヒンメルン王国の第一王女一行は予定どおりに到着した。
「はじめまして。マルコシアス王国第一王子。アルフレッド・ド・マルコシアスと申します」
「これはご丁寧に。ヒンメルン王国第一王女。フランソワ・ド・ヒンメルンです」
「フランソワ様。この度はお呼び立てして申し訳ありません」
「いえ。これは貴方に与えられた権限を越える範囲です。王族の一員として私が来るのが当然でしょう」
「恐れ入ります」
「サーキス王国と一悶着あったそうですね?それは事実ですか?」
「はい。事実です」
「そうですか・・・。詳しい状況を聞いても?」
「それは私が説明いたします」
トーマスはことの経緯から結果までを簡潔に説明する。
「事情はわかりました。どうみてもサーキス王国側が悪いですね。ですが、我が国は陸軍国家です。海上から攻められた場合、困ったこととなります」
「フランソワ様。ご提案があります」
アルはそう言って自信満々に自分の考えを伝える。
「我が国としては貴国と正式に国交を結びたいと思っています。軍事同盟を結べば我が国より艦隊を派遣することも可能です」
「軍事同盟ですか。我が国にはない海上戦力を提供していただけるのはありがたいですね。ですが、私の一存では決められません」
フランソワの言うことももっともだ。
交易の締結ならまだしも、軍事同盟を結ぶとなれば国家の舵取りに大きな影響を与える。
第一王女といえど迂闊なことは言えないだろう。
この日の話し合いはヒンメルン王国の王に指示を仰ぐということで終わった。
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