第117話

ウィンブル滞在2日目。

アルとフランは朝早い段階からジュリアの襲撃を受けていた。

「アル。ご本読んで?」

そう言ってジュリアはアルの膝の上に座ってくる。

どうやらこの位置が気に入ったらしい。

「わかりました。昨日の続きから読みますね」

アルは昨日読んでいた場所から本を朗読する。

ジュリアはそれを大人しく聞いていた。

しばらくするとアンジェラが顔を見せる。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「いえ。これぐらいで喜んでくれるならいくらでも」

「アル。続き」

「はいはい。今読みますね」

アルは続きを読み始める。

最後まで本を読み終えるとジュリアは満足してくれたようだ。

「アル。ありがとう」

「いえいえ」

その様子をフランとアンジェラは微笑ましく眺めていた。

「アル。喉渇いてない?」

「そうですね。お茶をもらえますか?」

そう言うと控えていた使用人がすぐに紅茶を淹れてくれた。

「ありがとうございます」

そこからは4人で雑談をする。

主に喋っているのはジュリアだった。

話題にのぼるのは先程、読み聞かせをしていた本の内容だ。

子供でも分かりやすい内容の本を選んだわけだがそのチョイスは間違っていなかったようだ。

「ジュリアは本当にアルが好きなのね」

「うん。アルは優しいから大好き」

「そうだ。お礼というわけではないけど午後にはうちの御用商人が商品を持ってやってくるから好きな物を頼んでね」

「わざわざすみません」

「いいのよ」

ウィンブルの物はヒンメルン王国にも入ってきているがコストの問題で入ってこない商品もある。

「お父様達へのお土産を探してみましょう」

「そうだね」

このまま軽食を取り案内されるまま御用商人のもとへと向かう。

「本日は我が商会をお呼びいただきありがとうございます」

「大切なお客様だからお願いね」

「心得ております」

呼ばれた商人は1つ1つ丁寧に商品を紹介してくれる。

どの商品も職人の腕がいいのか魅力的な商品だ。

アルは小物をいくつか選びフランは服やタペストリーといった製品を選んだ。

「気に入った品が見つかってよかったわ」

代金はウィンブル王国持ちだ。

「ありがとうございます」

「いいのよ。私達からの気持ちだからね」

ジュリアも興味深そうに本を見ていたが商人が今回、持ってきた本は小難しい物だけだったようで沈んだ様子だった。

「お礼というわけではないですがジュリアでも読めそうな本をいくつかお譲りしましょう」

「アル。本当?」

ジュリアはぱぁっと笑顔を浮かべる。

「えぇ。文字の勉強にも丁度良いと思いますしね」

そう言ってアルはアイテムボックスから10冊ほど本を取り出してジュリアに差し出した。

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